円高で本当に上がるの? 円高下における「円高メリット株」のパフォーマンスを検証!
MONEYPLUS / 2024年10月9日 7時30分
円高で本当に上がるの? 円高下における「円高メリット株」のパフォーマンスを検証!
足元の為替相場で、円高が進んでいます。ドル・円相場は2011年10月に1ドル=75円を付けて以来、長期の円安トレンドに転換。2024年7月1日に約1ドル=162円程度になるまで、長期間にわたって円安局面が継続しました。しかし、それ以降は米国の景気不安や日銀による利上げなどが重なり、急速に円高(ドル安)が進行しています。
ドル・円相場では、今後も日米金利差の縮小などから円高が進行するとの見方が多くなっており、株関係のコラムや株系情報サイトでは「円高関連株」が取り上げられているのをよく目にするようになりました。
ここでは「円高関連株って本当に円高で上がるの?」という視点から、過去の円高局面などを参考に、円高関連株のパフォーマンスについて考えます。
中長期的には日米金利差の縮小を背景に円高に振れやすい
ドル・円相場は、民主党政権下で1ドル=75円台を付けて以来、長期的な円安トレンドが続いています。ただ、2024年は7月3日に1ドル=162円に迫ったあたりから反転。米国の景気不安に加え、7月末には日銀が3月末に続き追加の利上げに踏み込んだことによって、円が急速に買われ(ドルが売られ)ました。9月16日には、一時1ドルが140円を割り込む水準まで円高が進んでいます。
急速に円高が進んだ要因として、積み上がってきた「円キャリートレード」の巻き戻し(反対売買)が起こったことが挙げられています。「円キャリートレード」とは、金利が低い円で資金を調達し、調達した資金を為替や株、その他の金融商品に投資する取引のこと。これまで円を売ってドルを買い、その資金が世界中の金融市場に流れ込んでいたわけです。しかし、日銀が継続的な利上げの可能性を打ち出したことで、投機勢を中心に反対売買、つまり「ドルを売って円を買い戻す」取引が相次ぎました。
この先、米国が利上げから利下げ局面に転じ、日本の利上げが継続的なものになれば、ドル・円相場は円高方向に振れやすくなるはずです。その時その時の局面を切り取れば、為替相場は必ずしも金利差によって動くとは限りません。しかし、長い目で見れば、両国の金利差を反映する動きになる可能性が高いことは確かです。今後、日米の金利差が収縮するのであれば、投資家はそうした視点を念頭に置く必要があるでしょう。
これまで、13年間にわたって円安局面が続いてきたため、株式相場では円安にとって恩恵を受ける株「円安関連」が買われやすい相場になっていました。つまり、「輸出で稼ぐ株」に投資家の注目が集まりやすい相場だったということです。しかし、今後は円高に振れやすい相場が続くとしたら、ある程度、投資戦略の見直しが求められるはず。今度は「円高メリット株」に目を向けるべき局面が到来するかもしれません。
代表的な円高メリット株の円高下でのパフォーマンスをチェック
ここでひとつ、筆者の中である疑問が生まれます。それは「円高関連株って、本当に円高局面で買われるの?」という疑問です。2012年以降、数か月以上にわたって円高が続いたのは、
②2020年7月~2020年12月
③2022年11月2023年1月
④2024年7月~2024年9月
の4回。この間の代表的な円高関連株のパフォーマンスを見てみましょう。ここでは、為替相場の動向に業績や株価が影響を受けづらい「為替に無関係」な銘柄を除きます。円高メリットを受けるのは、一般的に電力・ガス(石油や天然ガスは輸入に頼っているため)、石油元売り、紙・パルプ(紙の原料の7割程度は輸入に依存)、食品、旅行会社などの業種、セクターとされています。
以下の表は、「円高メリット株」としてよく名前が上がる代表的な銘柄に関して、①~④の間の株価推移を調べたものです。数字は、期間中、最初の月の営業日初日の始値と、期間の終日の引け値の騰落率。期間中につけた高値、安値は考慮していません。そのため、期間中に何らかの理由で一時的に株価が上昇し、その後期間中の月初めの水準より下落しても、数字はマイナスで算出されます。また期間後に株式分割(あるいは株式併合)を実施していた銘柄については、当時の値ではなく、分割、併合を考慮した株価になっています。ちなみに、東京電力ではなく関西電力を採用したのは、東京電力が柏崎刈谷原発という個別の株価上下要因があるためです。
①の期間に関しては、上昇したのが100円ショップ大手のセリアと、海外の自社工場から家具を輸入して販売しているニトリホールディングスの2銘柄のみ。同期間はTOPIX(東証株価指数)が14%近く下落しており、いくら円高メリット株でも、全体相場の売りに押された格好です。注目は、③の期間。TOPIXの上昇率が2.11%と低くとどまっている一方で、円高メリット株に関しては二桁の上昇が目立ちます。また、④は全体相場が大きく下げる中、10銘柄中4銘柄が上昇。円高メリット株として買いが入っている様子がうかがえます。
これから円高メリット株は本領を発揮する?
この表から読み取れることは、円高が進む局面において
・全体相場急落の影響からは、円高メリット株も逃れられない
・全体相場が堅調な時は、円高を好感して素直に買われる銘柄が多い
・全体相場が急落していても、個別で買われやすい傾向がある
ということ。もちろん、全体相場や為替相場の動向とは関係なく、個別の要因で買われたり売られたりするケースも考えられますが、全体相場の下落がさほどでない場合は、買われやすいといえるのではないでしょうか。
ちなみに、9月30日の株式相場は、前週末の引け後に石破茂氏が自民党総裁選に勝利し、総理大臣への就任が決まったことで、ドル・円相場が前週末の146円台から141円台まで急伸。日経平均は2000円近くの急落となりました。④には9月30日の全体相場の急落が反映されています。9月30日は、東証の約85%の銘柄が値を下げる中、セリアや神戸物産、ニトリホールディングス、ワークマンは前週末比で株価が上昇したほか、他の銘柄の下げ幅も小幅にとどまっています。
今後、円高が続くとしたら、それは中長期で円高メリット株の業績に反映します。もちろん、円高下でこれらの銘柄の業績が悪化してしまうと、株価も下がることになるでしょうが、円高メリット株の本領が発揮されるのは、これからかもしれません。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
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(新井奈央)
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