今後の景気はどうなる?政府・日銀の「景気調査ザッピング」のすすめ

MONEYPLUS / 2020年10月29日 18時0分

写真

今後の景気はどうなる?政府・日銀の「景気調査ザッピング」のすすめ

新型コロナ感染症は、私たちの生活を大きく変えています。足元では、緊急事態宣言、外出自粛、在宅勤務などの日常行動を制限するような動きは若干縮小し、GoToトラベルをはじめとする景気刺激策が取られるなど、一時よりは普通のくらしが戻ってきているように思われますが、実際に私たちの生活はどうなっているのでしょうか。そして、先行きはどうなっていくのでしょうか。

そうした景気の状況を詳しくみるためには、政府や日銀の景気調査をみることが近道になりますが、一つだけでなく複数の調査を比べてみる「景気調査ザッピング」によって、いろいろなことがより深く、より鮮明にみえてきます。


政府・日銀の主な景気調査

注目すべき政府・日銀の景気調査は主に2つあります。内閣府が毎月公表している「景気ウォッチャー調査」と、日銀が四半期ごとに公表している「生活意識に関するアンケート調査」です。

「景気ウォッチャー調査」は「街角景気」などとも呼ばれ、以前もこのコーナーで書いた通り、最も景気に敏感な職業の人たちを対象としたアンケート調査です。

これに対して日銀の「生活意識に関するアンケート調査」は、全国の満20歳以上から無作為に抽出された個人4,000人の景気や暮らし向きなどの生活意識をまとめたもので、より私たちの実感に近い調査となっています。

その「生活意識に関するアンケート調査」の9月の結果が10月22日に公表されました。その内容は、2008年のリーマンショック以来の最低水準を更新するかもしれないということで注目されていましたが、実際はどうなったでしょうか。

今の景気はどうなの?

今回の調査は、8月19日〜9月14日にかけて行われましたが、その結果は「1年前と比較した景況感は悪化」しているというものでした。景況感を表す指数は前回から4.4ポイント悪化し、▲75.6と約11年振りの低水準となりました。ビフォーコロナの2019年12月が▲29.8だったので、9カ月間で▲45.8ポイントの大幅な落ち込みが続いていることがわかります。

一方で、過去最低だったリーマンショック直後の▲88.9(2009年3月)の更新までには至らなかったほか、3か月前の調査と比べて景況感が「悪い」と答えた人の割合が40.4%から37.2%へと減少するなど、明るい兆しもみえてきました。

景況判断の根拠をみると、「自分や家族の収入の状況から」が引き続き最も高いものの、足元では「マスコミ報道を通じて」や「商店街、繁華街などの混み具合をみて」が増加しています。この結果から、緊急事態宣言が解除され、Go To トラベルなどの政策の効果もあって観光地や商店街の人出が回復し、それを報じたニュースなどから、景況感が最悪期を脱しつつあることを感じている様子がうかがわれます。

また、収入に関する項目をみると、1年前と比べて収入が「減った」という回答が約4割となっているものの、「増えた」という回答が前回調査から若干増加し、それらを合計した指数は9か月ぶりに改善しました。

一方で、支出をみると、1年前と比べて支出が「減った」という回答が大幅に増加し、支出を減らす動きが続いていることがわかります。特に4割以上の人たちが外食と旅行について、1年前と比べて支出を減らしたと回答しています。また遊園地や映画館などを含む教養娯楽サービスへの支出を減らした人の割合も大幅に増加しました。

特に、この半年間の支出については、「外出回数が減ったため、1か月あたりの支出(趣味・娯楽・交際費等)が減った」と答えた人が過半数の53.5%となるなど、日常生活の支出において新型コロナウイルス感染症による外出自粛の影響が非常に大きいことがわかります。

これに対して、食料品や家電、日用品などの支出を増加させたと回答した人の割合が増えており、全体としては、外出を減らし、在宅勤務などの環境を整え、巣ごもり消費を続けている姿も浮かび上がってきます。

先行きの景気はどうなるの?

それでは先行きの景気はどうなるのでしょうか。

1年後の景況感を現在と比べた指数は、3か月前の調査よりも若干改善しましたが、詳しくみると、「良くなる」と答えた人も「悪くなる」と答えた人も減少し、「変わらない」と答えた人が大幅に増加するなど、現在「悪い」と感じている景気の状況が今後も長く続くことを予想する人が増えていることがわかります。

特に、半年前に比べて約9割が「減った」と回答している「娯楽・レジャーの外出」については、このうち3分の1が今後さらに「減らす」と答えていて、「変えない」という回答と合計すると過半数の人たちがビフォーコロナの外出の程度まで戻すとは考えていないことがわかります。

こうした結果をみると、新型コロナ感染症はこれまで、私たちの生活様式を大きく変えていますが、先行きこの「新しい生活様式」が元に戻るのではなく定着していく可能性が高いことを示しています。

景気調査ザッピングでもっと深くわかること

この日銀の「生活意識に関するアンケート調査」を、内閣府の「景気ウォッチャー調査」と比べて「景気調査ザッピング」をしてみると、さらに多くのことがわかります。

「景気ウォッチャー調査」の9月の調査結果をみると、8月調査から5.4ポイント改善した49.3ポイントとなり、「良くなっている」と答えた人と「悪くなっている」と答えた人が殆ど同じ水準まで改善していることがわかります。

これは、リーマンショックを超える過去最低の7.9ポイントを記録した今年4月の調査から5か月連続の改善です。特に足元で大幅に改善しているのが「飲食関連」で働いている人たちで、改善の理由として「来客数の動き」をあげる人が増えています。

「景気ウォッチャー調査」では地域別の指数も公表されており、これをみると最も改善幅が大きかったのが沖縄で、最も改善幅が小さかったのが南関東となっています。やはり、新型コロナ感染症の新規発症が続いている首都圏の改善が遅れている一方、Go To トラベルなどで観光客が回復しつつある沖縄で、景気の下げ止まりの傾向が強いことがわかります。

全体としてみると、景気の最前線の人たちを対象とした内閣府の「景気ウォッチャー調査」では、4月に過去最高の落ち込みを記録したものの、観光客や来店客の回復を背景に急速に改善している一方で、一般の人たちを対象とした日銀の「生活意識に関するアンケート調査」では、改善の実感に乏しく、支出の減少などの生活様式の変化が先行きも続いていく可能性が高いことがわかります。

このように、複数の景気調査を比べる「景気調査ザッピング」をしてみると、足元の景気の状況がより詳しく、より深く理解でき、先行きの生活様式の変化や仕事の需要予測にも応用できるのではないでしょうか。

(神田潤一)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング