独立したい35歳独身女性「いくら稼げばいい?」必要な売上のボーダーラインを把握するには
MONEYPLUS / 2024年7月26日 11時30分
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独立したい35歳独身女性「いくら稼げばいい?」必要な売上のボーダーラインを把握するには
コーチングの技術を生かして独立したい会社員のAさん(35歳・女性)。独立後、しばらくは収入が減る可能性もあり、どのように家計管理をすればいいのかがわからず、ファイナンシャルプランナーに相談することにしました。今回は、Aさんの事例をもとに、望むキャリアを実現するために、抑えるべきポイントを解説します。
長年学んできたコーチングの技術を活かし、40歳までには独立をしたいと考えています。個人事業主となった場合、どれくらいの収入や貯蓄があれば現在の生活を維持できるのかについて知りたいです。また、個人事業主に必要な税金や社会保険制度の知識がないことにも不安を感じています。
【相談者プロフィール】
性別:女性
年齢:35歳
職業:会社員
家族構成:独身
住居:賃貸
【収入】世帯収入額480万円:(手取り:377万円)
Aさん年収:480万円(月収30万円、ボーナス年120万円)
【支出】
支出額合計:年間308万円
生活費合計:年間108万円
(内訳)
食費:月3万円(年間36万円)
日用品:月2万円(年間24万円)
水道・光熱費:月1万円(年間12万円)
通信費:月1万円(年間12万円)
予備費:月2万円(年間24万円)
習い事・娯楽費合計:年間106万円
コーチング代(40歳までを計画):月3万円(年間36万円)
小遣い:月5万円(年間60万円)
旅行:年10万円
住居関連費合計:年間88万円
(内訳)
賃料:月7万円(年間84万円)
更新料:年4万円
保険料合計:年6万円
(内訳)
Aさん名義
医療保険:年6万円
【世帯の資産状況】
・現在の預貯金総額:200万円
・現在の投資総額:投資信託の積立投資1万円/月
・現在の負債:なし
これからどのような働き方を望みますか?
Aさんに、なぜ会社員から独立して、個人事業主として働きたいのかを伺いました。
「今の会社は規模が小さく、社長の意向が会社に大きな影響を与えます。会社の方針に振り回されることなく、もっと自由に仕事がしたいです。長年、コーチングを学んできたので、コーチとしての独立を考えるようになりました」とのこと。Aさんのように、会社の方針や働く場所・時間に縛られない自由な働き方を求めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
個人事業主として事業を始めるには、事前の準備が必要です。無計画に始めてしまったがために、生活が成り立たなくなっては元も子もありません。独立に向けてどのようなステップを踏めばいいのかを解説します。
いくら稼げばいい? 必要な売上のボーダーラインを知る
独立後も〈収入-支出=黒字〉という方程式を成立させることが、今の暮らしを維持するためには必要です。ただし、個人事業主の場合、売上=収入とはなりません。売上から経費や税金・社会保険料などを引いたものが、自分で自由に使えるお金、いわゆる「手取り収入」になります。必要な手取り収入を得るために、どれだけの売上が必要になるのかをAさんの事例で確認してみましょう。
①支出の把握
必要な売上を知るために、まずは最低限の支出を把握しましょう。支出とは家計に必要な費用(住居費、食費、光熱費、医療費、保険料、娯楽費等)のことです。Aさんの家計では、独立後は現在の支出からコーチング費用を除いた約270万円を年間の支出額と仮定しました。実際には独立してもさらなる学びの費用がかかることも想定されるので、シミュレーション時に支出を絞りすぎないようにするのもポイントです。
②必要な売上を試算する
手取り収入が270万円あれば、今の暮らしを維持できることはわかりました。では、270万円の手取り収入を得るには、どれだけの売上が必要になるのでしょうか。
かかる経費は事業によって様々です。仮に、経費が売上の20%かかると想定します。年間売上が300万円だと、60万円が経費となり、240万円が手元に残ります。そこから社会保険料や税金を差し引くと、手取り収入は年間約170万円となります。Aさんの年間支出額は270万円のため、約100万円が不足します。年間売上が500万円の場合、100万円が経費で400万円が残ります。社会保険料と税金を差し引くと、手取り収入は年間約280万円となるため10万円の黒字となります。
Aさんが独立して、生計を維持していくために必要な年間売上は500万円がボーダーラインといえます。ただし、経費については変動が大きいため、最低限必要な手取り収入を確保できるように常に意識して売上目標を設定しましょう。
このように必要な支出から、売り上げ目標を試算してみると将来のお金の見通しが立ちやすいのでキャリアチェンジの前にはぜひお試しください。
独立前に万一の備えを準備しておく
個人事業主は会社員よりも収入が不安定になる場合があります。また、急な病気やケガのリスクもあります。個人事業主には傷病手当がなく、病気やケガで働けなくなったときの保障が会社員より手薄になってしまいます。万一の場合に備えて、会社員以上に貯蓄(生活防衛費)が必要です。個人事業主に必要な生活防衛費は、一般的には生活費の1年から2年と言われています。Aさんの場合、約300万円~550万円となります。現状の収支であれば、39歳までに約500万円の貯蓄が可能となり、生活防衛費については独立前に必要額をクリアできそうです。
また、病気やケガで長期間働けないことによる収入減をカバーしてくれる就業不能保険を活用するのも一つです。詳しい保障内容は各保険会社によって異なりますが、貯蓄の取崩しを減らす効果があります。
忘れてはならない税金と社会保険の手続き
個人事業主になると、会社員のときには給与天引きされていた税金や社会保険について、すべて自分で手続きや支払いをしなければなりません。支払いが必要な税金や社会保険にはどのような種類があるのでしょうか。
①税金
(1) 所得税
所得税は個人の所得(収入から経費などを引いたもの)に対してかかる税金です。所得税は1年間のすべての所得からいろいろな所得控除を差し引いた残りの所得に税率をかけて計算します。1年間で生じた所得について、翌年2月16日から3月15日の間に確定申告をして納税します。申告を促すような案内が自宅には届かないため、申告漏れがないよう注意しましょう。
(2) 住民税
教育や福祉、消防・救急、ごみ処理など身近な行政サービスをまかなうために、地域の人たちなどが分担する税金です。住民税は住民が平等に負担する金額と前年の所得の額に応じて負担する金額の合計金額を納めます。確定申告をもとに市町村が税額を計算し、毎年6月頃に「住民税決定通知書」と「納付書」が送付されます。一括納付と4回に分けて納付する分割納付を選択できます。
(3) 消費税
消費税は商品やサービスの販売に対して課税される税金です。個人事業主として商品やサービスを販売して消費税を受け取った場合、消費税の納税義務者(課税事業者)は確定申告をして消費税を納付しなければなりません。基準期間内の課税売上高が1,000万円以下の場合などは免税事業者となり、消費税の納税義務が免除されます。
(4) 個人事業税
個人事業税とは、個人事業主が都道府県に納める税金です。所得によっては除される場合や課税対象ではない業種もあります。確定申告をすると、納付の必要がある場合、毎年8月頃に都道府県から「納税通知書」が送付されます。
②社会保険
(1) 年金
個人事業主は国民年金に加入します。保険料は1カ月当たり16,980円です(令和6年度)。国民年金保険料の納付期限は、納付対象月の翌月末日となります。また、前納(6カ⽉前納、1年前納、2年前納)すると保険料の割引があります。
(2) 国民健康保険
国民健康保険は、個人事業主が加入する公的医療保険です。国民健康保険料は収入や年齢などをもとに計算され、納付書が各自治体から送付されます。年間保険料を10回に分けて納めていきます。正確な保険料や納付時期を知りたい場合には、各自治体に確認しましょう。
キャリアチェンジの前に未来を把握しよう
Aさんは、FPから一通りの説明を受け「今の生活を維持するには、思っていた以上に売上が必要なことがよくわかりました。お金を理由にキャリアチェンジを諦めたくはないけれど、事業を続けていくためにも生活の安定は欠かせません。40歳での独立を目標に、まずは副業からスタートしてみます」とのこと。
独立し、目指すキャリアを築くためには、困難な局面もあるかもしれません。しかし、その先に望む未来が待っているのではないでしょうか。事業を継続させるためにも、まずは生活基盤を整えることが大切です。そのためには、キャリアチェンジをする前に、自分の暮らしに必要な支出・売り上げ、そして未来を知ることからはじめましょう。
【監修】伊達有希子/ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)
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(南真理)
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