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「全世界株式」人気ファンドへの資金集中によって起こるリスクとは?

MONEYPLUS / 2024年6月19日 7時30分

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「全世界株式」人気ファンドへの資金集中によって起こるリスクとは?

前回、インデックスファンドで激化している信託報酬率の引き下げ競争と、運用の継続性について解説しました。それは同時に、投資信託会社の経営の持続性にも影響を及ぼします。

関連記事:信託報酬引き下げ競争はメリットだけではない? その行き着く先とは


小さな投資信託会社は経営の持続性に要注意

前回、インデックスファンドの信託報酬率の引き下げ競争が激化するなかで、恐らく「ウィナー・テイク・オール」、つまり勝者総取りになるだろうという話をしました。

実際、全世界株式インデックスファンドについていえば、信託報酬率が年0.05775%という極めて低廉な水準を実現している「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」に資金が集中する状況になっています。

結果、他社の同一指数に連動することを目指したインデックスファンドには資金が集まりにくくなり、いずれ繰上償還を余儀なくされるかも知れないという話でした。

似たようなことは、実は投資信託会社にも当てはまります。

近年は、個人向け投資信託業務と、年金など機関投資家運用業務を併営している運用会社が、特に大手の場合は多いので、その手の運用会社は運用資金の額も大きく、それだけ経営が安定しやすいともいえるのですが、個人向けの投資信託業務しか行っていない、運用資産規模の小さな投資信託会社の場合、経営の持続性という点を、しっかり見極める必要があります。

廃業となった投資信託会社の例

これは経営破綻ではありませんが、過去において廃業した投資信託会社がありました。「ムーンライトキャピタル株式会社」がそれです。

同社は「ムーンライト・エイドスファンド」と「ムーンライト・エイドスミニ・ファンド」という2本の追加型株式投資信託を設定・運用していました。

前者の設定は2010年2月2日、後者は2010年4月27日に設定されたのですが、2012年2月10日付で、金融庁長官から登録取り消し処分を受けることになったのです。

実は同社が登録取り消し処分を受ける前、金融庁は2度にわたって業務改善命令などを出しています。その理由は、ムーンライトキャピタルの純資産が当時、投資運用業を行うのに必要とされる5000万円の最低基準を満たしていなかったからです。

それに加え、2012年2月10日に金融庁が発表した資料によると、

①税金などが未払いになっていた。
②収益に比べて人件費などの費用が恒常的に過大な状況となっていた。
③運用資産残高が2010年9月末の10.2億円から、2011年9月末には3.9億円まで減少していた。

以上の状況が確認され、投資運用業の継続が困難と判断され、登録取消しの行政処分が行われたのです。そして運用していた2本のファンドは繰上償還となりました。

運用資産の規模が小さいと経営の継続性に疑義が生じる

ある程度の運用資産がないと、投資信託会社は経営が成り立ちません。したがって、投資信託を購入する時には、自分が購入してみようと思っているファンドの運用会社が、どの程度の規模を持っているのかもチェックする必要があります。

2024年4月末時点で、投資信託の運用資産が最も多い投資信託会社は、野村アセットマネジメントの59兆6389億3200万円です。

逆に最も運用資産の規模が小さいのは、アクサインベストメントマネジャーズの5200万円です。アクサの場合、世界的な運用会社であり、日本国内では投資信託以外の運用も行っているので、会社としては十分存続しうると思うのですが、独立系に近い形態の投資信託会社で、専ら個人マネーの運用に特化している場合は、運用資産の規模が小さいと、経営の存続性に疑義が生じてきます。

たとえば運用資産規模が29億1900万円のSUSTENキャピタル・マネジメントの損益計算書を見ると、2023年12月決算の営業収益は1085万7000円。ここから諸々の経費を差し引いた最終損益は、8億5045万6000円の赤字です。

また、4月25日から2本のファンドを設定・運用開始したなかのアセットマネジメントも、もちろんこれから頑張って運用資産を大きく増やしていくのだとは思いますが、運用資産の規模は5月30日時点で35億1300万円です。

「なかの日本成長ファンド」の信託報酬のうち、投資信託会社であるなかのアセットマネジメントが受け取れる料率は年0.582%、「なかの世界成長ファンド」のそれは年0.312%です。両ファンドの平均値が年0.447%ですから、1年経過した時点で運用資産が200億円になったとしても、そこから得られる営業収益は8940万円です。恐らくこの程度の営業収益では、単年度黒字は難しいでしょう。ここは踏ん張りどころです。頑張って欲しいと思います。

投資信託会社の財務諸表をチェックする

投資信託はその仕組み上、たとえ投資信託会社が廃業したとしても、受益者の資産は保全されます。とはいえ、前述したように繰上償還されれば、運用の継続性が断たれてしまいますし、前回も説明したように、NISAで運用していたりすると、今後の運用プランに大きな狂いが生じることになります。

こうした点を考慮すれば、やはり運用資産規模がある程度大きな投資信託会社を選ぶに越したことはない、ということになるのです。

ちなみに、投資信託会社のホームページには、「財務情報」という項目があり、そこを見れば貸借対照表や損益計算書が過去分も遡ってみることができます。損益計算書を見て、赤字が続いているような投資信託会社は避けた方が無難ともいえます。

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(鈴木雅光)

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