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「投資型年金保険を解約して、新NISAで運用したい」損をしてでも解約はすべき?

MONEYPLUS / 2024年8月13日 11時30分

「投資型年金保険を解約して、新NISAで運用したい」損をしてでも解約はすべき?

「投資型年金保険を解約して、新NISAで運用したい」損をしてでも解約はすべき?

2024年からスタートした新NISAをきっかけに、資産運用を始める方が増えました。すでに異なる方法で運用をしている方のなかには、新NISAの制度概要を知り、「新NISAで投資をすればよかった……」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、投資型年金保険を解約し、新NISAで新たに資産運用を始めたAさん(41歳・女性・パート)の事例をもとに、運用方法を変更する判断基準についてFPが解説します。


投資型年金保険を解約して、新NISAで資産運用を始めた方がいい?

結論からお伝えすると、各家庭の状況によりますがAさんは解約してでも資産運用をした方が良いケースでした。

投資型年金保険とは、おもに投資信託で運用され、運用実績によって将来の年金額が変動する保険商品のことを言います。受取年齢をあらかじめ決めておくことができ、資産を増やせる可能性があります。Aさんは、インフレリスクに備えられ、計画的な老後資金の準備に適していると思い、1年前(2023年)に契約を決めました。

Aさんが契約した投資型年金保険の詳細
保険種類:投資型年金保険(変額個人年金保険)
運用方針:バランス型80(日本を含む世界株式に約8割、先進国の債券に約2割で運用)
保険料:月額3万円
払込期間:40歳から70歳までの30年間
年金受取期間:70歳から85歳までの15年間
年金の受取方法:15年の確定年金(年金受取開始前に受取方法は変更可)
年金額:年120万円(運用実績によって変動あり)

Aさんは、NISAが制度改正により、売却益が全額非課税となる非課税期間が無期限に変更されたことを知り、「新NISAで運用した方がいいのでは?」と、思い始めました。しかし、Aさんは家計の収支バランスを考慮し、資産運用は月3万円までと決めています。AさんはFPに相談した結果、これまでに支払った保険料より受け取る解約返戻金のほうが少なくなる「元本割れ」になるにも関わらず、既存の投資型年金保険を解約し、新NISAに運用方法を変更することにしました。Aさんが投資型年金保険から新NISAへ運用方法を変えようと決めた理由は何だったのでしょうか。

プロフィール
【家族構成】
Aさん(パート(夫の扶養内)・41歳)、夫Bさん(会社員・42歳)、長男(10歳)、長女(8歳)

【収入】
世帯収入合計額:年604万円(手取り年500万円)
(内訳)
夫の収入:年460万円(手取り年360万円)
Aさんの収入:年120万円(手取り年116万円)
その他の収入:児童手当 年24万円(月2万円、子ども2人分)

【年間の世帯支出の目安】
支出合計額:年474万円

生活費合計:年間426万円
(内訳)
生活費:年180万円(月15万円。食費・日用品費・通信費)
子ども費:年64万円
住宅費:年14万円(固定資産税・火災保険)
住宅ローン:年97.2万円(月8万1千円返済。ボーナス返済なし)
車輛費:年26万円(ガソリン代・自動車保険)
自動車ローン:年44万円(残り5年220万円返済)

保険料合計;年48万円(自動車保険・火災保険除く)
(内訳)
医療保険(妻Aさん名義):年6万円
医療保険(夫Bさん名義):年6万円
投資型年金保険(妻Aさん名義):年36万円(月払い3万円)

【世帯の資産状況】
普通預金:400万円

損をしても新NISAに運用方法を変えた理由は?

Aさんが、投資型年金保険から新NISAに変更した理由は3つあります。

1.すぐに現金化できる資産が今後必要になるから

家計の状況によって、適した投資商品は変わります。まずは家計を把握するために、FPにライフプランを作成してもらいました。その結果、長男が大学生になる10年後からの4年間は家計の年間収支がマイナスとなること、子ども2人が大学生になる12年後には自由に動かせる金融資産が300万円を下回ることが分かりました。教育費のかかる期間に自由に動かせる金融資産が300万円以下となることにAさんは心もとなく感じました。

投資型年金保険を含む個人年金保険は、満期までは使わずに貯めておきやすいことがメリットです。言い換えると、満期までは解約しづらい金融商品とも言えます。一方、新NISAで運用する投資信託などは、運用実績によって受取金額は変動しますが、満期がなく、いつでも好きな時に解約することができます。

2.運用コストを抑えたいから

投資型年金保険や新NISAで運用する投資信託などの金融商品は、申込時や運用期間中に、運用に必要なコストを負担しなければなりません。

Aさんが契約した投資型年金保険は、毎月3万円積み立てる際、毎回3%の費用(900円)が差し引かれた上で、残りの金額(29,100円)が運用に組み入れられる仕組みです。さらに、保険契約維持などに要する費用として、積立金額に年率1.2%が年間のコストとしてかかります。

一方、NISAでAさんが運用先として考えている世界株式に投資するインデックス型の投資信託は、毎月の積立時に手数料はかかりません。そして、運用期間中にかかる運用管理費用は年率0.058%です。長い目で見た場合、運用にかかるコストは将来の受取金額に大きな影響を及ぼします。投資商品を契約する前や別の商品と比較する際には、運用コストは押さえておくべきポイントです。

3.損失額が許容範囲だから

Aさんの契約する投資型年金保険は、契約から5年未満は所定の解約控除がかかります。

解除控除とは、保険契約を解約する際に発生する損失を契約者が負担するものです。Aさんが現時点で解約するとどうなるのかを保険会社に確認したところ、1年前から積み立てた36万円に対して、解約控除が16万円となり、実際に手元に戻る解約返戻金は20万円になるだろうとの回答でした(解約返戻金額は解約書類を保険会社が受領した時点での計算で確定となる)。

投資型年金保険を解約することで、16万円の損失となるものの毎月3万円を、仮に利回り7%で運用できれば約4年、利回り5%で運用できれば約5年で取り戻すことができます。16万円は大きな損失金額ではありますが、新NISAへ運用方法を変更することでコストを抑えられる上に、投資対象として検討している投資信託の運用実績からも損失は取り戻せる範囲内であるとAさんは判断しました。

現金化しやすい資産の必要性、運用コスト、損失額の許容度の3点から検討した結果、Aさんは投資型保険から新NISAへ変更することにしました。その結果、12年後に自由に動かすことができる金融資産は、運用方法変更前の300万円未満から900万円弱 になりました(投資信託を年率5%で運用した場合)。

Aさんは投資型年金保険を解約することにしましたが、保険会社によっては払済保険に契約内容を変更するという選択肢もあります。払済保険とは、保険料の払込期間が終わっていない保険に対して、払い込みをしない代わりに、将来受け取る保険金額を下げた保険に変更できる仕組みです。

払い済みにすることで、保険料の支払いは停止させつつ、これまでの積立金額で投資型年金保険の運用を継続することができます。払済保険に変更するには、最低保険金額や加入期間などの条件を満たす必要があります。Aさんのケースでは加入期間が短いため、払い済みができなかったので解約となりましたが、ある程度加入期間がある保険商品の場合は、払い済みの詳細について保険会社に確認してみましょう。

運用方法を変更すべきか判断するために忘れてはならないこと

資産運用は長期に及びます。そのなかで、今回のAさんのように運用方法を変更したくなることがあるかもしれません。運用方法を変更する場合、変更に伴う損得に意識がいきがちですが、まずは運用目的に立ち返りましょう。目的と家計の状況が把握できれば、満たすべき条件や優先したい事項が見えてきます。どちらの運用方法の特徴が我が家に合うかを確認し、運用方法を変更すべきかを判断してください。そもそも運用は将来の受取額が保証されるものではありません。運用に拘りすぎていないかも意識してみることが必要です。また運用商品のラインナップの違いや商品特性についても押さえておきたいですね。

当初運用していた金融商品を解約すると損失が出る場合は、損失額は許容範囲なのか、変更後の金融商品でその損失を取り戻せる可能性はあるのか、解約以外の方法はないのかも検証してください。

運用方法の変更は、各家庭のさまざまな状況・条件を踏まえて判断すべき個別性の高い問題です。商品自体の良し悪しよりも、各家庭の状況に合っているかどうかで決めると間違いがないでしょう。そのためにはライフプランを作成し、少し先の資金的な見通しを立てることが近道です。情報を鵜呑みにせず、「我が家の場合はどうか?」をひとつずつ確認するようにしましょう。

【監修】伊達有希子/ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)

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(南真理)

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