資産100億の投資家が指南、不動産投資は「表面利回り」より「スプレッド」

MONEYPLUS / 2020年10月29日 19時0分

写真

資産100億の投資家が指南、不動産投資は「表面利回り」より「スプレッド」

投資用物件を選ぶ人の多くが、利回り、場所、築年数などに目を向けます。しかし、資産100億円の不動産を持つ玉川陽介さんによれば、利益の源泉は「スプレッド」です。


会社経営、株式、債券投資を経て不動産の世界へ

――不動産投資を始める前は会社を経営していたそうですね。

はい。大学生の時に受託情報処理の会社を起業しました。データを統計的に分析して行政機関の発行する白書を作ったり、企業内のデータ処理をする会社を経営していました。当初は下宿アパートを自宅兼事務所にした個人事業でしたが、社員が増え、事務所も構え、入札資格を取得するなど順調に会社は大きくなっていきました。

――学生で、しかも個人の会社で行政機関などの仕事が受けられるのですね。

当時はパソコンを使える人が少なく、のどかな時代背景もあり個人にも依頼しやすかったのだと思います。SEOという言葉もない時代でしたのでウェブでの集客はパソコンが得意な学生の独壇場でした。数百万円規模の案件など、学生が扱うには大きな額の仕事も数多く舞い込みます。仕事の受注が途切れることはありませんでした。

――その後、会社は売却して投資の世界へ踏み出すわけですね。

はい。売却して手元に3億円くらい残ったので、投資信託、銀行株、REITなどを買いました。その頃は投資の知識がなく、景気が良かったので徐々に増えていったのですが、リーマンショックで半分以下に減ります。そのときはさすがに焦りました。

その後、これではまずいと思って勉強しつつ、上がるか下がるか分からない株式投資はあきらめ、安定してインカムゲインが得られる社債などに持ち替えて損失を取り戻しました。

その後、世界的な低金利時代に突入し社債に面白みがなくなったため不動産投資を始めることになったのです。

海外を見て日本の不動産は安いと実感

――不動産に興味を持ったのはどうしてですか。

リーマンショック後は投資環境は悪く、新しく会社を立ち上げる地合でもありませんでした。いまは仕事よりも学習に時間を使うべきと思い、渡米して不動産や銀行を巡りました。NYなどを見てまわると、マンハッタンの小さな物件がこんなに高いのかと感じるとともに、日本の不動産は安いとわかったことが不動産に興味を持つきっかけの1つになりました。

海外を見るのは今も大事だと思っています。

日本はデフレが長かったため、今年買った物件が来年値上がりしているのはめずらしいことです。一方、アジアの新興国などはインフレ率が高いため、モノも家賃も物件価格も上がります。預金に金利も付きます。日本だけを見ているとわからないことは結構あるものなのです。

――日本に戻り、どんな物件を買ったのですか?

不動産投資をやろうと決めて買ったのは、2012年に買った新宿区にある一棟もので、これが実質的には最初の物件です。当時は不動産の注目度が低く、東京五輪の開催も決まっていません。書店を見ても不動産投資の本が少ない時代でした。

――リーマンショックからしばらくの間は物件価格が低迷していました。時期的に良いタイミングでしたね。

そうですね。物件価格が上がっている現状でも買い進められているのは、当時に安く買えた物件との加重平均がとれていることが一因です。割安に買う術はありませんが、結果としてみれば、アベノミクスでの値上がり前に買えたことは大きいといえます。値上がりした不動産を担保に別の物件を買い進めるのは、高いレバレッジでもロスカットされることがないという日本の融資システムをうまく活用した技といえます。これにより、規模を拡大し、賃料と借入金利のスプレッドをとり続けます。

ローン返済で純資産が増えていくことが重要

――スプレッドは、物件が生み出す純利回りと借入金に対する金利支払いの差のことですね。

そうです。不動産投資では賃料収入が定期的な収入になりますが、不動産投資で得られる正味利益は、賃料収入のほかに、ローン返済によって増加する土地の持ち分も含みます。ローンを組んで買った物件は、コツコツ返済していくことによって自分の持ち分が増えます。これはバランスシート上は純資産になり、売却時に現金化できる「含み益」に相当します。仮に賃料収入が安定しているならば、金利支払いが低いほど正味利益が増えますので、日本のように低金利で資金調達をして物件購入できる環境はスプレッドを獲得しやすいのです。

――物件価格や賃料収入だけで見てはいけないということですね。

はい。不動産投資を検討する人は、賃料キャッシュフローなどを見る人がほとんどです。しかし、注目してほしいのはそれだけではありません。賃料と借入金利のスプレッドです。スプレッドが大きければ、割安価格で買うことはあまり重要ではなくなりますし、賃料キャッシュフローがマイナスになる時があっても純資産は増え続けます。

――直近のトピックスとして、2012年から買い続けてきた物件の資産総額(時価)が100億円となりました。これもスプレッドを見る投資戦略によるものですか?

物件1つ1つから上がる利益は小さいため、まとまった利益にするためには小さなスプレッドを重ねていく必要があります。わかりやすく言えば、割安物件を少量買うよりも、普通の物件をたくさん買うほうが有利ということです。これは、高い入居率を維持できている限りはロスカットされない個人向け融資システムの構造的な特権ともいえます。これを活用しない手はありません。

(伊達直太)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング