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「富の最大化」ではなく「幸福の最大化」を目指す『60歳からの新・投資術』

MONEYPLUS / 2024年6月5日 11時30分

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「富の最大化」ではなく「幸福の最大化」を目指す『60歳からの新・投資術』

お金は貯めることが目的ではなく、将来の自分が使うために貯めるものだというと、一見当たり前のことに思えるでしょう。しかし、この当たり前ができている人は、意外と少ないようです。

お金はないよりはあったほうがいいことは間違いありません。人生が終わりに近づいてきた時にカツカツの生活を送らざるをえない状況では、後悔しながら死んでいくことになるかもしれません。もしもの時に備えて、最低限のお金は貯めておく必要はあります。

しかし、お金を必要以上に貯めこむ必要はありません。「富の最大化」ではなく、「幸福の最大化」を目指す、資産運用の出口戦略を一緒に考えていきます。


資産をできるだけ使い切って最期を迎えたほうが、人生の幸福感は高い

全世界でベストセラーになっている『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著)は、タイトルどおり「資産ゼロで死ぬ」をテーマにした本であり、資産形成期に築いた資産を上手に使い切っていくことの重要性を説いています。

「資産を残して亡くなったら、その資産を使うことで得られるはずだった経験を得られなかったことになる。人生で一番大切なのは、思い出を作ることだ」と同書は語ります。

仮にあなたが1000万円の資産を残して亡くなったとしたら、1000万円分の経験ができず、その分の思い出が作れなかったということです。この1000万円を仮に時給1500円で週40時間働いて稼ぐとすれば、ざっと3年4か月も働かなければなりません。しかし、そうして働いて貯めた1000万円を使わずに死んでしまったら、タダ働きしたと同じことだとも言っています。

そう指摘されれば、資産を計画的に取り崩し、「資産ゼロで死ぬ」を実践したほうがよいと多くの人が思うのではないでしょうか。早いうちから自分のためにお金を使ってさまざまな経験をし、たくさんの思い出を残したほうが、豊かな人生を送れるでしょう。

よく言われることですが、あの世にお金は持ってはいけません。お金を貯めこんだまま最期を迎えるよりも、資産をできるだけ使い切って最期を迎えたほうが、人生の幸福感は高いのです。豊かな人生を送るためには、「資産ゼロで死ぬ」意識でお金を使っていくことが大事であると念頭に置きながら、この後の内容を読んでいただければと思います。

でも、生きているうちに資産がゼロに近づくのは不安

「資産ゼロで死ぬ」を実践しようと思っても、実際のところ資産を取り崩していって、最期にゼロにするのはなかなか難しいものがあります。なぜなら、寿命をいつ迎えるかは誰にもわからないからです。

寿命を予測して、そこに向けてお金を取り崩していったら、「思ったより長生きしてしまった」ということもあるかもしれません。反対に、資産を取り崩し始めて早々に病に倒れ、そのまま亡くなってしまうこともあるかもしれません。

「資産ゼロで死ぬ」を実践するのに躊躇してしまう一番の要因は、資産が少しずつゼロに近づいていくのを見るのが不安であることです。

たとえば、70歳時点で貯蓄が2000万円あるとして、月10万円、年120万円ずつ取り崩していくとします。貯蓄が潤沢なはじめのうちはまだいいでしょう。しかし、常に年120万円ずつ定額で貯蓄を取り崩すと、80歳を迎えるころには貯蓄の残りが800万円と、当初の半分以下になってしまいます。それでも年120万円ずつ取り崩しを続けると、86歳8か月の時点で貯蓄が底をついてしまいます。

実際には、貯蓄が底をつく前に取り崩しのペースを緩めるなど、何らかの対策を講じるかもしれませんが、「貯蓄がなくなってしまうかも」と不安に駆られるのも無理はありません。

寿命があらかじめわかっていれば、計画的に資産をゼロにすることができますが、そうでない以上、「資産ゼロで死ぬ」を達成するのはなかなか難しいのです。

「終わりよければすべてよし」という言葉があるとおり、人生の最後が幸せであれば「良い人生だった」と思える可能性が高いでしょう。「資産ゼロで死ぬ」を目指していたら、途中でお金が尽きて人生の最後は貧しく不幸せであれば、「悔いが残る人生だった」となるかもしれません。

「ほぼDIE WITH ZERO」を目指す、キャッシュフロー資産を持つというアイデア

そこで、将来の不確実性を考慮しつつ「ほぼDIE WITH ZERO」を目指すために、資産の取り崩し期(70歳前後)に入ったら、
・預貯金 300万~500万円
・キャッシュフローを生む資産 300万~500万円
を確保したうえで、残りの資産を取り崩すことを考えます。

預貯金の300万~500万円は、病気や介護に備えるお金として、取り崩さずに生涯保有を続けます。もしも病気や介護が必要になっても、このお金があれば必要な治療やサービスの利用に困ることはないでしょう。仮に医療費や介護費がかかることなく亡くなったとしても、残った300万~500万円は葬儀代や墓代、あるいは相続などに回せます。

利息、配当金、分配金など定期的に受け取れる資産を「キャッシュフローを生む資産」と呼んでいます。資産によって、目安となる金利・配当利回り・分配金利回りとリスクが異なります。

著書「60歳からの新・投資術」(青春出版)より

キャッシュフローを生む資産は、基本的には一生涯保有を続けます。

そうすることで、定期的に収入を得ることができます。まとまったお金がどうしても必要になった場合には、キャッシュフローを生む資産を売却して使うというオプションもあります。これらのお金を確保したうえで、残りの資産を取り崩していきます。

資産寿命を延ばしつつ、100歳でゼロを目指す出口戦略

資産が早々にゼロになる「資産寿命」を迎えてしまうのは困りものです。それを防ぐために、「運用しながら取り崩す」という観点を取り入れましょう。資産は、ただ取り崩すだけでは早々になくなってしまいます。

しかし、資産を運用しながら少しずつ取り崩すことで、資産寿命を延ばすことができますし、売るタイミングも分散できるので、資産価値が下がったタイミングで一度に売ってしまうことも防げます。

資産を取り崩しながら一定の利回りで運用した場合に、毎年いくら受け取れるかを計算する「資本回収係数」という数字があります。

<資本回収係数>

著書「60歳からの新・投資術」(青春出版)より

なお、以降の計算は運用益に税金がかからない「新NISA」で行った場合とします。

表の縦の列には資産の取り崩し年数、横の行には運用利回りをとっています。自分の資産額に、この両者の交差するところの係数をかけると、毎年取り崩せる金額が計算できます。
たとえば、70歳時点でたまった資産2000万円のうち、300万円を預貯金、500万円をキャッシュフローを生む資産に替えたとします。そうして残った1200万円の資産を年利4%で運用しながら、30年かけて取り崩すとします。

この時、30年にわたって毎年受け取れる金額は、「1200万円×0.05783=69万3960円」となります。月額に直すと約5.8万円です。年利4%で運用できていれば、仮に70歳から毎月資産を5.8万円ずつ取り崩しても、おおよそ100歳まで資産がもつというわけです。

しかも、この例では100歳時点でも300万円の預貯金と500万円のキャッシュフロー資産を確保しています。もしもの時には預貯金が役立ちますし、500万円のキャッシュフロー資産からは毎月取り崩す5.8万円とは別に定期的な収入が得られます。

仮に年4%のキャッシュフローが得られたとすれば年20万円、毎月1.6万円ほどですから、毎月取り崩す5.8万円と合わせて月7.4万円です。年金に加えて、月7.4万円が100歳まで受け取れたら、老後の収入として心強いですよね。

運用しながらの取り崩しは「定額」と「定率」を組み合わせるのが鍵

前述の取り崩し方法は「定額取り崩し」といいます。毎年4%で運用できる例で計算しましたが、必ずその年利で運用できるわけではありません。

相場が下がることも当然あります。その下がったタイミングでも定額で取り崩していくと、資産寿命が尽きるのは早くなっていきます。そうした弱点があることにまずは留意しなければなりません。

また、比較的体力や気力が充実している老後の前半によりお金を多く使うという視点も入れたいところです。お金を使いたくても「健康」でないとうまく使い切れないですよね。
人生を充実させる視点を踏まえて、資産をうまく使い切る「取り崩し方法」を考えてみましょう。運用しながら取り崩す方法には、大きく分けて「定額取り崩し」と「定率取り崩し」の2つがあります。

定額取り崩しは、「毎月〇円ずつ」と、資産を毎月一定の金額ずつ取り崩す方法。定額取り崩しは、毎月取り崩す金額が一定なのでわかりやすく、生活費のメドが立てやすいのがメリットです。しかし、資産の減りが早いのがデメリットです。

対する定率取り崩しは「毎月資産の◯%ずつ」と、資産を一定の割合で取り崩すことです。定率取り崩しのメリットは、相場が下がったタイミングでも多く取り崩しすぎない面もあり、資産が長持ちしますが、受け取れる金額が年々減っていきます。また、毎年取り崩せる金額が変わるので、いくらになるかわかりにくい、というデメリットもあります。

定額取り崩しと定率取り崩しのデメリットを補完する方法としておすすめなのが、資産が多いうちは定率取り崩し、少なくなったら定額取り崩しに切り替える「前半定率・後半定額」戦略です。老後前半の元気なうちはお金をたくさん取り崩して使いつつ、老後後半まで資産寿命を延ばして使い切ることができます。

<前半定率・後半定額で取り崩す>

著書「60歳からの新・投資術」(青春出版)より

資産1200万円を取り崩す際、まずは年8%の定率取り崩しを行います。そうして、資産が半分の600万円を切るタイミングで年60万円の定額取り崩しに切り替えます。

運用によって毎年4%増やせたとすると、定率取り崩しによって、16年経過時点まで年96万~52万円程度(月8万~4万3000円程度)を受け取れます。

資産が600万円を切ってきたら、今度は毎年60万円ずつ定額取り崩しを行います。これにより、29年経過時点まで毎年60万円を取り崩して、30年後の資産残額をゼロにすることができます。70歳から取り崩しを始めた場合、30年後というと100歳です。

老後の後半は資産残高が減ってきますが、気にする必要はありません。健康寿命を過ぎたあたりから、誰でも活動範囲が減り、お金も徐々に使わなくなっていくからです。

また、資産がゼロになっても年金は生涯もらえますし、前述のとおりキャッシュフローを生む資産500万円から年4%(年20万円)の配当をもらえれば月約1.6万円の上乗せもあります。収入がゼロになることはありません。「ほぼDIE WITH ZERO」を達成しながら、お金の不安なく過ごすことができるはずです。

金融機関によっては、運用している商品を決まった日に売却して取り崩してくれるサービスもあります。たとえば、楽天証券の「定期売却サービス」では、楽天証券で保有している投資信託を自動的に売却することができます。受取日は毎月1回、1日~28日の間で指定可能。受取方法は毎月1000円以上1円単位で定額取り崩しを行う「金額指定」や、毎月0.1%以上0.1%単位で定率取り崩しを行う「定率指定」を選ぶことができます。

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