愛する母が壊れていく…50代独身男の介護敗戦記

MONEYPLUS / 2017年10月2日 8時30分

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愛する母が壊れていく…50代独身男の介護敗戦記

日常生活や生き方を通して、お金の価値観を考えるきっかけになるような話題の本をMONEY PLUS編集部がピックアップ。書籍の担当編集者に読みどころやこだわり、制作秘話などを語っていただきます。

今回は、松浦晋也著の『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』をご紹介します。

『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』松浦晋也 著


男性、50代独身。実家に母と同居しながら、この先も続くと信じていた気ままな独身生活。ところが、人生を謳歌していたはずの母親が認知症を発症。息子は戸惑い、狼狽しながら1人で母の介護に向き合う。認知症・母の介護を赤裸々に、かつ哀愁をこめて描いたノンフィクションストーリー。
四六判/272ページ/日経BP社/2017年8月3日

担当編集者のコメント

きっかけは「預金通帳」――。

著者の松浦晋也さんは、航空宇宙関係を中心に活躍するジャーナリスト。2014年当時53歳の独身で、当時80歳になるお母さんと一緒に住んでいました。

お互いにプライベートには介入しない、大人の二人暮らしをしていましたが、ある日、お母さんの異常に気がつきます。突然「通帳がなくなった」と言い出したのです。探すといつものところに置いてある。なのに数日経つと、また「見つからない」と言い出す。

認知症の初期症状だったのですが、松浦さんは「単なる老化だろう」と見過ごしました。認めれば、正対せねばならない。穏やかな日常に、面倒な事態が持ち上がるのはごめんだ……。

「ここから私の『介護敗戦』が始まった」と、松浦さんは書いています。振り返って思えば、調味料の場所を忘れる、食事がいいかげんになる、などなど、いくつもの予兆があったのに。

実は、編集を担当した私の母は故郷で独り暮らしをしており、年齢もちょうど当時の松浦さんのお母さんと同じで、原稿を読んでいるうちにだんだん恐ろしくなりました。
 
この本を校了した後、私は慌てて帰省して、原稿の記述に従って家の中を見ると「ああ、台所が荒れ気味だ。あっ、通販の箱があちこちに。しかも定期契約? 松浦さんの本の通りだ」と驚きました。

近しい家族間だからこそ、無意識に目を逸らしてしまう、親の老いや衰え、もしかしたら病気の前兆といったポイントを、この本は的確に教えてくれます。

松浦さんとお母さんとの介護生活は、認知症の進行に伴って、凄絶な展開を辿ります。科学技術ジャーナリストの目できちんと記録された事実と、愛する母が壊れていくことへの悲しみ。松浦さんの筆には、ときにペーソスが入り交じり、辛い事実が、読みやすく、理解しやすく頭に入ります。

多くの人にとって避けられない親の介護、その辛さの多くは、「何が起こるのかを知らないまま、突然、そのまっただ中に投げ込まれる」ことから来ます。この本を読むことは、松浦さんが味わった経験を、いわば人生の「預金」として積んでおくようなものかもしれません。役に立つことは保証します。

(日経BP社 担当編集:日経ビジネス編集部 山中浩之)

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