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<原案作者は誰?>堺雅人「Dr.倫太郎」の精神分析は誰が監修しているのか?

メディアゴン / 2015年4月25日 8時14分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事/社会臨床学会会員]

* * *

筆者は精神科医の隣接領域を専門とする者として、そしてテレビマンの一人として「Dr.倫太郎」(日本テレビ)の第2回を見ました。連続ドラマを「連続で見る」のは久しぶりですが、その理由は堺雅人演じる倫太郎が、スーパー精神分析家として描かれているからです。

前稿(ドラマ「Dr.倫太郎」の原案小説「セラピューティック・ラブ」は堺雅人を想定して書かれた小説?)でも述べたように、フロイトの創始になる精神分析という心理療法は今、日本では廃れています。臨床で、つまり患者を相手にする技法としては恐ろしく劣勢なのです。

この倫太郎の敵役、宮川教授(長塚圭史)は、脳科学の信奉者で「薬を出せばいい」とだけ考える、患者の心に寄り添わない、冷酷な精神科医として描かれますが、現在精神科ではこちらが主流。

「患者の心に寄り添わない、冷酷な医師」もたまには居ますが、もちろん主流がそうだと言うのではなく、脳波や脳の写真を元に薬で立ち向かう医師の方が圧倒的に多いのです。

ドラマですから、話半分にして、精神分析家は病気をなおす人ではない。宗教家のようなものだという理解のほうが現実では正しいかもしれません。

連続ドラマの形として、今回は11回(昔は13回でしたが、今は大抵期首期末の特番でつぶれるので11回になりました)の縦筋になっているのが、倫太郎と新橋芸者・夢乃(蒼井優)の恋、そして、夢乃をミステリアスな存在にすることによる、謎解き感。

さらに1話ごとの精神科治療のエピソードが加えられます。今回は出せば本が売れる大御所小説家が、スランプで書けなくなったと言って出版社の社長が治療を望んできます。小説家は、自分の女性秘書を姿はそのままだが、別人に入れ替わっていると主張します。

精神科の教科書的な判断をすると、その症状はカプグラ症候群に当てはまります。しかし、倫太郎は、異を唱えて……。と言うお話です。一方、夢乃は、父が病気だと言って、倫太郎に300万の借金を頼むのです。

ところで、番組のスタッフクレジットには、精神治療指導として、3人の精神科のお医者さんの名前が表示されます。皆さん、その世界では有名な方です。

筑波大学の高橋祥友教授は自殺の研究の権威です。杏林大学の古賀良彦教授は、神経科の医師です。薬の杏林だけあって、アロマなどの代替医療もやっています。横浜市立大学の平安良雄教授は、大学付属の総合医療センター病院長、専門は神経画像学です。

つまり、この中には、精神分析を主にやっていらっしゃる人は居ません。精神科の医師ならば精神分析のことはどこかで学んでいるとは思いますが、専門ではありません。

では、精神分析の指導は誰がやっているのでしょうか。クレジットの中に、心理療法指導として「田中あず見」と言う方の名前が登場しますからこの人がやっているのでしょうか。

もし、なさっているなら、心理療法の箱庭や診療室の中のカウチ(寝椅子)などの道具立ては出来ていますから、あとは、

 「精神分析家が倫太郎のように、刑事や探偵が謎解きで犯人の動機を決めつけるようなしゃべり方はしない」

とおっしゃっていただけるとうれしいです。この辺はドラマの嘘の許容範囲なのでしょうか。

さて、精神分析の指導を誰がやっているのか。これについてクレジットに、ある有名人の名前を見つけました。「協力」という肩書きでスーパーされる和田秀樹先生です。テレビにも時々出演するので顔をご存じの方が居るかもしれません。受験本の著者であり、アメリカの精神分析学派自己心理学の伝道師であり、小説家でもあります。

これを見て、筆者がこれまで「Dr.倫太郎」に抱いていた精神科関係の謎が一気に氷塊したような気もしました。

もしかしたら、ドラマの原案小説「セラピューイック・ラブ」を書いた覆面精神科医は和田秀樹さんかもしれません。ということで、このドラマは第3回目も見ることにしました。興味の持ち方がひねくれているかもしれませんが。

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