iDeCoやNISAの運用にも参考になる? 好調な国の年金運用から学べること
MONEYPLUS / 2024年7月30日 7時30分
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iDeCoやNISAの運用にも参考になる? 好調な国の年金運用から学べること
2024年の財政検証では、5年前と比較して年金の見通しが改善したと発表されました。その要因のひとつとして挙げられているのが、好調な運用で年金積立金が大きく増えたからと言われています。今回はiDeCoやNISAの運用にも参考となる年金積立金の運用内容を解説します。
GPIFの運用
日本の年金積立金は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用しています。ここでは現時点で余剰資金となっている積立金を運用して増やし、将来の年金原資に回していくことを想定し運用を行っています。
ご承知の通り日本の人口は今後減少していき働き手が減っていきます。するとしばらくの間は年金の給付を受ける高齢者と年金保険料を負担する現役世代との関係がアンバランスになるので、積立金は必要なタイミングで資金を補填し年金制度を維持しようと考えられているのです。
GPIFが運用する金額は245兆円と、世界でも類を見ない多額の資金を運用している組織と言われています。またGPIFのミッションは「長期的に積立金の実質的な運用利回り(積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの)1.7%を最低限のリスクで確保すること」ととても大きな責任を担っていることも分ります。
運用目標は賃金上昇率+1.7%と言われてもなかなかピンと来ませんが、これまでの運用実績を見てみると、堅実で確実な運用をしていることが分ります。毎年の運用実績はもちろん単年ごとのでこぼこはありますが、2001年から2023年までの平均は4.24%となっており、しっかりと目標は達成してきていることが分ります。
GPIFの運用ポートフォリオは公表されているので、私たちも参考にすることができます。実際、GPIFの運用実績を模した資産運用をしたいという方であれば、ぜひお手本にするべきポートフォリオであるとも言えます。
基本ポートフォリオは、株式と債券に50%ずつ配分されています。さらに、それぞれが国内と外国に半分ずる分散されています。つまりいわゆる基本の4資産と呼ばれる日本の株式、日本の債券、外国の株式、外国の債券に25%ずつというのが基本で、適時リバランスが実行されているのです。
例えば、NISAのつみたて投資枠で購入できる投資信託で見ると、ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産)や三菱UFJつみたて4資産均等バランスが同様のコンセプトで運用されるバランスファンドです。前者の信託報酬は0.15%、後者は0.24%なので、今回は前者の過去の運用実績を詳しくみていきます。
ちなみに、GPIFが負担する「管理運用委託手数料額」は0.02%と発表されています。やはりコスト負担には意識を向けて運用されているのでしょう。とはいえ、その額は490億円ですから、驚くほど巨額です。
ニッセイ・インデックスバランスファンドの運用実績は?
話がそれてしまいましたが、ニッセイ・インデックスバランスファンドは、GPIFのポートフォリオ同様、日本株式、日本債券、外国株式、外国債券に25%ずつ均等に投資をするバランスファンドです。設定は2015年ですから10年弱の運用実績があります。
過去の実績を見ると5年の年平均利回りは、10.43%です。3年の年率は、10.16%、直近1年は16.56%と発表されています。いわゆるリスクを示す標準偏差は過去5年の実績が8となっています。(2024年6月30日現在)
例えば「オルカン」と呼ばれて人気の三菱UFJ eMAXIS Slim 全世界株式の5年の年率リターンは20.24%で標準偏差は16ですから、4資産均等バランスの方がリスクはだいぶ抑えられた運用をされていることが分ります。
もしNISAでは、GPIFをお手本とした運用をしたいという方であれば、基本の4資産を適時リバランスしてくれるので、上記のようなバランスファンドが便利でしょう。
参考までに、さらに投資対象を広げた「8資産均等」というバランスファンドもあります。こちらは基本の4資産のうち外国株式、外国債券がそれぞれ先進国と新興国に分かれて6資産を構成しそこに日本と先進国のリート(不動産投資信託)が加わり8資産となります。均等ですから12.5%ずつ配分されているということです。
投資信託の評価をしているウエルスアドバイザーというサイトで確認すると、前述の4資産均等バランスのリスクメジャーは2(やや低い)となっていますが、例えば同様につみたて投資枠で購入可能なeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)のリスクメジャーは3(平均的)と評価されています。やはり新興国や不動産への投資比率が高くなることにより、リスクが大きくなる傾向にあります。
実際の過去の実績を見てみると、5年の年率リターンは9.28%、標準偏差は10.19です。従ってリスクを抑えた運用を望んでいる方であれば、8資産均等まで投資対象を広めずとも4資産均等も充分選択肢になり得るのではないかと考えます。(2024年6月30日現在)
4資産均等のバランスファンドがない場合はどうする?
一方iDeCoの場合、運用商品数が限定されている関係上、バランスファンドのセレクションの中に4資産均等がないということもあるでしょう。どちらかというと、バランス70、50、30などといった株式比率をファンド名に表したファンドが多く、その中の株式と債券へ50%ずつ投資するバランス50であってもその投資比率は均等ではなく国内株式への比率が大きいといった傾向もあります。
また「安定型」や「安定成長型」といった名称のバランスファンドでGPIFのポートフォリオに近いファンドもありますが、4資産均等は少なく不動産へ投資をするリートが組み込まれたりすることも多いように思います。
その場合、日本の株式、日本の債券、外国の株式、外国の債券に投資をするインデックスファンドを組み合わせ、自分でリバランスをしていくという方法もとれます。実際緻密なリバランスは非常に技術が必要なことだとも言われますが、タイミングを選ばず決まったサイクルで行う定期的なリバランスであれば可能でしょう。
iDeCoのリバランスは、加入者自身で売却すべき口数を指定しなければならないので、なかなかぴったりと25%ずつの配分に戻すのは大変ではありますが、学びの場としても有効ですのでチャレンジされるのも良いでしょう。
筆者が行うFPアドバイスでは、上記でご紹介した4資産均等バランスをiDeCoやNISAの口座内で購入する方法もお伝えした上で資産全体でのバランスを考えることもお伝えしています。
例えば老後資金作りを目的としているポートフォリオであれば、資産の成長を期待するより、リスクを抑えるために日本の債券をそこに組み込む必要性が低い場合も往々にしてあります。むしろ日本の債券は中期的な目的、5年や10年後に使う目的があるような資金として個人向け国債などを利用し、長期的な運用目的のiDeCoやNISAではポートフォリオからあえて外すということも考え方としてはあるでしょう。
個人の資産運用の場合は、GPIFの運用を参考にしつつ、それぞれの目的、運用の役割の違いに着目し、ご自身なりの運用方針が立てられるようになると良いのではないかと考えます。参考になりましたら幸いです。
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(山中 伸枝)
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