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<TBS全面協力「KolKimono~きもの秘伝~」>日本のテレビドラマ効果でアジアからの観光客が九州に殺到中?!

メディアゴン / 2015年5月28日 14時18分

岩崎未都里[学芸員・美術教諭]

* * *

アジアからの訪日観光旅行客の勢いが止まりません。

中でもタイ王国は、3年で急激な日本旅行ブームが到来し、韓国・台湾・中国についで訪日ランキング4位となっています。2012年/26万人→2013年/45万人→2014年/65万7,600人で前年比45%増と急増中。(日本政府観光庁(JNTO)訪日タイ人観光客推移より)

この理由としては、今年4月16日から放映のドラマ『Kol Kimono~きもの秘伝~』の影響が大きいようです。タイ最大の放送局「Channel 3 HD」が制作し、「国王の次に影響力がある」と言われる国民的大スターのバード・トンチャイさんが17年ぶりに主演しました。制作もタイ放送局スタッフ、演者もタイ人のトップスター達が「日本人」として役を演じており、放送前で認知度80%を越える程の人気です。

ストーリーは「伝説の未完成の着物」を巡り2つの名家が対立し、西洋の「ロミオとジュリエット」と東洋の「七夕」を掛け合わせた“現代版ラブ・ファンタジー”。主演のバードさんの役柄は400年の時を超えてきた鶴の精霊であるなど、タイ人の大好きなファンタジーな要素を取り入れながら、九州の美しい景色の中でドラマが展開されます。

ドラマの舞台は約8割が九州ロケで、昨年5月に伊万里市大川内山や祐穂稲荷神社など、佐賀県中心に撮影されました。過去には2013年の人気ドラマ「ラックン・タオ・ファー(空の高さまで愛してる)」のロケが福岡市内で敢行されており、タイ人は「福岡」の地名を知らなくても、このドラマのロケ地だと伝えると瞬時にわかります。

海外の放送局や映画関係者向けに、日本地方都市がドラマや映画のロケ地誘を継続的に推進していた活動が実を結んだわけです。

『きもの秘伝』『ラックン・タオ・ファー』と九州がメインロケ地となったドラマが次々と誕生していたのは、九州観光推進機構の広域かつ継続的なドラマ・ロケ地戦略の成果なのです。経済産業省、在タイ日本大使館が後ろ盾となり、スポンサーは「いすづ、ホンダ、フジフィルム、伊藤園、サンスター、イオン、つぼ八」といった有力な日本企業が多数参画しています。

実は名前を大々的には出していませんが、このドラマの要である「演出面」はTBSの後援を受けています。国際交流基金とともに通訳・着付け補助・琴奏者の確保など日本文化部分、画面のクオリティが高いのは演出協力の賜物です。

TBSはこれまでも、日韓共同制作ドラマ「フレンズ」(2002)や、ベトナムのベトナムテレビジョン(VTV)との共同製作『パートナー』(2012)に挑むなど、アジア進出・定着へ紆余曲折を試みてきた歴史と経験があります。

演出協力面の配慮は着物ひとつ・白無垢姿ひとつでも素晴らしい仕上がりです。その結果は『Kol Kimono~きもの秘伝~』のタイ視聴率からも窺えます。

まずは、相手の国を知ることからでしょうか。タイ人は「ドラマ」が大好きで、人気ドラマが放映される時間帯は街から人が消え、渋滞も緩和されるほどです。彼らが憧れる「日本」を舞台に、演者をタイの人気俳優陣で揃えることで感情移入できる「ドラマ」は、自分たちの事として受け入れてもらえているのでしょう。

日本のテレビドラマが苦戦中の最中、「ドラマのTBS」と呼ばれた名門の底力で日本流のアジア進出へ一歩リードする処方箋を打ち出してきました。

最終回を前に盛り上がる『Kol Kimono~きもの秘伝~』の日本語字幕・吹き替え盤DVDが発売される日を、筆者は楽しみにしています。

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