家計の大きな負担で家族が介護するケースも…民間介護保険は必要?
MONEYPLUS / 2024年8月23日 11時30分
家計の大きな負担で家族が介護するケースも…民間介護保険は必要?
人口が減り続けることに加え、団塊の世代が後期高齢者になり、ますます高齢化が進む日本。2025年には5人に1人が認知症になるとの予測も出ています。介護にはなりたくないと思っていても、介護状態になったらケアにはお金がかかります。公的介護サービスの自己負担分をカバーできる民間保険の準備は必要です。
公的介護保険サービスの支給限度額と自己負担額
公的介護保険制度は、高齢化に伴い増えると予想される介護の負担に対応するために、2000年4月にスタートした比較的新しい公的保険制度です。40歳以上の人が介護保険料を納め、介護が必要になった時、介護サービスを1割から3割負担で受けられる公的保険です。
サービスが受けられるのは、65歳以上になり、原因を問わず介護が必要と認定されたひとです。老化が原因とされている、特定疾病16種類に限っては、40歳以上64歳以下の公的医療保険に加入している場合、公的介護保険の対象となります。
画像:生命保険文化センターHP「リスクに備えるための生活設計」より抜粋
制度開始から20年以上たちますが、介護状態になった時、介護サービスが無料で受けられると勘違いしているひとも見受けられます。また、施設入居時の居住費、食事代などは公的介護保険の対象外だということも、知られていないのが実情です。
自宅で介護を行い、介護サービスを利用する場合、公的介護保険で支給される1ヵ月の限度額は、認定される介護度によって、下表のように定められています。要介護3の場合、限度額の範囲内でサービスを利用した場合、1割負担のひとですと、27,048円が自己負担となります。限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担です。
画像:厚生労働省「介護サービス情報公表システム 介護保険の解説」より抜粋
健康保険の自己負担割合を考えると、1割の自己負担は少ないように感じますが、介護が必要な状態になった場合は、病気やケガの医療費と違い、時間の経過で改善となることは少なく、毎月、長い時間費用がかかってきます。1割とはいえ、家計には大きな負担となり、サービスは受けず、家族が介護を担う、といったケースも多く見受けられます。
介護保険に入るなら年金か一時金か
厚生労働省の介護保険事業状況報告月報によると、2000年4月時点の要介護認定者数は約189.1万人、2020年4月時点の要介護認定者は約481.6万人と、20年で約2.5倍に増加しています。85歳以上になると約2人に1人が要支援・要介護認定を受けています。
がんも2人に1人が罹患すると言われる病気です。生命保険文化センターの全国実態調査によると、民間のがん保険やがん特約の加入率は約40%。それに比べ、民間の介護保険の加入率はわずか10%程度です。2人に1人が介護保険制度のお世話になる可能性があるわけですから、自己負担分をカバーし、さらに、自己負担分を超過するサービスや、施設の介護費、食事代などに困らないよう、民間の介護保険は必要ではないでしょうか。
民間の介護保険は要介護2または要介護1に認定されると契約の保険金を払う仕組みです。公的介護保険と違うところは、20歳という若い年齢から加入できるところです。介護というと高齢というイメージがありますが、脳血管疾患などで麻痺が残り、介護状態になってしまう可能性は若年でも充分あります。若年で介護状態になった場合でも、介護サービスの負担は必要です。確率は少ないかもしれませんが、公的介護制度の対象外だからこそ、民間の保険が役に立ちます。また、介護保険では、介護保険金を支払う状態になったら、以降の保険料は不要という、払込免除が基本に組込まれているので、万一の場合保険料の心配がいりません。
契約のパターンは、認定されたら一時金を受取る方法と毎年同じ時期に年金として受取る方法があります。生命保険文化センターの生命保険に関する全国実態調査によると、2021年度の介護費用(一時的にかかった費用)の平均は約74万円、毎月払った費用(在宅・施設介護いずれも含めた)の平均は8.3万円です。このデータから、介護状態になって環境を整えるために、一時的にまとまったお金が必要になり、その後、毎月介護が続く限り費用がかかり続けることがわかります。
介護のために一時金としてまとまった金額を受取るのもひとつの方法ですが、どこかで枯渇してしまう恐れもありますので、毎年年金として受取る方法にプラスして、当初介護一時金を受取ることができるという契約が望ましいでしょう。
経済的負担を考えると受取れる期間は一生涯が理想
では、年金を受取れる期間はどの位が目安でしょうか? 先ほどと同じ実態調査によると、介護期間はまちまちで、6か月未満から10年以上までさまざまです。平均は5年1ヵ月という結果になっていますが、数年前の調査に比べると、期間は伸びています。介護状態になってから亡くなるまでという期間になりますので、予測を立てることは不可能です。
商品の設定としては、年金を5年・10年確定で受取る有期型と、介護状態が続き生きている限り受取る終身型があります。データ上は平均5年ですので、5年確定型の選択もあるかもしれません。ですが、長く続くかもしれない介護の経済的負担を考えれば、終身型を選択するのが望ましいでしょう。
特に独身で過ごされていて、将来介護状態になった時、親族の手助けは見込めないと予想できるひとは、介護サービスの費用負担は必ず発生します。2人に1人に訪れる介護に備え、若いうちから介護の備えを始めましょう。
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(寺田 紀代子)
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