大量の謎と伏線を散りばめた大人ドラマのはじまり/『カルテット』第一話レビュー

messy / 2017年1月20日 0時0分

 ところが翌週、真紀は「ノクターン」に出向いてベンジャミンの嘘を暴露します。えっ、怒ってなかったじゃないですか。なんで……。結局、店側はベンジャミンの演奏を断り、空いた枠で4人は演奏できることになりましたが、愉高や司は真紀の行動が理解できません。ベンジャミンの部屋の壁には、栄光や幸福を手にしていた頃のポスターや家族写真もありましたが、それらはすべてマグネットやテープを使って貼られていました。ベンジャミンのように躊躇なく画鋲を刺せない人間(=賃貸住宅にしか住めない経済状況)が音楽を続けていくには嘘をつくしかなかった(そうでもしなければ演奏できる場所がない)、あの人は好きな音楽を続けたかっただけだと、ベンジャミンの立場に立とうとする愉高や司に真紀は「それはベンジャミンに対する思いやりではなく、ベンジャミンの姿に未来の自分を重ねているからだ」と容赦ない指摘をします。さらに「私たち、アリとキリギリスのキリギリスじゃないですか。音楽で食べていきたいっていうけど、もう答え出てると思うんですよね。私たち、好きなことで生きていく人にはなれなかったんです(中略)こっちだって奪い取るしかなかった」と饒舌に続ける真紀に圧倒された愉高、司は「ごめんなさい」と謝るしかなく……。



 坂本脚本ならではの長い台詞応酬シーンはまだまだ続きます。今度はすずめが「でも真紀さんには帰るとこあるじゃないですか。(中略)躊躇なく壁に画鋲させますよね」と真紀を執拗に攻撃します。喧嘩腰というより冷めた口ぶりながら、粘着質に夫のことを質問しまくるすずめに怯まず、真紀は再び饒舌に語り出します。結婚後、いつも夫の好きなものを探りながら料理をしていた真紀がある日唐揚げを作って出したところ、夫は今までにないくらい喜んで食べてくれ、以来唐揚げが定番メニューに。しかしある時たまたま居酒屋で夫を見かけます。夫は唐揚げを注文していましたが一緒に来ていた後輩にレモンをかけるか聞かれ、夫は「いい。俺、レモン好きじゃないから」と答えていました。でも、真紀は2年間ずっと、夫の目の前で、夫の食べる唐揚げにレモンをかけていたのです。そのことが許せなかったと言う真紀に、愉高と司は「それは夫さんの優しさ、気遣い、愛情」だと擁護するのですが、なんだろう……許せないというか、ショックですよね。「レモン好きじゃない」と教えてくれればいいのに、そうしないで我慢して食べている夫。真紀はもう夫の言葉の色々が、たとえば「美味しい」とか「楽しい」とかが彼の本音なのかどうかわからなくなって、何も信じられなくなったんじゃないでしょうか。さらに、居酒屋で真紀の夫は後輩に「奥さんのこと愛しているんですか?」と聞かれ「愛しているけど好きじゃない」とも答えていたそうです。

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