50年以上付き合いのあった隣家も?空き家になる「2つの理由」

MONEYPLUS / 2019年7月24日 18時30分

写真

50年以上付き合いのあった隣家も?空き家になる「2つの理由」

つい、この間まで付き合いのあった隣家がいつの間にか空き家に……。なぜ、空き家になってしまったのでしょうか。相続の専門家によると、空き家になるには2つの理由があるといいます。


50年以上の付き合いがあった隣家も、今では空き家に

「隣の空き家には、本当に迷惑しているんですよ……」

そう話すのは都内に実家がある水足克己さん(58歳・仮名)。水足さんの父親は20年前に亡くなり、80歳の母親が一人で実家に住んでいます。水足さんは月に1回、母親の様子を見るために足を運んでいるといいます。

水足さんの実家の隣には、空き家のまま放置されている家があります。お隣さんは水足家とは50年以上のお付き合いがあったものの、持ち主が亡くなり、次に相続する人が決まっていないとのこと。遺産分割協議が難航しているようです。

きちんと手入れされていた庭は雑草で荒れ果て、数十年前は立派だった隣家の松の木も今では水足さんの実家に寄りかかっています。

このお隣さんのようになっては大変だと、心配になった水足さんが今回相談に来られました。

空き家になる「2つの理由」とは?

空き家は近年、社会問題となっています。なぜ、空き家になってしまうのでしょうか。そこには、大きく2つの理由があります。

1つ目は、上記のように相続発生時における遺産分割協議(遺産を分ける話し合い)がまとまらない点です。戸建ての空き家を所有する人の52%が「相続」により取得したと回答しています(平成26年国交省「空家実態調査」より)。

「うちはそんなに財産がないから大丈夫」という話をよく聞きますが、実は財産が少ないほど話し合いがまとまらないことが多いのです。実際、水足さんのお隣さんも、財産はこの家と預金が少々といったところでした。聞くところによると、お隣さんの相続人は息子(50歳)と娘(48歳)の2人。息子は家を売りたいと言う一方で、娘は売りたくないと言い、意見がまったく合わず平行線のままだとか。

2つ目は、認知症等による被相続人の判断能力の低下です。近年では核家族化が進み、水足家のように親と子供が別の家で生活しているというのは珍しくありません。その結果、高齢になった親が一人で暮らしていくのが難しくなり、老人ホーム等の施設に入るために実家の売却を検討するケースが増えてきています。

しかし、所有者である親の判断能力が不十分だと実家を売却することが難しくなります。売却をしないまま施設に入ってしまうと、実家は当然、空き家になってしまいます。判断能力が不十分になったときに備えて、スムーズに売却できるように準備しておく必要があるのです。

判断能力があるうちにと、生前に不動産の名義を相続人に変更して贈与を検討される方もいらっしゃいます。ただ、贈与は受け取った方に贈与税がかかり多額の税金を納めることにもなるため、現実的ではないケースが多いのです。所有者からすると、自分の財産を取られると思ってしまうこともあり、話が進まずそのままになってしまう事例もあります。

天国の親に後ろめたい気持ち「どうしてほしかったのだろう」

「今後、お隣さんみたいになったらいやだなぁ」。水足さんには、お隣さんと同じように妹がいます。2人の関係は、今は良好ですが、将来母親の相続の時にお隣さんのように兄妹間の心にしこりができるのではないかと不安だといいます。

遺産分割協議が進まない背景には、所有者の親が遺された実家をどうしてほしいのか、意思表示をしていないという現実があります。先祖代々から引き継いだものなので売却せずに守ってほしいのか、誰も住まなくなったら売却してもかまわないのか、相続人の中の誰に引き継いでほしいと思っているのか。

相続税の支払い等のためにやむなく売却した際に、天国の親に後ろめたい気持ちを持つ人もいらっしゃいます。「どうしてほしかったのだろう……」相続税の申告や名義変更等の手続きの際に、相続人の方が口にされることの一番多い言葉です。

このようなことにならないために、生前に相続人となる人に想いを伝えることが大切です。財産の分け方に関しても同様です。相続手続きをスムーズに行うという点から、遺言書の作成は必須なのです。

元気なうちに空き家対策、増える信託契約

最近、実家の行く末を生前に決めておく信託契約が増えてきています。

実家を所有する親が高齢になり、これから施設に入居する可能性があるものの、できる限り実家に住んでいたいというケースに対応するためです。もし、何も対策をせずに認知症等になったら、前述したように実家の売却等が困難になります。

しかし、元気なうちに「自分の代わりに信頼する息子や娘が実家を管理、運用、処分等をする」という信託契約を結んでおくことで対策を講じることができます。この契約に基づき登記を行えば、認知症等になった場合でも、息子や娘が自宅の管理を行うことや売却等の処分を行うことが可能になります。売却が行われた場合には、その代金は「親の生活・療養看護の費用として使用する」というような定めにすることで、売却代金の使い道を決めておくことも可能になります。

このような対策をすることで、“空き家にしない・させない”という親と子、両方の想いや願いをかなえることが可能になるのです。

相談に来られた水足さんは、「母親と妹と今後のことを話し合ってみます。お隣さんのようにはなりたくないので」と言い、お帰りになりました。

まずは「何もしないとどうなるのか?」を知ること

各家庭によって家族関係も、抱えている問題も違います。ひとり、または家族だけで考えるのではなく、専門家の意見も取り入れてみてはいかがでしょうか。

まずは、家族関係を戸籍から確認して誰が相続人にあたるのか確認しましょう。それと、どのような財産を持っているのか、財産のたな卸しをしてみましょう。それをもとに「何もしないとどうなるのか」を知ることで、自分の気持ちの整理ができ、対策の1歩を踏み出せるのではないでしょうか。

<文:行政書士 細谷洋貴>

(アクセス相続センター)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング