リクルート「2019年トレンド予測」に潜む“2つの潮流”

MONEYPLUS / 2018年12月17日 19時30分

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リクルート「2019年トレンド予測」に潜む“2つの潮流”

今年で10回目を迎える、リクルートホールディングスの「トレンド予測発表会」。12月17日に開かれた今年の発表会では、住まいから新卒採用、飲食まで8つの領域で2019年の予測トレンドがお披露目されました。

この記事では、その中から特徴的だと思われた4つのトレンドをピックアップ。その背後に浮かび上がる、2019年の大きな潮流について深掘りしてみます。


軽減税率で「中食」のグルメ化が進展

2019年の大きなトピックといえば、10月に予定されている消費税率の引き上げでしょう。政府は生活に最低限必要なものに対する措置として、軽減税率の適用を予定しています。こうした流れを受けて、飲食領域で2019年のトレンドになりそうだと予想されたのが「ポータグルメ」です。

これは「ポータブル(持ち運びできる)」と「グルメ(おいしい)」を足し合わせた造語。テイクアウトやデリバリーができて、なおかつ、おいしいグルメに注目が集まると、ホットペッパーグルメ外食総研の稲垣昌宏・上席研究員は分析します。


短い時間で高い満足度を得られるのが「ポータグルメ」の特徴

折しも日本では、労働人口の減少や共働きの増加などによって、個人の役割の多様化が進展。企業でも働き方改革や子育て女性の就業率アップなどに伴い、労働生産性の向上も課題となっています。

こうした中で、消費者はコストパフォーマンスよりもタイムパフォーマンスを重視する傾向にシフトしているといいます。調査会社マクロミルの調査によると、「忙しい時でもおいしいものが食べたいと思う」人の割合は81.6%に上っています(調査対象:4,576人)。

一方で、消費増税に伴う「中食」への軽減税率導入をめぐって、最近は外食企業の中食参入・強化が顕著に。店に加えて、テイクアウトやデリバリーでも料理を提供する“三刀流”の事業者が増加傾向にあります。

同じマクロミルの調査では、「コンビニ弁当などの代わりに、外食店のテイクアウトやデリバリーを利用してみたい」という人の割合は72.4%。外食店からのテイクアウトやデリバリーに期待することとして、「専門的な味」「メニューのバリエーション」が「価格の安さ」を上回る状況となっています。

すでに一部の外食企業はこうした動きを強めています。たとえば、黒毛和牛で有名な「ミート矢澤」は、大丸東京店内のテイクアウト専門店で1つ9,980円(税込み)の「極味弁当」を販売。また、店舗があるにもかかわらず、キッチンカーを出したところ、ランチの売り上げが4倍に増えたイタリアンのお店も出てきています。

新たなタイプの“田舎暮らし”が増加

消費増税といえば、影響度が大きそうなのが住宅業界。しかし、今回の増税に当たっては住宅ローン減税の期間が3年延長されるなど、対策が拡充されることもあって、消費増税がトレンドに及ぼす影響は小さそうです。

むしろ、個人の役割の多様化や労働生産性の向上という流れを受けて、地域とのつながりを求める傾向が2019年のトレンドになるとみているようです。SUUMOの池本洋一編集長は、このトレンドを「デュアラー」と命名しました。

これは、都心と田舎の2つの生活=デュアルライフ(2拠点生活)を楽しむ人のこと。従来は豪華な別荘を持てる富裕層や、時間に余裕があるリタイア層が楽しむものというイメージがありましたが、近年は空き家やシェアハウスを利用して、20~30代が都心と地方の2拠点生活を楽しみ始めているといいます。

2拠点目の地方での住宅は、月額2万円程度の賃貸物件を借りたり、親族から相続した地方の家に住んだり、300万円程度の古民家を買ったり、さまざまな持ち方をしています。共通するのは、いずれも安く済ませているという点です。

リクルート住まいカンパニーの調査によると、デュアラーの年代は20~30代で58%。世帯年収は約半数が800万円未満となっています。2拠点目での年間滞在日数は月平均2~5日が半分弱、2拠点目への移動時間は2時間未満が約6割です。


普通の家庭にも広がりつつある2拠点生活

デュアラーは目的別に6タイプに分けられるそうで、サーフィンや農業などを楽しみたい「趣味満喫型」、自然に触れてのんびりしたい「自然癒され型」、故郷や地元の人との交流を楽しみたい「ふるさと型」、将来移住するために試してみたい「プレ移住型」、のびのびとした環境で子育てがしたい「のびのび子育て型」、地域貢献で存在意義を感じたい「地域貢献型」に大別できるといいます。

同社の推計では、国内の潜在需要は約1,100万人。2018年時点でデュアラー人口は17万人前後とみられているので、かなりの伸びしろが見込まれます。池本編集長は「ロシアや北欧ではデュアルライフは一般的。空き家問題をピンチではなくチャンスにしていくべき」と提案します。

地方企業は街ぐるみで採用を強化

地域とのつながりを求める動きは、新卒採用でも顕著になりそうです。同領域での予測トレンドは「就域」。地方の中小企業と行政、金融機関が連携して、街ぐるみで若者の定着支援を目指す動きです。


これまでのような個社単位ではなく、地域が連携して学生にアピール

リクルートキャリアの調べでは、3大都市圏、地方圏とも「地元で働きたい」と回答した割合は約6割(調査対象:1万1,981人、2015~2017年)。ただ、「求める仕事がなさそう」「仕事の職種・幅が少なそう」という不安が先に立ち、地方圏では地元を離れる若者が多い状況です。

こうした現状を変えるべく徐々に広がりを見せているのが、地域ぐるみで域内の利害関係を超えて連携する「就域」なのです。具体的には、地域に就労する価値を深く知ってもらうため、地域内の他社との面談を推奨したり、入社後の孤立防止と定着を見据えて、合同の内定式やキャリア研修を開催しています。

実際に「就域」の取り組みが始まっている豊岡市(兵庫県)や帯広市(北海道)の採用現場では、企業説明の前に地域への魅力を伝えたり、その魅力を伝えるのに自社だけで不十分であれば、積極的に他社を紹介するなどの取り組みが進められているそうです。

美容サロンはスタイリングだけの場にあらず

つながりを求める動きは、美容領域にも広がっています。2019年のトレンドワード「サロ友」。同じ美容サロンに通う人同士のつながり、コミュニティで生まれた友達を指しています。

国内人口が2008年を直近のピークにして減少の一途をたどる中、美容所数は逆にじわじわと増えています。10年前には22万強だった美容所数は、2018年には24万強まで増加。限られたパイをめぐって、美容サロン同士の競争は激化しています。

こうした中で、美容サロンの技術は高止まり。ホットペッパービューティーアカデミーの調査では、カウンセリングやアフターフォローなど、施術以外の要素が差別化のポイントになっていることがわかりました。


42%の人が「施術以外」を重視するという結果に

また、同じ調査で「仕事や家庭以外で人とのつながりを増やしたい」という人の割合は63%に上りました。これらを総合すると、人が集まるという強みを持つ美容サロンには、同じ地域や共通の趣味を持つ人が気軽に集まりやすく、うまくコミュニティ化できれば競合との差別化材料になりうるというわけです。

ホットペッパービューティーアカデミーの千葉智之アカデミー長は、サロ友には2つのタイプがあるといいます。1つは、友達に会いに行くような感覚で近所の人たちが気軽に集まる「ご近所タイプ」。クラフトビールが飲めるサロンや、常連客がマンガを読むために訪れるサロンなどがあるそうです。

もう1つが、同じ趣味や世界観を持った人たちが遠方からでも集まる「趣味タイプ」。自転車好きが集まるサロンや、鉄道好きが集まりツアーなども開催するサロンがあるようです。

今回の記事で紹介した4つのトレンドの底流にあるのは、「役割の多様化や労働生産性の向上といった社会の変化や課題」と「地域を中心とした他者とのつながりを求める動き」と見ることができそうです。

<文:編集部 猪澤顕明>

(MONEY PLUS編集部)

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