住宅ローンの借り換えで返済額400万円減の試算も…シミュレーション利用前に知っておきたい注意点
MONEYPLUS / 2024年6月26日 11時30分
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住宅ローンの借り換えで返済額400万円減の試算も…シミュレーション利用前に知っておきたい注意点
物価上昇が続く一方、住宅ローンの金利は変動型と固定型で差が開いたまま推移しており、多くの方が変動金利型を選択されています。固定金利型と変動金利型の金利を比較すると、月の返済額に数万円の差がでることもあり、固定金利型から変動金利型への借り換えを検討される方もいらっしゃるようです。
住宅ローンの借り換えはオンラインで手軽に試算できますが、シミュレーションを利用する際には知っておきたい注意点があります。Aさんの事例をもとにお話ししていきます。
Aさんは、6年前にマイホームを取得し、現在は住宅ローンの返済を続けています。続く物価上昇により家計収支が厳しくなってきたことで、固定金利型から変動金利型の住宅ローンへの借換えを検討されはじめたそうです。借換えを検討する中で、Aさんはインターネットでできる借換えシミュレーションを利用しました。それによると借換えによる効果は約400万円。老後資金のためにも借換えをした方がいいのかと悩まれ、セカンドオピニオンとして筆者のもとにご相談にいらっしゃいました。
約400万円の借り換え効果が出た理由
Aさんが行ったシミュレーション結果は、約400万円の借り換え効果が見込まれるとのものでした。このような大きな借換え効果となったことには以下の様な理由が考えられました。
1.金利差が大きかったこと
住宅ローンの借換えによる効果は、利息軽減額から借換えに伴い必要な費用を差し引くことで求められます。利息額は原則、借入残高に金利を掛け算して算出されます。Aさんが現在借入れている住宅ローンは全期間固定金利で、適用されている金利は年1.3%でした。一方、シミュレーション時に利用したのは変動金利型のもので年金利0.3%以下です。借換え前後の金利差は約1%ありましたから、利息軽減額が大きくなりました。
2.借換え時期が比較的早期だったこと
Aさんが試算した住宅ローンの残高は約3,400万円でした。借入からまだ6年ということもあり、住宅ローン残高のほとんどが残っている状況でした。返済方法が同じとき、借入残高が大きいほど金利の違いによる利息額の差は大きくなります。
借換えの注意点
シミュレーション結果は根拠をもって示されたものですが、参考にする際は知っておきたい注意点もあります。Aさんには3つの注意点についてお話しました。
1.再度審査があること
借り換えを行う際は、新しく住宅ローンを借入れる時と同様に年齢や返済負担率、勤続年数や年収、担保評価、健康状態などを踏まえて審査が行われます。なお、借り換え後の適用金利は、審査を経て決定されます。
返済負担率については、住宅ローン以外の借入状況も踏まえて算出されます。住宅取得後に自動車ローンなどのローンを新たに利用された方は、住宅ローン以外の借入状況についても確認しておきましょう。夫婦二人で住宅ローンを協力して借り入れている場合は、二人で同じ金融機関で借換えを行い、二人分の審査があります。もし借入後に一方の収入が減ったり退職していたりする場合には、借り換えは厳しくなることも考えられます。
2.諸費用は一律ではないこと
シミュレーションサイトでは一般的な諸費用を踏まえた借換え効果が提示されていますが、あくまで参考値です。
例えば、借換え時には以下のような費用がかかるのが一般的ですが、シミュレーションサイトによって想定されている諸費用の内容は異なります。
※図は著者作成
全額繰上返済手数料は、住宅ローン商品によって異なり、無料の場合もありますが、中には55,000円程度かかるケースもあります。また、諸費用の中には借入金額によって金額が変わるものもあります。例えば、融資事務手数料は住宅ローン商品によって異なり、定率型と定額型のものがありますが、定率型の場合、借入金額の2.2%とするものが一般的です。
抵当権設定登記の際に必要となる登録免許税の金額は、借入金額の0.4%です。金銭消費貸借契約の際に必要となる印紙税はオンラインで契約を行う場合不要となりますが、対面の場合は契約書に明示された借入金額によって0円~数万円など、金額が異なります。これらの費用は、住宅ローン残高の多い早期の借り換え程、かさむでしょう。
3.固定金利型から変動金利型への借り換えの場合、金利上昇リスクを負うこと
Aさんの場合、全期間固定金利型から変動金利型への借換えを検討されていました。変動金利型は低い金利が魅力ですが、金利は一定ではなく、今後の金利の動向によっては、以下のとおり、利息額と総返済額が現状を上回る可能性も考えられます。
※表は著者作成
金利上昇時には返済額が急激に上がらないよう、5年ルールや125%ルールが設けられているのが一般的ですが、返済額が増えないことを約束するものではありませんし、金利に上限はありません。キャンペーンの適用により金利が下がっている場合は、キャンペーンが終了する可能性もあります。
注意点をふまえながらお話しをうかがっていくと、Aさんにとっては、必ずしも借り換えが適切な選択肢ではないかもしれないということがわかってきました。
諸費用を出し借換えをすれば確かに当面の返済額は減らせることが期待されましたが、返済期間がまだ20年以上残っていることに加え、数年後にはお子様の高校受験も控えていらっしゃいます。10年以内に大学受験を控え、教育費のピークを迎えることが想定されましたから、もしシミュレーションどおり借り換えを実行するとすれば、諸費用約100万円に加え、金利上昇時には毎月返済額の増加によって、教育費に使える月々のお金が減ってしまう可能性が考えられました。それは、教育費をできる限り出してあげたいと考えていらっしゃったAさんにとって、望ましい状況ではありませんでした。
変動金利型と比較すれば高いAさんの金利も、直近の固定金利型のものと比べると低い水準で、今後の金利上昇を考えれば必要な保険料とも考えられます。また、返済額軽減を目的とするのであれば、借り換えではなく、同じ金融機関での金利交渉も一案となります。
借り換えシミュレーションを行うと、目先の金額に目が行きがちになりますが、ライフプランにもとづき、今とこれからのご自身にとって望ましいお金の使い方につながることなのか、という点にもぜひ着目していただきたいと思います。
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(内田英子)
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