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信託報酬引き下げ競争はメリットだけではない? その行き着く先とは

MONEYPLUS / 2024年6月5日 7時30分

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信託報酬引き下げ競争はメリットだけではない? その行き着く先とは

インデックスファンドを中心にした信託報酬の引き下げ競争がもたらすものは、何でしょうか。ローコストは確かに受益者にとって正義ですが、一方、運用で収益を稼いでいる投資信託会社にとっては、売上減に直結する問題でもあります。


信託報酬のしくみ

恐らく、マネープラス読者には釈迦に説法かも知れませんが、ひょっとしたらNISAの非課税枠が拡大したことを機に、初めて投資信託を買おうという人もいるかも知れませんので、改めて投資信託会社がどこで収益を稼いでいるのかについて、説明したいと思います。

投資信託を購入した人は、大きく2つのコストを負担しています。購入時手数料と信託報酬です。

このうち購入時手数料は、証券会社や銀行など販売窓口となる金融機関に対して支払うコストなので、投資信託会社は1円もここから収入を得ることはできません。投資信託会社が得る収益源は、信託報酬のみです。

購入時手数料は、投資信託を購入した金額に対して一定率が課せられます。たとえば購入時手数料が2%で、購入金額が100万円だとしたら、2万円が差し引かれて、これが販売金融機関の収益になります。

次に信託報酬ですが、これはファンドの純資産残高に対して一定率が日々、差し引かれていきます。

たとえば純資産残高が100億円のファンドがあり、年率1%の信託報酬で、純資産残高が1年間不変だったとすると、このファンドの信託報酬は年間で1億円です。もちろん現実には純資産残高が日々、増減するので一概にはいえませんが、仮にそうだとします。

信託報酬は全額、投資信託会社の収益になりません。投資信託会社と、ファンドの資産を管理する信託銀行、そして販売金融機関の3者で分け合うことになります。したがって、仮に全体の信託報酬率が年1%だとしても、実際に投資信託会社に入るのは0.4%程度だったりします。純資産が1年を通じて100億円だとしても、投資信託会社に入る収益は4000万円だということです。

信託報酬の引き下げ競争がもたらすこと

近年、インデックスファンドを中心にして信託報酬率の引き下げ競争が激化しています。

確かに、受益者側から見れば、運用コストは安いに越したことはありません。が、投資信託会社も営利企業ですから、信託報酬率を下げれば、それだけ売上は減ります。

たとえば「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の信託報酬率は年0.05775%(税込み)ですが、投資信託会社に入るのは、このうち0.0175%(税抜き)です。現在、同ファンドは3兆4398億円の純資産を持っているので、それでも年間6億円の信託報酬が入ってきますが、3兆円もの残高があっても、売上に計上できるのはたったの6億円なのです。

同ファンドはオール・カントリーに連動するインデックスファンドとして、唯一の勝ち組といっても良いのですが、他の同じインデックスに連動するタイプのファンドには、純資産残高が1400億円程度で、投資信託会社の信託報酬率が年0.0187%というものもあります。これだと年間の収益は2620万円にしかなりません。

もちろん、他のファンドで高い信託報酬率を設定して、会社全体として売上が立つならそれでも良いという解釈かも知れませんが、1400億円もの資金を集めたファンドで、投資信託会社の売上が2620万円では、個別ファンドベースで考えれば、収益は赤字でしょう。

恐らく、このインデックスファンドブームの行き着くところは、ウィナー・テイク・オールになるはずです。つまり勝者総取りです。正直、同じ指数に連動するインデックスファンドが、多数の投資信託会社で運用される必要はありませんから、資金の集まらないファンドは自然淘汰され、特定社のインデックスファンドに集約されていくと考えられます。

運用の継続性を重視

このように、勝者総取りの状況になり、資金があまり集まらないのにも関わらず、信託報酬の引き下げ競争に巻き込まれたインデックスファンドは、繰上償還という形で自然淘汰されるでしょう。

そうなった時、結局、損をするのは受益者です。繰上償還されれば、これまで投資してきた資金が全額現金化されてしまいますから、コツコツと積立投資してきた受益者からすれば、それまでの努力が無駄になってしまいます。

特に、NISAのつみたて投資枠で投資している人たちは、運用の継続性という点をシビアに考える必要があります。ようやくの想いで1000万円くらいまで積み立ててきたのに、いきなり繰上償還されてしまったら、また毎年120万円ずつ積み立てていかなければなりません。今まで資産を積み立てるのに要した時間が、無駄になってしまうだけでなく、1800万円を全額、非課税運用できる時間も短くなってしまいます。

現在、つみたて投資枠で購入できるファンドは、多くがインデックスファンドに偏っていますが、それを選ぶに際しては、運用の継続性という観点を重視することが肝心なのです。

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(鈴木雅光)

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