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【実在】英国守護する“カラス使い”レイヴンマスター 最終試験はカラスの檻で

もぐもぐニュース / 2024年9月13日 14時11分

ロンドンの中心に位置するロンドン塔は、長い歴史とともに数々の伝説や物語を持つ要塞です。その中でも、特に興味深いのが「レイヴンマスター」と呼ばれる役職と、ロンドン塔に住む鴉(カラス)たちの関係です。この特別な職務について、イギリス国内外の多くの人々にとってあまり知られていないかもしれませんが、その背景には深い歴史とユニークな仕事が存在しています。

レイヴンマスターになるための条件

レイヴンマスターは誰でも務められる役職ではありません。現在、レイヴンマスターを務めるクリス・スケイフ氏は、イギリス軍で最低22年の勤務経験があり、模範的な軍歴と准尉以上の階級が必要です。さらに、レイヴンマスターになるためには、鴉たちとの特別な相性も求められます。前任者であるデリック・コイル氏は、クリスが鴉に興味を持っているのを見て、彼を鴉の檻に入れてその反応を確かめました。鴉たちがクリスを受け入れたことで、彼はレイヴンマスターとしてふさわしいと判断され、最終的に5年間の指導を受けた後、この重要な役職を引き継ぎました。

レイヴンマスターの仕事

クリス・スケイフ氏の一日は、夜明けとともに始まります。彼はまず、鴉たちを外に出し、檻の掃除をし、彼らの食事を準備します。1日あたり500グラムの肉を与えるほか、観光客から盗んだ小物も彼らの食事の一部になることがあります。日中、鴉たちは塔の敷地内を自由に飛び回り、夕暮れには再び檻に戻されます。

レイヴンマスターの役割は、単に鴉の世話をするだけではありません。クリスは通常のイエオマン・ウォーダー(衛兵)の職務もこなしており、塔内の警備や観光客への案内も担当しています。また、鴉の世話は彼一人ではなく、3人のチームがクリスのサポートをし、彼の休暇中は代わりに鴉たちの世話を行います。


6代目レイヴンマスター、デリック・コイル氏。

しかし、この仕事にはリスクも伴います。鴉たちは非常に知的であるため、時にはいたずらをし、観光客から財布や小物を盗んで隠すことがあります。また、クリスは鴉たちとの良好な関係を築いていますが、全ての鴉が彼に親しみを持っているわけではありません。その証拠に、クリスの腕には鴉による傷跡がいくつも残っています。

カラスの知能と行動

鴉は非常に知能の高い動物であり、過去、現在、未来を理解することができると言われています。実際、大学の研究者たちはロンドン塔を訪れ、鴉の行動や認知能力を研究しています。鴉の知能はチンパンジーやイルカに匹敵するとされ、クリスは「もし人間の脳が鴉と同じ比率であれば、私たちの頭は2倍の大きさになるだろう」とよく冗談を言います。このような知能の高さが、鴉たちの好奇心旺盛な性格を生み、時には観光客の小物を盗むなどのいたずらに発展することもあります。

また、鴉たちは自由に飛び回ることができ、クリスは彼らの翼を切ることを嫌い、飛行能力を制限するのではなく、飛び方に少しだけ調整を加えるにとどめています。それでも鴉たちは時折、塔を飛び出し、ロンドン市内を飛び回ることがあります。ある時、クリスは鴉のムニンが7日間行方不明になり、最終的にグリニッジの男性から電話を受けて無事に連れ戻しました。

レイヴンマスターの歴史と伝説

レイヴンマスターの役職は、長い歴史を持つわけではありませんが、その起源には興味深い背景があります。伝説によれば、もしロンドン塔から鴉がいなくなれば、イギリスは滅びると言われています。この伝説は、ヴィクトリア朝時代の空想だと考えられていましたが、実際には第二次世界大戦中のブリッツ(ドイツによる空襲)の最中に広まりました。イギリスが最も暗い時期にあったとき、人々は鴉が塔に残っている限り、イギリスは滅びないという希望を抱いていたのです。この伝説に基づき、初めて正式にレイヴンマスターの役職が設けられたのは1950年代であり、クリスはその6代目となります。

チャールズ2世の時代、ロンドンにはまだ野生の鴉が多く住んでおり、ロンドン塔にも多くの鴉が住み着いていました。チャールズ2世は、鴉が幸運の象徴であると信じていましたが、王室天文学者ジョン・フラムスティードが、鴉のせいで天体観測が妨げられると苦情を言った際、チャールズは天文台をグリニッジに移すことを選び、鴉を塔に残しました。このエピソードもまた、鴉がイギリスの運命に関わるという伝説を強化する一因となりました。

鴉とイギリスの未来

現在でも、ロンドン塔を訪れる多くの観光客は、この伝説に興味を持ち、鴉を象徴的または霊的な存在と見ています。クリスは毎日ソーシャルメディアを通じて、鴉との体験を共有し、鴉たちの写真や動画を投稿しています。塔の鴉たちが存在し続ける限り、この古くも新しい伝説は語り継がれていくことでしょう。

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