<2015年春ドラマPart2>フジ『戦う!書店ガール』はなぜ「うざい」のか?
メディアゴン / 2015年5月1日 13時16分
黒田麻衣子[国語教師(専門・平安文学)]
* * *
フジテレビ火曜22時の『戦う!書店ガール』は、初回と第2話のクオリティに落差がありすぎた。このドラマは初回から視聴率が低迷気味であったが、これについては、まゆゆがウザすぎて、ガマンしきれずに途中でチャンネルを変えてしまった可能性がある。
だが、そうであれば、甚だ残念なことだ。実はこの初回、まゆゆが「ウザい」からこそ、彼女の一途さに触れたとき、ハッとするのだ。
この脚本は秀逸だった。稲森さんが「ハッ」としたのとまったく同じ目線で、稲森さんと同世代の視聴者もハッとさせられたのだ。若かった頃の一途な自分を、新人の頃の仕事へのひたむきな情熱を、思い出す。いつしか、周囲の顔色を読んで、小さくまとまってしまっていた自分に気づく。そんな「ハッ」が、強い共感を呼ぶ気がした初回だった。
次回は、どんなトラブルが起こるのかとワクワクしながら観た2話だったが、期待外れに終わってしまった。迷走したからだ。
誰の視点で、誰を軸にこのドラマを描いていくのか、それがブレてしまった。稲森いずみさんとAKBの渡辺麻友さん。ダブル主演にしたことで、広い視聴者層を狙ったのだろうが、このままでは、どっちつかずに終わりそうな予感がする。二兎追う者は一兎をも得ずの典型となりそうだ。
同じダブル主演ドラマであっても、昨年10月クールの石原さとみちゃん松下奈緒さんの『ディア・シスター』は、(さとみちゃんが完全に奈緒さんを喰ったと言われていたが)筆者には見応えのある、大好きなドラマだった。お姉さん役の奈緒さんから見た妹のさとみちゃんは、とってもキュートで健気で、視聴者である筆者は、奈緒さんと一緒にハラハラしたり、イライラしたり、きゅんきゅんしたりできた。
『リーガルハイ』も、主役は堺雅人さん演じるコミカドだけど、目線は新垣結衣ちゃんだった。新垣さんの目線でコミカドのエピソードを描いているので、脚本に投影された「心情」は、コミカドではなく結衣ちゃんのものだった。私たちは安心して結衣ちゃんに感情移入しながらドラマを観たし、だからこそ、結衣ちゃんがハッとするのと同じように、私たちもまたコミカドの法廷演説にハッとした。
『戦う!書店ガール』もこんなふうに、初回から一貫して稲森目線でのまゆゆを描けば、そのまま上手くいった気がする。
もう一つ、このドラマには不安要素がある。「ウザまゆゆ」だ。
初回では、空気読まないウザい新人が、ただ仕事に必死で不器用なだけだと判って、ホロリと心ほだされる名ストーリーだった。これは、かつてフジで放送された『全開ガール』や『リーガルハイ』の新垣結衣ちゃんに通ずるところがある。古くは『ナースのお仕事』の観月ありさちゃんもこんな役柄だった。
ところが、ここで、今回のまゆゆには、これらの作品と決定的な違いがある。それは、彼女が「お嬢様」だということだ。大手文具店のご令嬢で、自宅は高級タワーマンション。その広くて清潔で明るいお部屋で、どれだけ夜なべして仕事しようが、共感は得られにくい。
彼女の頑張りはともすれば道楽に見え、必死さはお嬢様のワガママにしか映らない。ただ、お嬢様にはお嬢様なりのご苦労も悩みもあるのだろう。
2話の感じでは、心に何か暗いものを抱えていそうだった。その謎解き如何では、視聴者が戻ってくる可能性もあるが、それまで「ウザまゆゆ」にどれだけの女性が耐えられるかが勝負だな、と思った。
ちなみに、ああいう子(今のところ)、男性陣からすると「かわいい」のだろうか? まゆゆファンの男子たちは、見るのかなー?見たいのかなー?という素朴な疑問が消えない(笑)
もう少し、素直にかわいい役柄でも良かった気がするのは、筆者だけだろうか。(つづく)
(Part.1|Part.3)
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