短命家系なので、年金を繰上げしてもいいですか?
MONEYPLUS / 2024年5月29日 11時30分
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短命家系なので、年金を繰上げしてもいいですか?
「先祖代々早死に家系だから、年金を早めにもらった方がいいのではないか」と聞かれることがよくあります。短命と家系=遺伝子の関係について、ここで触れることはしませんが、年金を繰り上げる際に考えておきたいポイントについてお伝えしたいと思います。
年金の繰上げとは?デメリットを知っておこう
老後に受け取る年金、老齢基礎年金ならびに老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ることができます。ただし、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に「繰り上げ」をして受け取ることができるのです。繰り上げは1ヶ月単位で行うことができますが、早くもらう分1ヶ月につき0.4%(年4.8%)減額になります。
例えば、60歳0ヶ月へ繰り上げると年額78万円の老齢基礎年金は24%減の59.28万円となります。ただし、繰り上げには減額以外のデメリットもあります。以下に主なデメリットを挙げて解説をしていきます。
•繰上げの取り下げはできない
繰り上げ請求後のキャンセルはできません。
•一生涯、減額された年金が続く
言わずもがなではありますが、減額は一生涯続きます。
•老齢基礎年金と老齢厚生年金をセットで繰上げしなければならない
65歳以降の繰り下げは、それぞれの年金ごとで行えますが、繰り下げはセットでしか行えません。
•寡婦年金を受け取れない
寡婦年金は、自営業者などの妻が要件を満たすと受け取れる年金です。具体的には、国民年金第1号被保険者である夫が国民年金保険料を10年以上納め、かつ、夫婦の婚姻期間が10年以上あり、夫が年金を受け取らずに死亡した場合、妻が60歳から65歳になるまで受け取れます。例えば、妻が繰り上げ受給をすると、寡婦年金は終了し、受け取れなくなってしまいます。
•国民年金の任意加入ができない
60歳時点で国民年金保険料の納付済み期間が40年に満たない場合は、60歳以降に任意加入して老齢基礎年金の満額受給に近づけることができます。しかし、繰り上げして受け取り始めてしまうと、任意加入はできなくなります。
•繰り上げ後に障害状態になっても、原則、障害年金を受け取れない
一旦繰上げ請求をすると、それ以降に病気や事故で障害状態となっても障害年金を受け取ることはできません。一般的には障害年金>繰上げした年金といった金額になります。
•遺族年金や障害年金を受け取れる場合、65歳になるまでは併給できない
ルール上、繰上げ請求した老齢年金は他の年金、いずれかの年金を選択することになります。
•失業保険を受給する場合、老齢厚生年金が支給停止となることがある
老齢基礎年金はそのまま受給できますが、老齢厚生年金の一部または全部の年金額が支給停止となることがあり、結果としてさらに年金が減額される可能性があります。
いかがでしょうか? 年金を繰り上げるとこれだけのデメリットについて考えておく必要があります。メリットは、早く受け取れることに尽きますが、早く受け取ったとしてもさらに減らされてしまう可能性もあるわけです。特に他の年金への影響を考慮すると単純に繰り上げしても大丈夫と明言するのは難しいところです。
60歳以降も働き続ける場合はさらなる注意点も
また、60歳以降、働きながら年金繰上げを検討している人にお伝えしておきたいことがあります。雇用継続制度で年収が下がるので、給与減額分を年金で補いダブルインカムで…と考えている人もいるのではないでしょうか。おもに2つの注意点をあげたいと思います。
•高年齢雇用継続給付金を受給する場合、年金額が減額される
60歳以降の雇用継続で給与が下がった場合、低下率に応じて雇用保険から支給されるのが高年齢雇用継続給付金です。支給される場合、老齢厚生年金の一部または全部の年金額が支給停止となります。なお、老齢基礎年金は支給停止とはなりません。
•在職老齢年金制度で、老齢厚生年金が減額または支給停止になる
在職老齢年金は、60歳以降に厚生年金に加入しながら働いていて、かつ、老齢厚生年金を受け取る場合、1ヶ月あたりの給与と老齢厚生年金の合計基準額(2024年度は50万円)を超えると、超えた分の半分が支給されなくなります。老齢基礎年金は計算対象外なので、該当するケースは少ないかもしれませんが念のため、押さえておきたいポイントです。
なお、上記2つに該当すると、高年齢雇用継続給付金と在職老齢年金を両方受け取ることになりますが、その際は老齢厚生年金の一部が支給停止となります。つまり、60歳以降も働き続けて給与が大きく減少すると、雇用保険から給付を受けられるものの年金額の一部はカットされてしまうのです。
以上、確認することが多くて、実際に自分の場合はどうしたら良いのか途方に暮れる方も多いのではないでしょうか。そもそも、短命家系=繰上げした方がいいのか?が出発点ではありましたが、事はそう単純ではないこともある程度はご理解いただけたことと思います。
その上で言うならば、自分の年金見込み額、60歳以降の働き方や年収の見込みをある程度把握した上でシミュレーションをしてみるとイメージしやすいことでしょう。
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(三原由紀)
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