参院選前に何をどう見る?やさしい国会の見方

MONEYPLUS / 2019年5月18日 18時0分

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参院選前に何をどう見る?やさしい国会の見方

連休明けから後半国会が始まり、連日、重要法案に関する国会審議が開かれています。会期は6月26日まで。特に今国会は終了後すぐに参議院選挙をひかえています。景気が不透明さを増す中、10月に予定されている消費増税は本当に行われる流れになるのか。政治・経済の将来を占う後半国会の行方は、いつも以上に注視したいところでしょう。

一方で、近年、人々が政治への関心を失い、国会の評価も下がっていることが一部の意識調査で指摘されています。確かに、ただでさえ政治の話題や言葉は難しくわかりにくいので関心が低くなりがちです。また、現在、政権と与党は意見一致で一枚岩のため「国会は結果が決まっている試合のようで退屈」といった意見も聞かれます。

しかし、本当に国会は難しくて理解できない、退屈なものなのでしょうか。そこで、まずは後半国会の現状把握のために状況をまとめつつ、国会を可視化する活動を展開する「国会パブリックビューイング」代表の法政大学・上西充子教授に“難しい国会審議をやさしく見るコツ”を教えていただきました。


今、国会はどうなっている?

1月28日に召集され、6月26日に終了予定の今年の通常国会。5月現在、後半国会と言われる後半戦が繰り広げられています。一つの議案や法案に対して、先に衆議院で審議・採決が行われることが多いため、この時期には、おもな重要法案の審議は衆議院から参議院に舞台を移しています。その後半国会も、残り約1ヵ月。

国会で議論するときは、両院それぞれで関連する委員会で審議された後、その院に所属する議員全員が参加する本会議で採決し、最終結論を出すという仕組みになっています。後半国会開始早々、委員会での審議を終え、本会議で賛成多数で可決。法案成立に至ったものもすでにでました。

例えば、幼児教育・保育を一部対象者において無償とする「子ども・子育て支援改定法」です。5月10日に参院本会議で可決・成立しました。実施は消費増税と同じ今年10月から。しかし、保育士の待遇が悪く、数も足りない中での実施に法案成立後も疑問の声が挙がっています。また、財源に消費税の増税分をあてることが決まっているため、実質、消費増税がなければ無償化もなし。

安倍総理は、今のところ「消費増税の延期はない」としていますが、「リーマンショック級のことがなければ」と条件つきの発言です。かつ、延期した場合の無償化の財源について問われると明言を避けました。与党もこれにならう形になっています。

予算委員会の開催

一方、野党は各審議に対応するとともに、おもに消費増税の実施の是非を問うための「予算委員会」の開催を求めています。

予算委員会とは、その名の通り、政府が出した1年の予算案について可否を決める会議です。一般的には通常国会前半の1〜3月に開かれます。直接の予算に関わること以外にも、内閣の政策方針や閣僚の資質が問われる重要案件が発生したときは、それらについても審議することができます。与党が開催に賛成すれば、そのときどきで開かれたり、集中審議が行われます。

消費増税以外に、前半国会で紛糾した統計不正問題の追及も積み残されているため、「行政監視の役割」から、改めて今、野党はこれらを審議できる予算委員会の開催を要請している、ということになります。

ほかにも、職場でのパワーハラスメント防止を義務づける「女性活躍推進法」の改正案、参院議員の歳費を削減する「国会議員歳費法」の改正案、新薬の条件付き早期承認制度の導入などを目指す「医薬品医療機器等法(薬機法、かつての薬事法のこと)」の改正案などの審議が実施・予定されています。

以上がごく簡単な後半国会の現況です。どれもわたしたちの働き方や暮らし、医療、そして税金の使われ方に関わり、生活やお金の使い方に少なからぬ影響を与えるため、国会のことは「わかっていた方がいい」「知っておくべき」。と、そこまでは改めて思った人もいるかもしれません。しかし、実際に政治のニュースも見たり読んだりすることは、前述したように、言葉の難しさなどからやはり、ハードルが高く感じるもの。

言葉が難しいだけなのか。もっと理解しやすくする方法はないのか。そもそも、実際の審議の内容を知りたいときは何をどう見ればいいのか。

生の国会審議を解説付きで街角で上映し、"みんなで国会を見る”活動をしている「国会パブリックビューイング」の代表の法政大学・上西充子教授は、次のようにアドバイスします。

上西教授による国会を見るコツ

その1:国会には「前回までのあらすじ」が必要

上西:国会で話されていることの内容が難しかったり、わかりにくいのは、そもそも国会中継にしても政治ニュースにしても、国会審議を何の解説もなしにそのままを流したり、今のようなニュースの伝え方で「見て理解しろ」ということに無理があるからなんですね。

例えば、テレビの連続ドラマでは「前回までのあらすじ」や登場人物の紹介が流れます。国会も連続ドラマと同じ。「前回までのあらすじ」が必要。何が取り上げられているのか、そして何が争点になっているのか。現在の議論に至るまでの流れの解説が必要です。

国会について、いきなり解説なしに見たり読んだり、もしくは、「ニュースを見てもよくわからないから」と、実際の国会中継をその日の最初からいくらがんばって見たとしても、すでに、かなり長期に渡ってつづられてきた物語をクライマックスから見るようなもの。わからないのは無理もありません。

ずっと国会を見ている人でも、途中を少しでも見逃すとわからなくなることもあるので、初心者や途中から議案や法案に興味を持って見ようと思った人にはなおさらわからないでしょう。

とはいえ、もろもろを自分で調べたり、長時間の審議を見る時間は普通の人にはありません。本来ならニュースや新聞記事で概要だけでもつかみたいところです。しかし「前回のあらすじ」付きの報道はもちろん、やさしい言葉で読み解くような記事やニュースも足りていません。

特にテレビは、会期中、動向を取り上げても、ほんの2〜5分程度の枠がほとんど。与野党の感情的な対立シーンなどのわかりやすい絵面が優先され、具体的にどんなやり取りが行われた末に“怒っている状態”になったのか。質疑答弁の全体は伝えていない。新聞も、結論だけを記事にしがちです。

そのため、野党がただ怒ったり、逆に政権側はそれをきっぱりと否定している“ように見える”シーンが繰り返され、そこだけが印象に残ってしまっている。「野党がだらしないから」とよく言われますが、実際はかなり緊迫した、ある意味、“面白い”質疑答弁があっても、なかなか知られることがない。国民が国会に興味を持てなくなるのも仕方ないでしょう。

その2:国会運営のルールをおさえよう

上西:また、そもそも国会運営のルールを一般の人はよく知らない。これも、国会審議のわかりにくさの大きな原因になっていると思います。

例えば、「レク」や「野党合同ヒアリング」の存在です。国会で質疑をする前に、野党議員は関係省庁に資料の提供や説明を求め、質問をする「レク」を重ねたうえで質疑を準備し、国会に臨みます。重要問題については「野党合同ヒアリング」を開き、各党の議員で問題意識を共有することもあります。

「レク」や野党合同ヒアリングはいわば国会の前哨戦。この前哨戦でのやり取りも踏まえて、国会では、大臣らに質疑をしています。野党合同ヒアリングの様子も把握していないと、流れや争点がつかめないことがあります(注:野党合同ヒアリングは、現在、野党議員のアカウントで中継や動画配信している)。

ほかには、実際の国会審議中、議事進行役の委員長が言う「後刻、理事会で協議します」とはどういうことか。あるいは「速記を止めてください」とよく質疑者が言うけれども、何で止めないといけないのか。

理事会とは委員会運営を確認・協議するためのもので、会派ごとに割り当てられた人数の理事がいます。質問者、答弁者の発言に会派として問題を感じたとき、その場で委員長に調整を求めて抗議したり、資料の提出や参考人の招致について、後日、理事同士で協議を行ったりします。速記を止めろとは時間のカウントを止めろということ。答弁にならない繰り返しがあったりした場合、それを許すと、その分、決められた質疑の持ち時間が削られてしまうからです。

国会運営の前提やルールがわからないと、審議を見ても、実際は何を話しているのか、何が起きているのかもわからない。しかし、残念ながら今のニュースや記事の伝えられ方だと、前回までのあらすじはもちろんルールもわからない。だから、解説なしにわかるところだけを見ることになり、難しかったり、退屈に感じるのだと思います。

解決策としては、やはり、「いきなり見ない」こと。国会では、通常国会だけでも100を超える法案が提出*1 され、1日いくつも委員会が並行して開かれており*2 、さらに1案件でも1日数時間、数週間に渡って話されています。一度、外交が気になるなら外務委員会、幼児・保育無償化の法案なら内閣委員会、統計不正問題なら予算委員会などと、自分が一番気になる案件の委員会や法案の審議に絞って見る。そうすると国会審議の仕組みや前提、ルールも分かるようになると思います。

あるいは、特にそういうものがなければ、手前味噌ですが、私たちが有志で主催している国会パブリックビューイング(国会PV)では、一応、旬の話題を取り上げているので、今なら2月4日の質疑をまとめた国会PVの解説動画を見てもらうのもいいかもしれません*3 。統計不正問題に関わる質疑ですが、この解説動画から見て、関連する動画を見たり、国会中継を見ると今国会の流れにも追いつけると思います。

この日の小川淳也衆議院議員(無所属/立憲民主党・無所属フォーラム)の質疑は、見どころたっぷりです。私は、労働問題を扱うので、基本的に厚生労働委員会を見ています。小川議員は総務省出身の元官僚で総務委員会の人。名前も知りませんでした。

でも統計不正問題は予算委員会で審議されたので、見ていたら、すごい展開になった。まさに「前回までのあらすじ」のように、ここまでの流れと、争点が誰にでもわかる質疑になっています。

*1 衆議院HPで「議案種類」のところをクリックすると、提出された議案やその進捗情報が見られる。今国会は198回国会。
*2 国会には予算委員会以外に衆議院の常任委員会だけでも17委員会ある。衆議院の委員会参議院の委員会
*3 国会PVによる2月4日の審議の解説動画。この日以来、小川議員は「統計プリンス」と呼ばれ、各方面で注目度が上がっている。

その3:国会は別に茶番ではない

上西:そもそも私が国会審議を詳細に見るきっかけになったのは、2017年3月に衆議院の厚労委員会で、職業安定法の改正に関して労働の専門家として意見陳述をすることになったから。

それまでも、2015年の国会での派遣法改正や若者雇用促進法の審議なども注目していました。例えば派遣法改正の審議では、政権側はいいことしか言わない。私も初めは「そんなもんかな」と思いながら国会審議を聞いていました。でも、2018年の働き方改革関連法案になると国会審議の答弁に強く違和感を抱くようになった。

というのも、働き方改革は「長時間労働を是正します」という触れ込みで始まったのに、実際には法改正によって長時間労働を助長してしまう裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度の創設を同時に行おうとしていたわけです。しかも、この問題点について、野党が国会で何度指摘しても政権側にはぐらかされていた。

一方で、テレビや新聞といったメディアでは、国会の様子を部分的に伝えるだけ。質疑の全体ほか、何がどう国会で話されているか。適切に知らされないまま「ちゃんとやってくれてるだろう」と、何となくお任せにしてしまっている人がおそらく多いだろうと思ったんですね。そこで、もっと生の国会を解説付きでみんなに見てもらってはどうかと考えたのが国会PVを始めたきっかけです。街頭上映を始めて1年経とうとしていますが、聴衆や視聴者は増えています。

お任せにしてしまう人もですが、今のように、政権と与党が一致していると「どうせ賛成多数だから、結論は決まっている」「いくら審議しても茶番にしかならない」と思う人も確かに少なくないでしょう。

しかし、裁量労働制の拡大は、野党が騒ぎ、世論もメディアも反応したことで撤回されました。多くの人が国会を見たことで、結論ありきでなくなることも十分あるわけです。私たち国民が「政治なんてこんなもん」と諦めて、国会も見ず、関心を持たなくなったら野党も力を発揮できないし、官僚も現状に従うしかありません。彼らを責められないでしょう。

その4:「経済とはすなわち労働問題」と知れば、国会も簡単

上西:これは私のツイッターを見ている方がおっしゃったことですが、「経済とはすなわち労働問題」です。例えば、統計不正問題も私たちの給料の上がり下がりを示す毎月勤労統計の扱いのことであり、結局、この問題は「賃金」という労働問題です。

働き方改革も、「人件費節約」や「長時間労働」という労働の問題。派遣法だって、非正規を増やすことだってそう。官僚が左遷を恐れ、政権の意向を忖度して、あるべき行政がゆがんでしまうこともいわば労働問題。高齢者が比較的政治に対して関心があり、現役世代がそうでないのも、考える時間や行動する時間を奪われているという労働問題と関係しています。

外交にしても経済とつながっていることを考えれば、労働問題にいきつく。つまり、国会で話されていることは労働問題と密接に関係しているのだから、本来、一番身近で、誰にでも理解できるはず。でも、資本主義社会では、特に権力側にとって労働問題は一番やっかいなので、その存在をできるだけ隠したいものです。だから、オブラートに包んでなかなか中身を見せない。言葉を微妙に変え、表面化させない。だからますます、内容の本質がわかりにくくなる。

選挙でも、野党ですら争点として「労働」とは立てない場合が多いです。雇う側と雇われる側の対立構造のどちらに立つのか、とみられるのを避けているのでしょう。でも、本当は、これが国会や政治から一般の人を遠ざけ、わかりにくくしている一番の原因かもしれません。

政治や経済の問題を労働問題として立てないことで、身近な問題と思わなくなり、国会に関心がなくなり、労働者側の力もいつの間にか弱くなって、みんなが苦しむ。「経済とは労働問題である」「労働問題につながっている」と知れば、政治や経済への理解と同時に、国会で話されていることを理解しやすくなると思います。

大学で一所懸命に支援して若者を企業に送り出したのに、非常にやる気をもって就職した卒業生がひどい働き方を強要されて体を壊し、再就職もままならない状態になることに遭遇しました。その時に、教える側として法律通りになっていない現実に備えをもって送り出してあげることができなかったことを痛感しました。でも、そういう現実には、法律を盾に闘うこともできます。逆に、「これは違法だ」と言える裏付けを失えば、権利主張はますます難しくなります。

このこともあって、今、私は国会を見たり、国会PVを続けています。なぜなら、国会は法律を決める場。国会を通して法律は変わります。法律が変わるというのは、闘う前提条件が変わること、そこに影響を与える国会を無視するのはありえないわけです。引き続き、国会をみんなでみていきたいと思います。

一方で、最後にもう一点だけ。国会を見るなら「我々は見ているぞ!」「監視しているぞ!」ということだけで見るのはちょっと違うとも感じています。

もし、国会を見て「いい」と思う質疑があったら、ぜひ、その「良かった!」という気持ちや感謝もあわせて直接、議員に伝えてほしい。国会PVでも聴衆にそのことをお願いしたところ、多くのごく一般の人たちと政治家との間に非常によい交流の循環が生まれた事例があります。議員の個人SNSに「良かった」とコメントするだけでいい。政治を知るだけでなく、政治家と市民の間によい相互交流を生み出せるのも、国会を見る効用の一つです。こうした姿勢で国会を見ていきたいです(談話終わり)

国会審議をチェックする方法

では実際、ニュースだけでなく、国会審議そのものを自分でも見てみようかと思った時、どうすればいいのでしょうか。

実は、この時期、国会審議はニュースで断片的には取り上げられるものの、実際の審議の中身を知るためのNHKによる「国会中継」は行われていません。なぜなら、NHKの国会中継の対象となっているのは、基本的に1〜3月に開かれ、予算案を審議する衆参両院の予算委員会の一部とその本会議だけだからです。

しかし、心配ありません。両院のホームページから見られるインターネット中継やアーカイブ*4、そのほかニコニコ動画などの動画配信プラットフォームなどからも見ることができます。

また、ツイッターには「国会クラスタ」と呼ばれ、その中でも国会議員ではない一般の人で「国会審議を見るのが趣味」という人が実はたくさんいます。いわば、「国会オタク」です(中には、「国会議事堂になりたい」とすら言う方まで)。これらの人のアカウントでは、その日の国会審議の書き起こしがされていたり、大臣や議員の発言がまとめられています。

メディアの記者も参考にしたり、感心したりするほど詳細なことが多々あります。まとめられ方に党派や好みはあるかもしれませんが、「国会」などで検索すると探すことができるので、これらのアカウントをのぞいてみるのもいいでしょう。

審議は、1日で並行していくつもの議題がインターネット中継されているので、ある程度絞ってみたいときには、質疑者と内容、質疑時間のタイムテーブルは必須です。しかし、衆参のホームページには、そのようなものは掲載されていません。

直前まで誰が何時に質疑をするか変わるからです。一方で、政党の国会情報のツイッター・アカウントや質疑に立つ議員個人のアカウントから、ネット上で事前に公開掲載しています。

先ほどの「国会クラスタ」と呼ばれる人たちのツイッター・アカウントでも、これらの情報は頻繁にシェアされています。また政党によっては、質疑に使ったパネル資料が、ネットにあげられていることもあります。インターネット中継だとカメラ位置の都合でパネルが見えない時があるからです。中継や録画を見ながら、これらのパネルの確認も可能です。

野党合同ヒアリングの中継や振り返り動画を配信してくれている議員もいます。政党や国会議員自身が、こうして国会の中をどんどん開いていこうという動きは広がっています。国会議員は必ず、常任委員会の一つに所属しなければなりません。気になる議員がいたら、どの委員会に所属しているかを調べ、それを端緒に国会のその人の委員会の審議を見てみるのも面白いかもしれません。

*4 衆議院のインターネット中継参議院のインターネット中継

上西充子
上西充子(うえにし・みつこ)
法政大学キャリアデザイン学部教授。東京大学教育学部卒業後、同経済学部に学士入学し卒業。同大学院経済学研究科第二種博士課程満期退学。労働政策研究・研修機構の研究員を経て、2003年より法政大学教員。専門は社会政策、若年労働問題。ヤフーニュースの「「朝ごはんは食べたか」→「ご飯は食べてません(パンは食べたけど)」のような、加藤厚労大臣のかわし方」の記事で名付けた「ご飯論法」が「2018ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンに選出される。『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)『10代からのワークルール』(旬報社)『呪いの言葉の解きかた』(晶文社・近刊)など著書多数。

(三木いずみ)

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