野村不動産、脱「3LDKモデル」が映すマンション市場の変容

MONEYPLUS / 2019年5月14日 7時0分

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野村不動産、脱「3LDKモデル」が映すマンション市場の変容

高級感があり、機能的なイメージがある野村不動産の分譲マンション「PROUD(プラウド)」シリーズ。日本を代表するマンションブランドの1つとして、同社の屋台骨を支えてきました。

しかし、親会社である野村不動産ホールディングス(HD)が4月25日に公表した2020~2028年の新たな中期経営計画では、この住宅事業で大きな方針転換が打ち出されました。その内容と背景を深掘りしてみます。


屋台骨の住宅部門で減益に

野村不動産HDが中期計画と同日に発表した2019年3月期決算は、売上高が前期比7.2%増の6,685億円、本業の儲けを示す営業利益が同3.3%増の791億円と、いずれも前年度を上回りました。

しかし、同社が強みを発揮してきた住宅部門では、計上戸数が増加し、売上高は前期を上回った一方、経費が増えて営業利益は同13億円減の231億円に落ち込みました。

その結果、今回の決算では、2015年に発表した前回の中期計画の目標を達成することはできませんでした。これを受け、沓掛英二社長は「非常に速いスピードで不動産業界全体が変わってきている」と危機感を口にしました。

3LDK
ファミリー世帯を前提にした従来のビジネスモデルに変化の兆し

少子高齢化でファミリー世帯が減少し、単身やシニア世帯が増加。ライフスタイルや価値観は多様化し、誰もが同じようなマンションを欲する時代ではなくなりつつあります。分譲マンションをめぐる環境は急速に変化しており、新たな中期経営計画の必要性を強調しました。

もはやパワーカップルしか買えない?

同社の公表した資料によると、首都圏の新築マンションの供給数は低迷しています。2013年には5万6,478戸の供給がありましたが、2018年には3万7,132戸に止まりました。

一方で、郊外物件が減り、都心部の物件の比重が高まってきたことで、平均販売価格は上昇傾向にあります。2012年の平均販売価格は4,540万円でしたが、2018年には5,871万円と、約1.3倍にまで高騰しました。

背景には、共働き世帯の増加があるとみられます。新築マンション購入者に占める共働き世帯の割合は、2008年の37.4%から、2018年には52.4%に上昇。共働きといっても、夫が収入の主体で妻はパート程度というのではなくて、夫婦同等に稼ぐ世帯、いわゆるパワーカップルが目立つといいます。

合わせて、いくらまでローンを組むことが可能かという借入可能額も上昇。2008年の4,998万円から、2018年には5,778万円となりました。

妻がバリバリ働く世帯は、郊外ではなく、通勤の利便性や保育施設の充実などを優先した都心部のマンションを好む傾向にあります。マンション価格が上がっても、ダブルローンを組んで購入できるというわけです。

強化するのはどんな物件なのか

そこで今回の中期計画で打ち出すのが、子供のいない世帯や単身者、アクティブシニアをターゲットにしたコンパクトタイプのマンションの分譲。これまでのプラウドシリーズは、夫婦と子供の3~4人暮らしで、広さは70~80平米の3LDKタイプというのが標準的で、新築のほとんどを占めていたといいます。

一方、コンパクトタイプは、60平米前後と専有面積は小さいものの、都心への通勤利便性が極めて高い立地で、価格は6,000万~7,000万円台というイメージ。このような間取りを今後増やし、ファミリー層の需要減少に対応していく方針です。

沓掛社長は「郊外からの通勤1時間より都心の30分。東京駅まで近いエリアのニーズが高まっている」と分析します。同社では、東京都江東区の門前仲町や豊島区の東池袋などにプラウドシリーズの大型マンションを相次いで建築し、売れ行きは好調です。今後も、葛飾区の金町や江東区の亀戸など、都内でも東側のエリアで大型物件を開発する計画です。

今後の計画
野村不動産の今後のマンション開発計画

都内のマンション価格は高止まりし、需要が低迷しているという指摘もあります。都心の新築マンションは高すぎて買えないけれど、通勤に便利な街に住みたいという層には、この野村不動産の方向転換は、何かの行動を起こすきっかけになるかもしれません。

<文:編集部 澤本梓>

(MONEY PLUS編集部)

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