一色萌のアイドル、色々。第 26回 「アイドルと部屋」

もぐもぐニュース / 2020年6月25日 11時6分

こんにちは。プログレアイドル・XOXO EXTREME(キスアンドハグ エクストリーム。通称・キスエク)の一色萌(ひいろ・もえ)です。

緊急事態宣言が解除されて、国内での移動も全面解禁となりました。

ニュースに目をやれば「早くも観光地は賑わっています」といった内容が多く見られますが、換気・消毒の徹底、半ばルール化したマスクの着用、人数を絞っての営業など、そこに映る光景は以前の姿とは程遠いような気がします。

オンラインでのライブ配信やネット番組も充実してきて、今後も暮らしの中にある程度根付いていくような気配を感じます。
ライブハウスでお客さんを入れてライブができるようになっても、遠方や足を運べない方のために配信という手段は残っていくのかもしれません(もちろん配信のための機材やスタッフさんを手配する必要があるので、全ての公演でというわけにはいかないでしょうが)。

少しずつ取り戻したり再構築したりしながら、いつの日か、いつの間にか日常は戻ってくるのでしょう。

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前回の記事でアイドルのグッズやCDのコレクション収納に困っているというお話をしました。
その件については今も特に解決しておらず、入りきらないTシャツとCDの山はそれぞれ最高記録を更新するばかりです。

しかし家で過ごす時間が長くなるにつれ、家族との共用スペースや後回しにしていた部屋の片付けなどをしてみると、私の収集癖はどうやらアイドルグッズに留まらないということがわかりました。
わかりましたというか、自覚したのです。

私は両親との3人暮らしですが4人家族の想定で設計された家に住んでいるため、余った1部屋を物置部屋として利用しています。
2年前に引っ越してきた時、とりあえず段ボールや荷物を運び込んでそのまま放置されていることから、その部屋は我が家で唯一の“散らかった部屋”でした。
この部屋にあるものはほとんど日常的には使っていないということは明らかだったので、要らないものを捨てたら大分すっきりするはずと目星をつけて、やり甲斐のありそうなその部屋の片付けに意気揚々と着手しました。

ですが、作業を初めてまもなく雲行きが怪しくなります。
特に必要なものもないけど、要らないものもない。
一山一山仕分けていくと、そのほとんどが私の収集品もしくは保管品であることがわかりました。
家族共用の物置だと思っていた部屋は、ほとんど私が占拠していたのです。

思えば私は、昔から「とっておく」ことが好きでした。
最初の状態をなるべくきれいな状態で「とって」おきたいし、それが必要かそうでないかに関わらずデータが取れそうなものは「とりたい」子供でした。

小学生から大学までの教科書、ノート、プリント、友達からもらった手紙、年賀状、お年玉でもらったポチ袋や小さい頃に遊んだおもちゃなどの個人的なものに始まり、展覧会や舞台のチラシ、展覧会の図録、雑誌のバックナンバー、新聞の切り抜き、本やCDの帯、その他諸々……。
どれもその時その当時の私が丁寧に、それも完璧に揃えてとっておいたものです。
しかし丁寧にとっておいてはあるけれど、それらが大切なものであるかは、正直よくわかりません。

何年も前の、観に行けなかった舞台公演のチラシ。
そろそろ捨ててもいいかなと手にしてみたものの、今このタイミングでこれを捨てる意味を見いだせず、何も考えずにファイリングケースにしまい直しました。
結局のところ、無造作に置いてあるように見えたものたちは既にほとんどまとまっていて、段ボールから出して収納スペースに移動するだけで部屋はすっかり片付いてしまったのでした。

私は掃除や片付けが好きなので、基本的に自室が散らかっていることはほとんどありません。
大抵のものはなんとなく良い感じに収めることができるし、一度収納する場所を決めてしまえば、部屋をきれいな状態に保つことができます(その反面、スペースに収まらない量になってしまった時には途方に暮れてしまうわけですが)。

ものを捨てなくてもなんとかなってしまうため、その結果、ものを捨てない・捨てられないことに対しての問題意識が希薄なような気がします。
なんでも手元に残しておきたいと思う気持ちの裏には、取捨選択を避けようとする性格的特徴が関係しているようにも思えてきたのです。

正しいものを選べる自信がないから、選択をして失うことが怖い。
選択をすることで次の選択肢が狭まっていくことが怖い。
何も選択しなければずっと無限に選択肢がある状態でいられる。

そんな取捨選択を避けるための思考停止。
それは部屋が片付くとか片付かないとか、そういったこと以上の問題をはらんでいるような気がして、背筋に冷たい汗がにじむ感覚がしました。

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なんとなく、アイドル活動をしている子は部屋が散らかっている子が多いような気がしています。

実際にアイドルさんの部屋を見て回ったわけではなく、本当になんとなくの、あくまでも私の勝手な印象です。

最近は自宅から配信をしているアイドルさんもよくお見かけするので、きれいで可愛らしいお部屋に住んでいるアイドルさんがたくさんいることを知っています。
むしろ配信する時なんて多少見栄えの良いところからするものだろうから、きれいな部屋の印象の方が強く残っていいはず。

それにも関わらずなぜか私の中にある強固な「アイドルの部屋=散らかりがち」なイメージの源は、ほぼ間違いなく川本史織さんの『堕落部屋』という写真集に出会ったことで作られたものです。

この写真集はマニアックなオタク趣味のある女の子の「堕落」した部屋を題材としたもので、50人の自室の写真が掲載されています。

何気なくこの写真集を手にとった2013年当時の私は地下・インディーズのアイドルにハマり始めた頃で、本を開いてからアイドル活動をしている・もしくはアイドルに憧れのある女の子が多く掲載されていることに驚きました。
それと同時に、アイドルが自室をこんなにも詳細に公開していいのかということにも衝撃を受けた記憶があります。

世の中には様々な趣味嗜好の人間がいて、当たり前ですが同じ部屋は一つとしてありません。
ごちゃごちゃと様々な物が散乱している部屋もあれば、部屋主なりのルールで整頓されていることがわかる部屋もあります。

他人様のプライベートな空間をこんなにまじまじと見ていいのかしらという背徳感とともにページをめくるうち、多くの部屋に共通していると感じたことがありました。
それはどの部屋も“ものが多い”なぁ、ということです。

アイドルが好きでアイドルに憧れる自分と“ものが多い”部屋はこの本の中に登場する部屋の主たちとどこか似通っているようで親近感を覚える一方、彼女たちにはなにか自分とは決定的に異なる魅力があるような気がしてなりませんでした。

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『堕落部屋』に関するインタビュー記事の中で語られた、「何かに激しく傾倒している人が作り上げた部屋が“堕落部屋”だと考えています。」という川本さんの言葉が答えなのだと思います。

いつの頃からか、私の中には「散らかった部屋」に対する強い憧れがありました。
それはゴミ屋敷に住みたいというわけではなく、「片付けを放棄してしまうほど夢中になれるものでいっぱいの部屋に住んでみたい」という欲望です。
そんな私の理想の「散らかった部屋」が、『堕落部屋』には詰まっていました。

いわゆる“汚部屋”とここでいう“堕落部屋”の決定的な違いは、その部屋を埋め尽くしているものが部屋主によって意図的に取捨選択されたものであるか否か、という部分にあると思います。

それを意識してもう一度写真集を開いてみると、そこに登場する部屋の中では「大切にしたいもの」と「必要だから仕方なくある生活用品」の扱いの差が明白であるということに気がつきます。

例えばあまり片付いているとは言えないような部屋でも、きれいにディスプレイされたフィギュアとゴミ袋に突っ込まれた洗濯物の間には明らかな区別がされていて、間違っても混同されることはないのだろうなという雰囲気があります。

「部屋」はそこで生活する人の所作も内面も容易に反映します。
とことん部屋の主の趣味や生活感で埋め尽くされた部屋からは、その人がそこにいなくてもどんな人かわかってしまうような、生々しい息遣いを感じます。

そこにある一つ一つのものが、部屋の主による膨大な回数の取捨選択を経てこの部屋にあるんだなということを思うと、足の踏み場もないほど散らかったその部屋がうらやましくてたまらない気持ちになるのです。

私の部屋にあるものはとにかく何でもかんでもとっておいた結果として多くなってしまったもので、片付いているうちは良いものの整頓を放棄してしまったらそれは概念として“汚部屋”寄りの部屋になってしまうのだと思います。

私は多趣味で好きなものが多くて家の中でも外でもなにかと忙しくしていますが、その実、何にも激しく傾倒してはいないのでしょう。
そう思うと、資料館のように片付いている部屋の裏に散漫な自分を見て少し虚しい気持ちになりました。

あてもなく積み重ねられているアイドルグッズの山だけが、今の私にとっての希望です。

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なりふり構わず真っ直ぐに自分の好きなものに夢中になれる、そういう情熱と細かいことを気にしすぎないある種のおおらかさ。
何事も気にしすぎで考えすぎてしまう私はそういう精神性に憧れています。
そしてこれは根拠の揃っていない持論ですが、そういった人こそがアイドルに向いているのではないかとも思っています。

床に放置された紙袋、絡まった配線、食べかけのお菓子、使いっぱなしの文房具、巻数の揃っていない本棚、ポスターやタペストリーで埋め尽くされた壁……。
“堕落部屋”の端々から感じられる部屋主の息遣いには、どこかそれと似たものを感じます。

自分がいなくても自分の気配が残る。
そんな部屋にも、アイドルにも、私は憧れています。

きちんと整頓された部屋は生活しやすいし、私は片付けが好きだけど。
いつか自分の好きなもので埋め尽くされたどうしようもない熱のこもった部屋に、私は住んでみたいのです。

【プロフィール】 一色 萌(ひいろ もえ)

ニックネーム:萌ちゃん、萌氏、誕生日:5月27日、出身:東京都、血液型:A型、趣味:アイドル研究、特技、アイドルについて話すこと

WALLOP放送局「キスエクのギュッと!プログレッシヴ!」レギュラー出演中(2018.4〜)

<一色公式twitter> https://twitter.com/hiiro_moe

<公式twitter> https://twitter.com/xoxo_extreme

<公式youtubeチャンネル> https://www.youtube.com/channel/UCA7fn3DZFJGDmlxZZg8WQVA

<取材・オファー等> Email : contact@twelve-notes.com

【グループプロフィール】

XOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム 通称:キスエク)

一色 萌・小嶋 りん・浅水るりの3名からなる、プログレッシヴ・ロック(略:プログレ)※をモチーフとした楽曲をパフォーマンスしているアイドル。
※特徴として、曲調がよく変わる・曲が長い・変拍子が多い、といった点が挙げられる。

2017年に、発売したシングル「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る〜」に対して(キング・クリムゾン「エレファント・トーク」オマージュ)元キング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューがその動画に「I like it!」とコメントで絶賛。

ライブ活動の他、ディスクユニオン新宿プログレ館で一日店員を務めたり、プログレファンの聖地である吉祥寺シルバーエレファントに、アイドルとして初出演。

2019年にフランスを代表するプログレバンドMAGMA公認カヴァー曲の「The Last Seven Minutes」を初披露。その動画がyoutubeにアップされると、カヴァーを公認したMAGMAが、公式Facebookで紹介したこともあり、一日で2000以上の再生数を得て話題になる。
翌2019年には、日本のプログレバンドの雄、金属恵比須とのコラボレーションで、90年代プログレを代表するスウェーデンのバンド、ANEKDOTENの「Nucleus」を公認カヴァー。

同年7月25日には2バンドを擁してのセカンドワンマンライヴを渋谷WWWにて行った。

都内を中心にライヴ活動を行なっており、プログレッシヴ・ロックを知っている人も知らない人も楽しめる、と好評を得ている。

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