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S&P500やオルカン積立の民も必読!投資のための「為替」の知識

MONEYPLUS / 2024年10月12日 7時30分

S&P500やオルカン積立の民も必読!投資のための「為替」の知識

S&P500やオルカン積立の民も必読!投資のための「為替」の知識

3週連続で、金利・為替・株価について解説しています。

前回の記事では、「金利」と投資の関係について解説しました。今回は、「為替」について取り上げます。為替は特に海外投資や国際経済にかかわる際に重要な要素です。為替レートの変動が投資にどう影響するのか、基本的な概念から投資初心者向けに解説していきます。


為替とは?

「為替」とは、異なる国の通貨を交換することを指します。例えば、日本円と米ドルを交換することを「為替取引」と呼びます。このとき、円とドルの交換比率を「為替レート」といいます。為替レートが1ドル=150円の場合、1ドルを手に入れるためには150円が必要です。

為替レートには大きく分けて「固定相場制」と「変動相場制」があります。固定相場制は政府が為替レートを固定し、特定の水準で維持する仕組みです。例えば日本は第二次世界大戦後の物価安定、緊縮財政政策である「ドッジ・ライン」により1ドル=360円の固定相場制でした(1973年2月から変動相場制に移行)。中国人民元は長い間ドルに対して固定相場制を採用していましたが2005年7月に変動相場制に移行しました。

一方で変動相場制は市場の需要と供給によって為替レートが自由に変動する仕組みです。「フロート制」とも呼ばれます。日本円や米ドルはこの変動相場制を採用しています。

現在の変動相場制では、通貨の需給によって為替レートが常に変動します。例えば、日本の輸出が増えれば、日本企業が得たドルを円に交換するため円の需要が増え、円高になる可能性があります。円高は、日本円の価値が上昇し、1ドルあたりの円の価値が増すことを指します。例えば、為替レートが1ドル=110円から1ドル=100円になると円高です。円安は反対に日本円の価値が下がり、1ドルあたりの円の価値が減ることを指します。為替レートが1ドル=110円から1ドル=120円になると円安です。円の価値が高くなると円高、円の価値が安くなると円安と覚えるとわかりやすいのではないでしょうか。海外旅行に行く際は円高の方が海外のものを安価に手に入れることができます。

為替レートはなぜ変動するのか?

では、為替レートはなぜ変動するのでしょうか?その理由にはさまざまな要因があります。ここでは、主な要因をいくつか紹介します。

◆金融政策と金利差
金利は為替レートに大きな影響を与える要因の一つです。異なる国の金利差が為替市場に影響を及ぼすため、金利が高い国の通貨は人気が集まりやすくなります。これは、高い金利を提供する国の通貨を持つことで、投資家がより高いリターンを得られるからです。例えば、日本の金利が低く、アメリカの金利が高い場合、投資家は円を売ってドルを買い、米国の債券などに投資しようとします。また外貨預金でドル預金をする方も増えます。この動きが続くと、円安ドル高となります。

逆に日本の金利が上がると円高になります。7月31日に日銀金融政策決定会合で、日銀は政策金利を0.25%程度に引き上げる追加の利上げを決定。植田総裁の記者会見ではさらなる利上げを否定しませんでした。一方でアメリカの中央銀行であるFRBは7月のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を8会合連続で5.25〜5.5%に据え置いたものの、パウエルFRB議長の発言で早ければ次回の9月会合で利下げを行う可能性があると言明。日本の金利を上げる方向、アメリカは金利を下げる方向に動いたため為替市場でドル円は円高ドル安方向に大きく動きました。

◆政治的要因
政治の安定性や政府の政策も為替レートに影響を与えます。たとえば、ある国で政権が交代し、経済政策が大きく変更される可能性がある場合、その国の通貨に対する信頼が低下し、通貨が売られることがあります。また、戦争や政情不安があると、その国の通貨は避けられる傾向にあります。

政府要人の発言も為替の値動きを左右させることがあります。直近では石破新首相が就任後に「追加利上げ環境にない」との発言をしたことや岸田政権の成長路線を引き継ぐとしたことで早期の追加利上げ観測が後退し、為替市場でドル円は円安方向に動きました。

◆貿易収支
貿易収支も為替に影響を与えます。ある国が輸出を多く行うと、その国の通貨が海外で多く使われるため、その通貨の需要が高まり、通貨が強くなります。逆に、輸入が多い国では、その国の通貨が海外に流出しやすいため、通貨の価値が下がることがあります。例として日本の2024年上半期(1〜6月)の貿易収支は3兆2345億円の赤字となりました。半期ベースの赤字は6期連続です。日本はエネルギーをほぼ輸入に頼っているため、エネルギー価格が高まると輸入額の伸びが大きくなり赤字幅は拡大しやすいです。またそのような事情(エネルギーなどの輸入が必須という事情)から日本の貿易赤字傾向は継続すると考えられ、それは円安圧力となります。

◆デジタル赤字や海外投資
私たちの毎月支払っているAmazonやApple、Disney+やNetflixなどの海外の企業のサブスクリプションサービスのお金は、貿易収支同様、円売りドル外圧力、つまり円安圧力となります。家計におけるデジタル赤字はかなり大きいので、そういった意味でも長期的には円安圧力はかかり続けると考えて良いのではないでしょうか。加えてNISAでS&P500やオールカントリーなど海外の株式に投資している人は多く、それも同様に円安圧力となります。

◆経済成長率
各国の経済成長率も為替に影響を与えます。経済が成長している国の通貨は、他の国からの投資を呼び込みやすくなり、通貨の需要が高まります。国力が為替に反映されると言われるのはこのためです。例えば、アメリカの経済が好調であれば、ドルへの需要が増え、ドル高になることが多いです。

為替と投資

ではここからは為替と投資の関係についてお伝えします。

為替は投資においても非常に重要な要素です。特に、外国株式や外国債券への投資を考えている場合、為替レートの変動が投資成果に大きな影響を与えることがあります。

外国に投資する際に最も注意すべきなのが「為替リスク」です。例えば、米国株に投資する場合、ドルで株を購入します。その後、株価が上昇して利益が出たとしても、為替レートが不利な方向に変動すると、結果的に日本円に戻す際に損をする可能性があります。

具体的な例を挙げると、米国株で10%の利益を得た場合でも、投資した時点から円高が進んでいると、その利益が目減りしてしまうことがあります。逆に、円安が進んでいる場合は、為替の利益も加わり、実際のリターンが増えることもあります。

為替リスクを軽減するための手段として、「為替ヘッジ」があります。これは、あらかじめ為替変動による損失を防ぐための取引を行うことです。例えば、円高が進むと予想される場合、ヘッジをかけておくことで、円高による影響を抑えることができます。ただし、ヘッジにはコストがかかるため、その分リターンが低くなることもあります。したがって、ヘッジを行うかどうかは、投資家のリスク許容度や為替の予測に応じて判断する必要があります。個人的にはご自身の資産ポートフォリオや投資戦略にもよりますが、円安リスク、円だけで資産を保有するリスクもあると考えると為替ヘッジにこだわりすぎる必要はないのではと考えます。

為替レートと株価

また為替レートと株価の関係も、投資家にとって重要な要素です。為替レートが変動することで、企業の利益が大きく影響を受けることがあります。特に、輸出企業にとっては為替レートの変動が重要です。例えば円安になると、日本の輸出企業は海外で自国製品が割安となるため、輸出が増加しやすくなります。これにより、売上や利益が増加し、企業の業績が向上すると株価が上がりやすくなります。一方、輸入に依存している企業は円安の影響でコストが増加するため、利益が減少する可能性があります。この場合、株価が下がることがあります。逆に、円高になると、輸入企業にとって有利な状況が生まれ、コスト削減が可能になり、株価にポジティブな影響を与えることがあります。

たとえば、食品業界などの原材料を海外から輸入している企業は、円高が進むことで仕入れコストが下がり、利益率が向上する可能性があります。例えば円安で、利益が出やすい企業の代表格ですと、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車が挙げられます。また輸出が多いSONYや任天堂、パナソニック、キヤノンも円安で恩恵を受ける銘柄とされます。それに対して円高が利益になる企業は、ニトリホールディングスや日清製粉グループ、大阪ガスや出光興産などのほか、海外旅行が増加しやすいことでエイチ・アイ・エスやJALなども恩恵を受けると考えられます。

為替変動を利用した投資戦略もあります。例えば、キャリートレードという手法は、金利の低い通貨(円など)でお金を借り、金利の高い通貨(ドルやオーストラリアドルなど)で運用する方法です。

為替を利用した取引

この戦略は、金利差を利用して利益を得ることを目的としていますが、為替の変動リスクも伴います。ここ数年は欧米が2022年頃から利上げ姿勢に転じた一方で、日本は金利が上がらなかったため、円キャリートレードが活発となりました。そのため日本が利上げに転じた際、円キャリートレードの巻き戻し(その取引をやめる流れ)もドル円急落につながりました。

為替の変動を予測することで、短期的な利益を狙う「FX(外国為替証拠金取引)」という手法もあります。ただし、FXは高いリスクを伴うため、初心者が手を出す前に十分な知識を身につける必要があります。為替市場は、さまざまな要因に影響を受けるため、予測が非常に難しい市場です。特に短期的な為替レートの動きは、政治的要因、経済指標の発表、中央銀行の政策などに影響されます。個人的には短期的にはテクニカル分析(チャートで値動きを分析する方法)が有用だと考えます。知見や技術があれば少額からほぼ24時間、取引可能であることはFXの優位性ですので興味のある方はぜひ学んでみてください。短期トレードの際には“ゴトウビ”(企業の決済日が多いので取引先に支払うドルの需要増から円安方向に動きやすい)、9時55分頃の仲値決めなど、アノマリーと言われるような値動きの傾向を知っておくことも重要だと考えます。

為替は、国際投資において非常に重要な役割を果たします。為替レートの変動は、企業の利益や投資リターンに直接影響を与えるため、特に外貨建ての資産に投資する際は為替のリスクをしっかりと理解し、対策を講じることが重要です。投資を行う際には、為替の動向を予測するのは難しいことを前提に、分散投資や為替ヘッジなどのリスク管理手段を活用することが推奨されます。

来週は「株価」に関する記事を配信していきます。今回の記事も皆様の投資のお役に立てば嬉しいです。

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(三井 智映子)

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