150作品を無料配信、「ジャンプ」×「マガジン」共闘の胸の内

MONEYPLUS / 2019年4月21日 8時0分

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150作品を無料配信、「ジャンプ」×「マガジン」共闘の胸の内

マンガファンには夢のような、少年マンガの展開さながらの“共闘”です。集英社と講談社は4月8日、「週刊少年ジャンプ」「週刊少年マガジン」に掲載中の作品を中心とした約150タイトルのマンガを無料で読めるウェブサイト「ジャンマガ学園」をオープンしました。

両誌によるこうした共同プロジェクトは今回が初めて。長年の2大ライバル誌がタッグを組んだ形です。いったいなぜ、両誌はこんな取り組みを始めたのでしょうか。


22歳以下に6月10日まで公開

「週刊少年ジャンプ」(集英社)と「週刊少年マガジン」(講談社)といえば、どちらも日本を代表する少年マンガ雑誌。両誌とも創刊50年を超え、長らく発行部数を競ってきたライバル誌同士でもあります。

その両誌が立ち上げたジャンマガ学園とは、無料で約150タイトルのマンガを読めるウェブサイト。6月10日までの期間限定で公開しています。

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サイトに初めてアクセスした際に「生まれ年」を入力して認証。ユーザーがSNS上で楽しむことができるさまざまな「学園行事」やサービスも用意

学園という名が示す通り、「マンガの学校」がコンセプト。より若い世代に訴求したいという狙いから、利用者は22歳以下に限定。ジャンプとマガジン以外にも「少年ジャンプ+」「別冊少年マガジン」「マガジンポケット」の計5媒体に掲載されている作品を無料で読むことができます。

大ヒット作品の『ONE PIECE』(ジャンプ掲載)や『進撃の巨人』(別冊少年マガジン掲載)なども無料配信の対象として含まれ、豪華なラインアップとなっています。また、作品によって読める話数は決まっているものの、どの作品も第1話は必ず読むことができます。

背景にあるのは若者の●●離れ

昨今、スマートフォンの普及などにより娯楽が多様化。それに伴って、子供や若者のマンガ雑誌離れが進み、マンガ雑誌の業界全体の悩みのタネとなっていると言われています。

週刊少年ジャンプ・中野博之編集長(上写真左)は、初のライバルとの共闘に「もっと子供たちにマンガを読んでほしいという思いが両誌ともにあった。マガジンはライバルであり仲間。タッグが組めてうれしい」と語りました。

対する週刊少年マガジン・栗田宏俊編集長(上写真右)も「読み切れないほどのコンテンツを用意している。多くの若い人に楽しんでほしい」と、読者層の広がりに期待を込めます。

実際にプロジェクトを牽引したのは、「少年ジャンプ+」の細野修平編集長と「マガジンポケット」編集長の橋本脩さん。両媒体は、ジャンプ、マガジンそれぞれの公式マンガアプリ(ウェブサイト)であり、デジタル媒体です。

ジャンマガ学園同様、紙媒体で連載中の人気作品や歴代のヒット作品を無料で試し読みできるのが特徴。また、前述のマンガ雑誌離れを防ぐべく、両社においてマンガ雑誌のデジタル戦略、デジタルシフトを最前線で担ってきた存在でもあります。

今回の共同プロジェクトに関しては、ジャンプとマガジンのどちらか一方が企画を持ちかけたのではなく、「普段から意見交換をする仲のため、雑談しているうちに決まった」。また、「(若者のマンガ離れなどの)危機感からタッグを組んだというより、デジタル化が進んで、昔できなかったことができるようになったというほうが大きい」と、細野・橋下両氏とも説明しました。

出版不況を食い止められるか

一方、少年マンガ雑誌の部数は年々減少の一途をたどっています。ライバルと組んでまでデジタル媒体を新たに作って大量の無料公開に踏み切るのは、「各誌の生き残りのため」という側面はやはり否めないように映ります。

日本雑誌協会によると、ジャンプの年間発行部数は約177万部。マガジンは約80万部(2017年10月〜2018年9月)。「週刊少年サンデー」を加えた3大少年マンガ雑誌の中で長くトップの部数を誇ってきたジャンプを例にとると、653万部という歴代最高部数を記録した1994年と比べて、実に3分の1以下の部数減となっています。

こうした逆風の吹く中、最近、耳目を引いたデジタルを活用したマンガの販促戦略といえば、元講談社のマンガ編集者・佐渡島庸平さんが立ち上げたクリエイター・エージェンシー「コルク」が仕掛けた、マンガ『インベスターZ』の電子書籍版の「右肩上がりセール」です。

1巻1円、2巻2円、3巻3円……と巻数にあわせて価格を設定。『インベスターZ』は当時17巻まで電子書籍版が出ていましたが、セール対象の1巻から15巻まですべてを買っても129円。破格の安さから、続きの最新巻を定価で買う動きにもつながるなど、高い販促・広告宣伝効果を上げ、第2弾も開催されています。

はたして、今回の2大ライバル共闘による試みは、どこまで効果を上げられるのか。低迷するマンガ雑誌市場の新たな救済策となり得るか。マンガファンに限らず、長引く不況にあえぐ出版業界全体からも注目を浴びています。

(三木いずみ)

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