トランプ陣営「移民が猫を食べている」陰謀論を展開 イーロン・マスクも拡散
もぐもぐニュース / 2024年9月20日 11時46分
ドナルド・トランプ元大統領とその支持者たちは、これまでも陰謀論を武器に政治的影響力を拡大してきました。しかし、今回の新たなキャンペーンで掲げられた主張は一段と奇妙です。それは、「ハイチからの移民がアメリカの猫やアヒルを盗み、食べている」というもの。驚くべきことに、このような事実無根の陰謀論が一部の支持層に広まりを見せています。
トランプ陣営の中核的な人物たち、特に副大統領候補のJDバンスがこの噂を広めています。彼らは、移民による「ペット盗難と食用」を持ち出し、これがバイデン政権とカマラ・ハリス副大統領の責任であると強調しています。この噂は、移民政策に対する不安や恐怖を煽り、トランプ支持者を再び結集させる狙いがあると考えられます。
噂の出所とその広がり
この陰謀論は、オハイオ州スプリングフィールドに住むハイチ系移民が、猫やアヒルを捕まえて食べているというものです。噂の始まりは、Facebookに投稿された一件の報告。ある住民が、「隣人の娘の友人の飼い猫がハイチ系移民の家で木に吊るされていた」と主張しました。その後、この報告がSNS上で拡散し、アヒルやガチョウが同様の運命をたどっているとの話まで加わりました。
しかし、この陰謀論には全く根拠がありません。例えば、オハイオ州カントンで猫を殺したとして逮捕された女性はアメリカ市民であり、ハイチ系移民とは無関係です。また、彼女が逮捕されたカントンはスプリングフィールドから約160キロも離れており、関連性は皆無です。さらに、SNSで拡散された「ガチョウを持っている黒人男性」の写真も、ハイチ移民とは無関係なものでした。
地元の警察も、ペットが盗まれたり食べられたりしたという報告は一切受けていないと発表しており、この噂が全く事実無根であることが確認されています。
トランプ陣営による陰謀論の利用
今回の「猫を食べている」という噂は、トランプ陣営による移民問題に関する過去の陰謀論の延長線上にあります。トランプは、2016年の大統領選挙から移民に対する恐怖を煽る手法を多用してきました。「メキシコからの移民は犯罪者や麻薬密売人だ」といった主張や、「バイデン政権は国境を開放し、アメリカを危険に晒している」という批判はその一例です。
今回の陰謀論も、移民に対する反感を煽るための手段として利用されています。特に副大統領候補のJDバンスは、今年初めの上院公聴会で「ハイチからの不法移民がスプリングフィールドの社会資源を消耗し、混乱を引き起こしている」と主張しました。その後、彼は「移民がペットを誘拐して食べている」という発言を追加し、噂をさらに広めました。
このような陰謀論の背景には、移民に対する恐怖心を煽り、支持者の結束を強化する狙いがあります。移民問題はアメリカの政治において極めてセンシティブな話題であり、こうしたデマはその感情をさらに刺激します。
イーロン・マスクやSNSでの拡散
この陰謀論は、SNSを通じてさらに広がりを見せました。イーロン・マスクもこの噂に加担し、X(旧Twitter)で「どうやら人々のペットの猫が食べられているらしい」とコメント。彼の発言が火に油を注ぎ、デマは瞬く間に拡散しました。
さらに、トランプの息子であるドナルド・トランプ・ジュニアや共和党の下院司法委員会も、AIで生成された「トランプが猫やアヒルを守っている」画像をSNSに投稿。これにより、トランプ支持者の間でこの噂が真実であるかのように広がっていきました。
この陰謀論が支持される理由の一つは、社会的・政治的不安が背景にあります。特に移民問題に関しては、アメリカ国内で賛否が分かれており、不安や恐怖が根強く残っています。トランプ陣営はこの不安を利用し、支持者を動員するためにデマを広めているのです。
また、SNSが情報の拡散を容易にし、誤った情報が急速に広まる現代のメディア環境も、この噂が広まる要因の一つです。情報の真偽を確認する前に感情的な反応を促すようなデマは、多くの人々にリーチしやすいのです。
デマ汚染される選挙戦
今回の「猫を食べている」陰謀論は、トランプ陣営が過去に使用してきた移民問題に関するデマの延長であり、政治的な目的を持って広められたものです。実際には何の根拠もないこの噂が、多くの人々に信じられてしまう背景には、移民問題への不安や、SNSを通じた情報の拡散が関わっています。
アメリカの政治はますます「事実に基づかない情報」によって汚染されており、今後の選挙戦もこうしたデマの影響を受け続ける可能性があります。
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