ついに米国が利下げ?為替市場で何が起こるか

MONEYPLUS / 2019年6月18日 6時0分

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ついに米国が利下げ?為替市場で何が起こるか

6月に入り、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)による早期利下げ観測が急速に台頭しています。仮に米中貿易摩擦が長期化すれば、FRBが“予防的な利下げ”を実施するというシナリオが市場でかなりの支持を得ているといえます。

焦点は、もはや「利下げがあるかどうか」ではなく、「いつ実施されるか」というところに移っている印象です。市場あるいはトランプ政権から強い利下げ要求圧力を受け、FRBが従来の「忍耐強い姿勢」を維持するのが難しくなっているのは確かでしょう。


長期的な米国の金融政策とドル円相場

当局からも、セントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁など、一部で利下げ観測に同調する声も聞かれます。米国の利下げ観測の台頭は、日米金利差の縮小を通じて円高ドル安をもたらすという連想が働きやすいといえます。

実際、ドナルド・トランプ大統領が2,000億ドル相当の中国製品に対する関税を25%に引き上げることを表明した5月上旬以降、米国債主導で日米金利差縮小が加速し、それとともに円高ドル安が進行しています。

一方、長期的に見た場合、米国の金融政策とドル円相場の方向性は必ずしも一致しません。

過去を振り返ると、1990年以降、FRBの利下げ局面は5回あります。このうち、3回はでは円高ドル安が進行した反面、2回は円安ドル高に振れています。利下げサイクルは景気後退期と重なりやすいため、ドル安というイメージが湧きやすいのですが、逆にドル高というパターンもあり、興味深いものがあります。

過去の利下げ

なお、2015年6月にはドル円相場が一時125円台まで円安に振れていますが、当時は米国の利上げがまだ行われておらず、日米長期金利差は現在ほど拡大していませんでした。こうした事例からも、ドル円相場の値動きを予想する際、米国の金融政策や日米金利差を過度に信頼するのはリスクが高いといえます。

相場はどう反応するか

さて、話を現在に戻すと、仮に近い将来FRBが利下げを行った場合、ドル円相場はどのような反応を示すのでしょうか。

市場はすでに十分過ぎるほど利下げを織り込んでいるため、一段のドル安という展開は想像しにくいものがあります。また、もう少し先を見通しても、ドル安の動きは限定的ではないでしょうか。

今回は、あくまでも「予防的な利下げ」であろうことがポイントとなりそうです。米国が本格的な景気後退局面入りする可能性は現段階では低いといえ、利下げペースは緩やかなものになることが想定されます。さらに、米中貿易摩擦の進展次第では、そもそも利下げ自体が行われない可能性もあるでしょう。

日本の国内事情を分析

一方、ドル円相場の過去の値動きを語るうえで、日本の金融政策にも触れないわけにはいきません。

日本銀行は、黒田東彦総裁の就任後、2013年4月4日に「量的・質的金融緩和」(いわゆる異次元緩和)をスタートさせ、2014年10月31日には同第2弾を発動しました。日銀の大規模な金融緩和は「黒田バズーカ」とも称され、ドル円相場に大きな影響を与えたであろうことは疑いようがありません。

ただし、すべてを日銀の金融政策で説明することには異論も当然あります。たとえば、異次元緩和第2弾の発動と同日に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は運用資産構成割合の見直しを発表しました。この結果、対外証券投資に回す資金が大幅に増加したことが、その後の円安加速を説明するには合理的かもしれません。

このように、金融政策よりも実需の売買のほうが重要との文脈の中で、貿易収支の果たす役割の大きさを指摘しておきたいと思います。

日本の貿易収支の推移を見ると、円安が大きく進んだ2014~2015年にかけて、貿易赤字が急拡大していることがわかります。東日本大震災以降、日本国内の多くの原発が稼動停止となり、その結果、海外からの化石燃料の輸入量が増加。その後、資源価格の上昇と相まって、日本の輸入金額が急拡大しました。

大震災からしばらくは円高基調が続きましたが、その後の急速な円安への伏線は張られていたといえるでしょう。なお、2015年後半以降は日本の貿易赤字が縮小し、黒字に転じたことが円安局面の反転に大きく寄与したと考えられます。

直近の状況では、日本は再び貿易赤字基調に転じています。実需取引を軽んじることができないのは、資金の流れが一方通行であることに起因します。ヘッジファンドなどの投機筋が短期的な影響を及ぼすのに対し、実需取引は中長期的な相場の方向性を決定することがイメージされます。

現状、日本の貿易赤字額が巨額というわけではないため、大幅な円安局面は想定しにくいのですが、リスクはやはり円安方向に傾斜していると考えられます。ただし、日本の貿易収支は原油などの資源価格に左右されやすい傾向があるだけに、原油価格がさらに軟化した場合、円高リスクが高まる可能性も十分にあると考えています。

<文:シニア為替ストラテジスト 石月幸雄 写真:ロイター/アフロ>

(大和証券 執筆班)

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