日銀観測報道に飛び交う思惑、円安トレンドは終了か

MONEYPLUS / 2018年7月23日 20時0分

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日銀観測報道に飛び交う思惑、円安トレンドは終了か

内外情勢に翻弄されるかたちで、ドル円相場が揺れています。

7月に入り、米中の通商問題を巡る摩擦が激しさを増しています。一方国内でも、日銀が現状の政策を柔軟化し金融緩和策の持続可能性を高める方策の検討に入った、という一部報道がなされました。

米中貿易摩擦問題に日銀の金融政策、ドル円相場の今後の展開はどうなるのでしょうか?

米中貿易摩擦問題ではセオリーと逆行

7月6日、米国は500億ドルの対中関税リストのうち、第一弾として340億ドル分の中国製品に対する関税(25%)を発動しました。すると中国も報復として同額の米国製品に対する関税引き上げを発動。これで“米中貿易バトル”の第1幕が終了したと思いきや、10日に米国が2,000億ドルの追加関税対象品目リストを公表したことで、すぐさま第2幕がスタートしています。

一般的に、為替市場では『貿易摩擦=円高』という暗黙の了解のようなものがあったはずですが、ドル円相場は7月中旬にかけて円の安値を試す動きとなりました。ドルが総じて堅調で、その流れに円も引っ張られたという解釈は可能でしょう。しかし、円はユーロなどドル以外の通貨に対しても売られているだけに、それだけで全てを説明するのは困難です。

では、米中貿易摩擦激化という環境下での円安進行という、言わばセオリーと逆行する動きの原動力は何でしょうか。おそらく最も説得力がある仮説は本邦勢による実需の資金フローです。貿易戦争による円高進行を見込み、ドルを買い遅れている輸入企業の存在に加え、海外M&Aや対外証券投資に絡む円売り需要が根強かったのではないかと推測されます。

米政府は8月下旬に公聴会を終え、9月中にも中国に対する2,000億ドル分の追加関税発動の是非を判断することを目論んでいるようです。対象リストには6,000を超える極めて幅広い品目が含まれるため、パブリックコメントでは多数の反対意見が予想されます。品目の確定にかなりの時間を要する可能性は否定できませんので、少なくとも9月までは米中貿易摩擦が“休戦状態”となりそうです。

トランプ米大統領は5,000億ドル規模の中国製品に対する追加関税賦課にも言及していますが、現実問題として実施までには相当な時間がかかると見られます。もちろん、目先、トランプ大統領は中国等への“口撃”を止めないでしょうが、次第に市場の感度が鈍くなることが想定されます。

日銀の金融政策の“揺らぎ”は一過性か

さて、ドル円相場は7月中旬に今年1月以来となる113円台を示現しましたが、その後、失速しました。トランプ大統領が、利上げを続ける米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に不快感を示したほか、中国や欧州連合(EU)が為替操作をしていると批判したことがドル高修正を誘ったと言えます。また、日銀が現状の政策を柔軟化することで金融緩和策の持続可能性を高める方策の検討に入ったという一部報道が円買い材料になっています。

振り返ると、年初からの円高ドル安を牽引したのは日銀の早期金融政策正常化観測でした。そこに日本の政治リスク、具体的には内閣支持率急落による安倍晋三首相の退陣危機が加わり、リスクオフの円買いが勢いづいたと言えます。日本の政治リスクはともかく、日銀の金融政策に対する不透明感の再度の台頭が円高を牽引する可能性は否定できません。

日銀がいわゆる“異次元緩和政策”を永遠に続けることは不可能です。政策の微調整を図りながら、出来るだけ持続可能性を高める必要があるのは当然ですが、問題はそれを金融政策の正常化と受け取られるリスクがあることです。結果、急激な円高や株安を招いてしまってはインフレ目標の達成が遠退くだけに、本末転倒のそしりは免れません。

おそらく、日銀は現時点で政策の微調整に動くことの危険性を理解しているはずであり、あくまでも将来的な課題ということを強調すると見られます。結局、日銀は当面、長期金利の行き過ぎた上昇を容認するとは思えません。

商品市況は円安継続を示唆

一方、米国に目を向けると、利上げ局面の中で長期金利上昇の鈍さが続いています。これまで市場では、長短金利差の縮小は景気悪化の前兆と看做されてきただけに、長期金利の安定推移が続いていることは不気味ではあります。もっとも、日米長期金利差は節目の3%を下回ったとはいえ、絶対水準は高く、円高リスクが高まっているとまでは言えないでしょう(下図)。

最後に、ドル円相場の値動きを予想するうえで非常に便利な指標があるのをご存知でしょうか。ずばり、代表的な国際商品価格指数であるCRB指数です。

日本は世界的な資源あるいはエネルギー輸入国で、資源価格が上昇すれば、時間差を置いて貿易収支が悪化しやすい傾向があります。つまり、国際商品市況が日本の貿易収支、ひいてはドル円相場の先行指標となっているのです(下図)。

上図のように、ドル円相場は6ヵ月遅れでCRB指数の軌道を辿っているのが分かります。これまでCRB指数からドル円相場の値動きを高精度で予想できましたが、相応の理由があり、単なる偶然では片づけられないでしょう。なお、CRB指数は目先一段の円安を示唆しています。

(文:大和証券投資情報部 シニア為替ストラテジスト 石月幸雄)

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