<「報ステ」古賀氏降板はテレビ的な見世物?>「便利使い」され「使い捨て」られた古賀茂明氏
メディアゴン / 2015年4月1日 0時46分
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
* * *
「報道ステーション」での、古舘伊知郎キャスターと、痛烈に安倍政権批判をする元経産官僚、古賀茂明氏とのやりとりが、物議を醸している。
古賀氏は官邸からのバッシングがあるため、テレビ朝日の早河洋会長や、(制作協力している)古舘プロダクションの佐藤孝会長の意向で番組を降板させられたことや、統括の女性プロデューサーが更迭されたことを述べた。
この発言に対し古館キャスターは「承服できない」とし、発言を遮った。さらにテレビ朝日は古館キャスターと同じ「承服できない」と言う言葉を使って次のようなコメントを発表した。
「古賀さんの個人的意見や、一部事実に基づかないコメントがなされたことについて、承服できない思いでおります。番組に混乱がみられたことについて、視聴者の皆さまにおわびいたします」
不謹慎だと思われるかもしれないが、このやりとりをテレビで見て、筆者は、
「これぞテレビ、脱予定調和。こんなにテレビ的で面白い見世物はない」
と感じた。どちらの言っていることが事実かは、筆者には知る由もないが、本稿ではこの現象をテレビ論的に考えてみたいと思う。
こうした報道情報番組では、「コメンテーターという人」を使う。その理由は専門家としての意見を聞きたい、キャスターの軽さの重しになって欲しい、枯れ木も山の賑わいなど、様々な理由がある。(放送作家の筆者としては、印象で感想を言うコメンテーターは一切必要がなく、とりあげる事象に関して専門的な意見の言える人をピンポイントで起用すべきであるという見解である)
これらコメンテーター起用の理由の一つに次のようなものがある。
「番組の意見として言うには刺激が強すぎる、大きな反論を受ける可能性がある、できるだけ番組の責任を回避したい、その代わりをやってもらおう」
と言った理由で起用されるコメンテーターである。古賀氏はまさしくこのケースに当たる。
古賀氏は、大変便利であった。だから、「報道ステーション」のみならず、多くの報道情報番組で起用され、あっという間に有名になった。
主義主張は一貫しているからぶれがないし、先鋭的ではっきりしている。語尾をぼかすことなく言い切る。常に刺激的でありたい(視聴率がとりたい)テレビ番組としては非常にありがたい。さらに発言は個人の主張であり番組の意見でも、テレビ局の意見でもないと主張できる。
古賀氏は、つまり「便利使いされた」のだ。便利使いされていた古賀氏は、ある日、便利であることを逸脱した。
それで、今回の事態となったのである。で、古賀氏は使い捨てられた。
ということから考えると、今後、古賀氏は東京キー局のテレビでは一切、使われなくなるだろう。頻繁に古賀氏を使っていた他のテレビ局は、テレビ朝日で今回の事態が起こったことで、古賀氏を、フェード・アウトさせればよくなったわけで、胸をなで下ろしている番組スタッフもいるだろう。
テレビ番組の運営という観点から考えると、古賀氏は「コメンテーター界の猛獣」であった。だからテレビ朝日はこのことに早く気づくべきであったし、「猛獣」であるとするなら、スタッフに「猛獣使い」が居ない限り、古賀氏を使いこなせないことにも気づくべきだったのである。
最後に書き加えるが「猛獣」の安倍政権批判に関しては、賛意を表しておく。
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