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<今のテレビは更新されないミシュランガイド?>グルメ番組がいつも同じ高級すし屋を紹介する理由

メディアゴン / 2015年4月4日 3時34分

高橋正嘉[TBS「時事放談」プロデューサー]

* * *

食のエンターテインメント雑誌とも言うべき「ミシュランガイド」は良くできている。三ツ星を取ったレストランにはぜひ一度入ってみたいと思う人はたくさんいるはずだ。

ひとつ星でも良い、フランス料理やすし屋が有名だが、焼き鳥屋でもいい、と、うまく人間の欲望をそそる。

テレビの番組も、実はこのミシュランガイドの役割があるのではないかと思っている。少なくとも、かつてはその役割を果たしていたこともあった。テレビで紹介した店には行列ができた。今も確かにその役割は果たしているのだろう。「番組の○○で取材されました」と宣伝している店を時折見かける。

考えてみればミシュランガイドの命は覆面審査官への信頼である。この人の味をみる力は信頼できる、その幻想がこのガイドを支えている。

ガイドを見て行ってみたが満足できない、ということが続けば信用しなくなる人が増えていくだけだ。この幻想を維持していくためにはかなりの努力を必要とする。普通に考えれば宣伝ランキングである。それを宣伝ではない、ひとつの権威にしているのだ。

テレビの業界はどうなのだろうか?

今、この機能がヘタっているような気がする。もはやそんな幻想も無いかもしれない。たとえば、銀座の高級すし屋といえば、いつも同じようなすし屋が出てくる。取材する側が何故ここが高級なのか、考えたこともないような選考である。

有名な店を選ぶことが良い、そう訓練されているのだろう。いわば「更新されないミシュランガイド」である。だったらミシュランガイドブックは一冊買ったら、もう買う必要はない。

テレビはいつも新しい仕掛けが必要である。店を新しく捜すのもひとつの方法。何度も紹介されている店ならば、その中で何を新しく見せるか考えるものである。

実際はどうだろうか。店の紹介だけではない、いろいろなネタが「どこかで見たネタ」だからあえて選んでいるような気がする。後はタレントにお任せ。これではどこかで見た番組になるはずである。

ネタを選ぶ覆面審査官が機能しなくなっている。それは、ネタ選びがネットの検索やリサーチャーの専門業務になっているからではないか。銀座の高級すし屋を真剣に選んで見たら良い。いかに難しいか。選んだ理由をどうしたら説明できるか。そういう選択の緊張がなくなっている。

かつて資料を読んでいたら、シャリにこだわるすし屋の記事が出ていた。浅草のすし屋だった。水分と研ぎのことが書かれていた。興味を持ったがそれだけでよくわからない。

しかも、その時すしを取り上げる番組をやっていたわけではない。ちょっと放っておいた。だがあるときすし屋に行こうという話になり、ならばと行ってみる事にした。裏通りにある店だった。

おいしかった。

筆者は名刺を差し出し、しばし話を伺った。シャリにこだわっているのだからネタにもこだわっていた。それは当たり前だというようなことを言った。

ネタは高い金を出せば買える。しかし、すしは高い金を出さなくともおいしくなければいけない。コハダのような光物こそ、すし屋の腕がわかる、というようなことを言っていた。勿論この店で食べたコハダはおいしかった。

だが、結局この店をテレビで紹介するチャンスは無かった。そんな企画をやっていなかった、というタイミングの問題もあったとは思う。しかし、どういうくくりで取材できるか、なかなかまとめられなかったこともある。

今もおいしい店を探しだす特ダネ感だけは妙に覚えている。たぶんそれは覆面調査官が発掘する、新しいひとつ星の店に近いかもしれない。

今、そんな店を探し出す楽しさがテレビ界に一番欠けているような気がする。

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