夫の起業で貯蓄が大幅減、運用資産を解約した方がいい?

MONEYPLUS / 2019年5月14日 18時30分

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夫の起業で貯蓄が大幅減、運用資産を解約した方がいい?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ

今回の相談者は、夫が今年起業するという43歳のパート主婦。退職金を含め1000万円ある夫の貯蓄を起業資金として使用する予定です。そのため、生活防衛資金としての貯蓄はゼロに。運用中の資産を売却して現金をつくった方がいいのでしょうか。FPの横田健一氏がお答えします。

夫が独立するにあたり、運用の比率で悩んでいます。今年、夫が独立し、夫名義の貯金と退職金合わせて1000万円ほどが独立資金となる予定です。夫の事業計画によれば、2年後くらいに現在の手取り収入ほどになり、それまでは赤字になるかもしれないと予想しています。


現在、私の独身時代の貯金と結婚後の貯蓄が600万円ほどあります。3年ほど前から運用していて、現在は200万円ほど含み益があります。教育費用として別に800万円の定期がありますが、夫の独立後もそれには手をつけない予定です。今までは、夫名義の貯蓄を生活防衛資金として考えていたのですが、今後は私の運用分を生活防衛資金として現金化する必要があるのではと考えています。そこで、どの程度を生活防衛資金として現金化すればよいかアドバイスをお願いいたします。また、私のパート代を私名義のiDeCoとつみたてNISAに捻出していますが、夫の事業が軌道に乗るまでは現金で貯金しておいた方がよいでしょうか。


〈相談者プロフィール〉
・女性、43歳、既婚(夫:44歳)
・子供2人:14歳、8歳
・職業:パート
・居住形態:持ち家(マンション)
・毎月の世帯の手取り金額:45万円
(夫35万円、妻10万円)
・年間の世帯の手取りボーナス額:100万円
・毎月の世帯の支出目安:35万円


【現在の資産状況】
・現在の貯蓄総額:1870万円
 夫:1000万円(貯金600万+退職金400万円)
 妻:定期800万円、普通預金70万円ほど
・現在の投資総額:1410万円
 夫:企業型確定拠出年金500万円ほど
 妻:個別株約800万円、iDeCo約60万円(月2万円積立)、NISA約50万円(年40万円積立)
・現在の負債総額:住宅ローン残債1400万円ほど(残期間20年)


横田: ご相談いただきましてありがとうございます。株式会社ウェルスペントのファイナンシャルプランナー、横田健一です。

ご主人が独立されるにあたり、生活防衛資金や運用資産をどのように見直せばよいか、というご相談ですね。筆者も1年半ほど前に独立しましたので、生活設計上、奥様がご不安に思われる気持ちはよくわかります。

早速ですが、今後のお金について見える化するところから始めていきましょう。

2~3年後が最も苦しい時期 今後10年の収支を見える化すると…

いただいた情報をもとに、今後のお金を見える化していくにあたり、以下のような前提を置かせていただきます。

・独立資金は初年度(2019年)に500万円、2年目にも500万円必要
・ご主人の手取り収入は、独立2年後の2021年に260万円、2022年以降は520万円
・奥様の手取り収入は月額10万円で変わらない
・教育費は、必要に応じて用意してある800万円から拠出していく

さらに現在お持ちの資産を以下のように整理し直し、マイホームの評価額を2500万円と仮定させていただきます。

・貯蓄総額:1070万円
・運用資産:1410万円
・教育資金:800万円

これらの前提をもとに、年間収支をグラフにすると、次のようになります。

グラフ1

まず年間収支ですが、独立した今年、来年はそれぞれ700万円、800万円の赤字となります。そして、2年後には独立のための支出がなくなり、ご主人の収入も260万円となるとしていますので、家計としてはほぼトントンに近づきます。その後、ご主人の収入が520万円と、現在の収入水準まで回復されるのであれば、家計としては220万円程度の黒字に戻ることになります(教育費は除く)。

夫の収入が回復しても貯蓄額は不足

この年間収支をもとに、資産額の推移をグラフにすると次のようになります。

グラフ2

このグラフは不動産(マイホーム)を含む資産額をプラスとして、住宅ローンといった負債をマイナスとして表示し、資産から負債を差し引いた金額を純資産として赤い折れ線で表示しているものです。

グラフの中の貯蓄総額を見ていただきたいのですが、1年目、2年目の赤字を反映して、貯蓄総額は2年目にマイナス430万円と資金が足りなくなり、その翌年もマイナス470万円となっていることがわかります。生活費が不足した時に取り崩していくための貯蓄総額が足りなくなると、この部分を手当するために、運用資産もしくは教育資金を取り崩さなければならないことを示しています。

 

生活資金不足を避けるためには運用資産を売却

このように、現在のまま何も手を打たずに生活していくと、来年後半には生活資金が不足してしまうことが見込まれます。これを回避するために、ご相談者様も検討されているように運用資産のうち600万円ほどを売却し、生活資金として準備されてはいかがでしょうか。

ご相談者様が運用されている個別株800万円のうち600万円を売却すると、仮に600万円部分の含み益が150万円だとすれば譲渡所得税は約20%の30万円となりますから、手元に570万円の現金が手に入るかと思います。このように運用資産を600万円売却したとして、シミュレーションし直すと次のようになります。

グラフ3

2年目、3年目の貯蓄総額がそれぞれ140万円、100万円とプラスを維持できるようになっていることがわかるかと思います。2年目、3年目で貯蓄総額がマイナスになるのを避けることができ、ご主人が現在想定されている通りに稼げるようになれば、その後は再び運用を本格化してもよいかと思います。

iDeCoとつみたてNISAは一時休止がおすすめ

現在、継続されているiDeCoとつみたてNISAについては、ご主人の事業が軌道にのるまでは金額を縮小されておいた方が安心だと思います。

具体的には、iDeCoについては、毎月の拠出を最低金額の5000円にしてはいかがでしょうか。また、つみたてNISAについてはいったん拠出をやめてゼロにする、もしくはつみたてNISAは継続したまま、つみたてNISAで投資する金額相当の個別株を売却し、運用資産総額は増やさないようにされるのがよいでしょう。これには課税口座から非課税口座(つみたてNISA)へ移すという意味があります。

ご主人が独立し、事業を立ち上げるというのはとても大きなライフイベントで、事業が成功するかどうかのリスクもありますので、運用のリスクはできるだけ小さくしておくことをおすすめします。

今後、お子様の高校受験や大学受験も本格化してくる時期だと思います。想定外の出費なども考えられますので、できることなら家計の支出などについても見直してみてはいかがでしょうか。


以上、ポイントをまとめますと以下のようになります。

1. 現在想定されている独立資金、独立後の収入を前提にすると、今後2~3年が最も資金的に厳しい時期となります。

2. 来年、再来年で生活資金不足にならないよう、現時点で、運用資産のうち600万円程度を現金化しておくのがよいでしょう。

3. 現在継続されているiDeCoやつみたてNISAは最小限におさえるか、新規拠出額と同程度の金額を運用中の資産から売却して充当するなど、運用資産額は積極的には増やさないのがよいでしょう。

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのFPが答える「みんなの家計相談」の過去の記事一覧はこちらから。

(横田健一)

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