為替リスクを抑えても高利回りって本当?円ヘッジ付き外債の仕組みとは

MONEYPLUS / 2019年3月4日 6時0分

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為替リスクを抑えても高利回りって本当?円ヘッジ付き外債の仕組みとは

円ヘッジ付き外債というものをご存知でしょうか。円ヘッジをしない外債投資に比べて為替リスクが小さくなる一方で、世界中に投資先を探しにいくことで、同種の日本の債券(以下、円債)よりも相対的に高いリターンを獲得しようとする投資です。

元本保証はないものの、円債の代わり(円債代替)として検討されることの多い円ヘッジ付き外債ですが、なぜ円債よりも相対的に高いリターンが期待できるのでしょうか。今回は、この円ヘッジ付き外債の仕組みについてお伝えします。


市場の“ゆがみ”を利用して「円債代替」に投資する

まず、現在の各国国債利回りの水準を見てみましょう。日本の国債の利回りは、主要先進国の中でおおむね最も低い水準にあることがわかります(下図)。

日本国債と米国国債を比較してみると、日本国債の利回り0%に対して、米国債の利回り3%は魅力的に映ります。しかし、投資家は3%の円高が進むことを不安に思うのです。なぜでしょうか。為替の先物市場を例に説明します。

1ヵ月先に円で米ドルを買いたいAさんがいたとします。Aさんが今、価格を決めてしまおうとする(円でヘッジする)と、その相手となるBさんは金利差分(米国債利回り-日本債利回り)を受け取ってAさんの米ドルを用意しようとします。その結果、Aさんの為替水準は円高になるのです。つまり、Aさんは為替変動リスクを抑制できるのですが、1ヵ月分の金利差(米国債利回りの方が高い)を受け取ることができなくなるのです。

しかし、しばしばこの理論に“ゆがみ”が生じて、「少し高い利回り」を得ることが可能になります。いわゆる、“ゆがみ”を利用して利益を獲得する取引、「裁定取引(アービトラージ)」の考え方です。

この裁定取引が可能な例として、ある通貨が別の通貨と政策的にペッグ(特定の通貨と自国通貨との為替レートを一定に保つ)しているケースがあります。それぞれの通貨国の成長率は通常異なるため、金利の変動幅がずれてしまう“ゆがみ”が往々にして起こります。この時、円と他通貨の間でヘッジしても、期限などが同条件の円債の金利よりも高くなるのです。これが、同種の円債よりも「少し高い利回り」が期待できる仕組みです。

裁定機会はどの程度あるのか

上記のようなケースでよく取り上げられる商品が、北欧のカバード債券(住宅ローンなどの融資債権が担保に用いられている債券、質の高い担保と発行体による信用補完を兼ね備える)です。ここで、過去のリターンの推移をみてみましょう。(下図)

日本や米国には同種の債券がないため、類似のMBS(住宅ローン債権を担保として発行される証券)と比較すると、円でヘッジしても高い利回りが実現できるデンマーク・カバード債券のパフォーマンスは、相対的に好調であることがわかります。

このパフォーマンスの源泉は、純粋に金利差と為替水準から得られるだけではなく、国によるクレジット(信用)市場サイクルのずれなどもあると思います。例えば、デンマークの通貨は、ユーロと実質的にペッグ制を採用しているのですが、経済成長率などがユーロ圏とは異なるため、為替への需要が生じて裁定取引の機会も増えているのです。

円債との相関は低い

年率リターンをみると、円ヘッジ後のデンマーク・カバード債券は2.6%程度で、日本の国債とMBSの2%程度よりも高くなっています。さらに、リスク1単位に対するリターンの比率(数値が大きいほど運用効率が高い)も1.172と円債(1.041)よりも高く、効率的な投資先といえます。

また、円債と円ヘッジ後のデンマーク・カバード債券の関係の強弱を測る相関係数(1に近づくほど関係が強い)は0.25程度と低く、分散効果も期待できることから、カバード債券は魅力的な投資先と考えられます(※文中の数値は、図「各証券の円ヘッジリターンの推移」の期間で計算)

このように、市場の“ゆがみ”を利用した裁定機会を利用して、円債よりも少し高い利回りが期待できる円ヘッジ付きカバード債券は、魅力ある商品の1つではないでしょうか。

<文:チーフ・ストラテジスト 神山直樹>

(日興アセットマネジメント Market Plus執筆班)

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