企業業績の「2期連続減益」観測は実際どれだけヤバいのか

MONEYPLUS / 2019年5月23日 11時30分

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企業業績の「2期連続減益」観測は実際どれだけヤバいのか

5月20日に発表された1~3月期の国内総生産(GDP)は、マイナス成長を見込んでいた市場の予想に反して、前期比プラス0.5%、年率プラス2.1%(実質、季節調整済み)となりました。これを受けた週明けの株式市場は買いが先行し、日経平均株価は一時、前週末の終値に比べて約180円高まで上昇する場面がありました。

これは文字通り、機械的な反応でしょう。指標が市場の予想を上回るか下回るかで、自動的に買い/売りを発動するアルゴリズム取引によるものだと類推されます。あるいは、GDPが下振れすることに賭けていた向きの買い戻しでしょう。

というのは、GDPの中身は決して評価できるようなものではなかったからです。「個人消費」と「設備投資」は伸びず、内需の弱さから「輸入」が大きく落ち込んだため、形のうえでは外需が成長に寄与した格好になっていますが、「輸出」も減少しており、外需が好調とはとても言えません。日本の景気は弱含んでいるというのが実相でしょう。

ニュースのヘッドラインだけで判断できないのは、GDPのようなマクロの統計だけでなく、ミクロの企業業績についても言えます。3月期決算発表も一段落し、先日、新聞に企業業績の集計結果が掲載されました。その記事の見出しは、「上場企業2期連続減益へ」というものでした。

上場企業の2020年3月期の純利益は28兆4,500億円程度と前期比で1.4%減と小幅ながら落ち込みそうで、2019年3月期に続いて2期連続で最終減益となる、と報じています。むろん間違いではありませんが、その内容はもっと詳しく見る必要があります。


電機セクター大幅減益の深刻度

記事は、業種別で純利益全体の1割強を占める電機セクターの落ち込みが響く、と指摘しています。書かれている通り、東京エレクトロンやアドバンテストなど、半導体関連銘柄の減益が目立ちます。

しかし、このセクターで最大の減益要因は東芝で、それは東芝メモリーの売却益がなくなるためです。次に大きいのは、ソニーの4,000億円の減益。前期比45%減とほぼ半減する見通しです。

その要因には、2019年3月期に計上した米スポティファイ・テクノロジー株の売却益がなくなることも含まれます。ソニーの2019年3月期の純利益は同87%増の9,162億円と、過去最高を更新しています。この貢献もあって、電機セクターの2019年3月期は同20%超の大幅増益でした。

つまり、東芝メモリー売却益などの特別利益やソニーの最高益もあって前期の水準が膨らんでいたため、2020年3月期は反動減が大きく出ている、という面があります。電機セクターでは日立製作所の2,000億円の増益などもあって、経常利益で見れば微減益にとどまっています。

業績見通しの確度はいかほど?

経常利益で減益を見込んでいる業種は多くありません。数で言えば、増益の業種のほうが目立ちます。

その中で大幅減益となっているのが医薬品。ただしそれは、武田薬品工業のシャイアー買収による3,800億円の赤字転落でほぼ説明がつきます。これだけで5,000億円近くの減益要因です。医薬品セクターはアステラス製薬、第一三共が最終減益の見込みですが、他社の増益でほぼ相殺されます。

その武田の赤字にしても、シャイアー買収に伴う会計処理の要素が大きく影響しています。在庫の評価替えに伴う売上原価の上昇や、特許の償却費などのコスト増が収益の圧迫になっています。しかし、これはあくまでも会計上の話で、本業の業績には関係がなく、かつ一時的な要因です。

このように、全体でとらえれば確かに2期連続減益の見通しですが、個別の特殊要因がかなり影響しています。実質的には、前期比で微増益というところだろうと思いますが、足元の世界経済の状況は自律的な景気サイクルの底打ち模索の局面と見られ、そこに米中貿易摩擦の影響などが重なり、非常に先行きが不透明になっています。

こうした局面の業績見通しは、確度が高いとはいえません。今のとらえ方としては、ざっくり前期比横ばいプラスマイナス数%程度、と置いておき、四半期毎にこまめなアップデートをしていくしかないのではないか、と考えます。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>

(マネックス証券 執筆班)

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