眼鏡の「Zoff」が上場、競合上位3社で投資対象として魅力的なのはどの企業?
MONEYPLUS / 2024年10月24日 7時30分
眼鏡の「Zoff」が上場、競合上位3社で投資対象として魅力的なのはどの企業?
少子高齢化で日本経済全体は縮小傾向にある中、じつは眼鏡業界はゆるやかに成長しています。というのも、団塊ジュニア世代の高齢化で老眼鏡ニーズが拡大していることや、スマホの普及で近眼の低年齢化が進んでいることなど、眼鏡愛用者率が増加しているためです。また、PC眼鏡やサングラスなど、視力が悪くなくてもかける眼鏡の需要が伸びていることも追い風です。
Zoffが上場、眼鏡関連企業の時価総額ランキング
そんな中、2024年10月18日に「Zoff」を運営するインターメスティックが、東証プライム市場に上場しました。公募価格は1,630円、初値は2,038円と25%上昇で好スタートをきりました。
眼鏡関連でほか上場企業は、ジンズHD(3046)、Japan Eyewear Holdings(5889)、パリミキHD(7455)、愛眼(9854)です。時価総額順に並べると1位 ジンズHD(1,383億円)、2位 Japan Eyewear Holdings(632億円)、3位 インターメスティック(624億円) 、4位パリミキHD(180億円)、5位愛眼(32億円)になります(2024年10月22日時点)。現状、ジンズHDが圧勝していますが、Japan Eyewear Holdingsとインターメスティックは、ほぼ同じで競り合っています。
特に、1位のジンズHDと3位のインターメスティックは、ビジネスモデルや商品展開が似ているように感じます。両者とも眼鏡の企画、製造、マーケティング、販売を手がけるSPA(製造小売業)型のビジネスモデルを展開しており、価格帯や店舗の雰囲気も似ています。どちらも今っぽい眼鏡をリーズナブルに買える印象です。店舗数は、JINSが国内451店舗、海外236店舗に対して、Zoffは、国内276店舗、海外36店舗と、国内海外ともにJINSが優っています。海外店舗の割合がJINSは圧倒的に高いので、その点でもZoffは一歩遅れています。
価格は、両者ともフレーム+レンズのセット価格で5,500円からスタートします。標準レンズでは、Zoffは、球面設計のレンズで紫外線約94%カット、JINSは非球面設計のレンズで紫外線99%カット。JINSは度数が強い人でも、追加料金なしで薄型レンズを選べます。となると、レンズの性能&値段のバランスをみてもJINSのほうがよさそうです。
王道の視力を矯正する眼鏡では、どうも分が悪いZoffですが、上場時にアピールしたのはサングラスでの成長です。地球温暖化で夏の日差しが強くなっていること、目の健康意識への高まりからサングラスを愛用する人が増えています。昔ほど、サングラスをしている=不審な人といった印象が薄れてきたのも追い風です。わたし自身も1年のうち7割くらいの期間で、サングラスを着用しています。その日のファッションに合わせて、サングラスを替える人も多いのではないでしょうか?
Zoffでは、45種類のサングラス用のカラーレンズを揃え、2024年7月19日には、銀座にサングラス専門店をオープンしています。25年の春入社の内定式では、内定者120人全員が、サングラスをかけて記念撮影し、話題となりました。ライバルJINSにサングラスで追いつくことができるかどうか、注目です。
上位3社で投資対象として魅力的なのは?
では、眼鏡企業上位3社を比べた場合、投資対象としていちばん魅力的なのはどの企業か考えてみましょう。足元の業績を比較してみます。
インターメスティック(Zoff)の24年12月期の予想は、売上高43,489(百万円)、前年比+9.1%増、営業利益4,206(百万円)、前年比+20.3%です。予想値での営業利益率は、9.67%。
一方、ジンズHDの25年8月期予想は、売上高90,100(百万円)、前年比+8.6%増、営業利益8,500(百万円)、前年比+8.5%です。予想値での営業利益率は、9.43%。前年比での成長率を比べると、インターメスティックのほうが魅力的に見えます。
ちなみに株価の割安性をはかるPERは、ジンズが25.7倍、インターメスティックは22倍(どちらも10月22日現在)で、インターメスティックのほうが割安感はあります。ただ、インターメスティックは、上場して間もないので、株価の方向性は見えません。
画像:Trading Viewより
ジンズHDは、2021年後半から、長く続いていた下降トレンドが下げ止まり、2024年の4月から上昇トレンドに転換したように見えます。テクニカルだけで見れば、かなり魅力的なチャートです。
じつはジンズHDは、10月11日に24年8月期の本決算発表を行い、その翌営業日15日には、ストップ高となりました。着地した24年8月期の営業利益が7,836(百万円)で、当初の予想6,300(百万円)に対して24.4%も上振れて着地したこと、配当金を45円から61円に修正したことが好感されたようです。
国内事業では、快適でストレスフリーなかけ心地とデザイン性を兼ね備えた“おうち時間に着替えるメガネ”「JINS HOME」等が好評を博したことや夏季にかけて、紫外線や光によって色が変わる可視光調光レンズ等のオプションレンズやサングラスといった季節性商品への需要が増え、単価が上昇したことにより、売上高は前年比で14.5%増収しています。海外売上は、アジア地域はイマイチですが、アメリカでの既存店売り上げが好調で、前年比9.3%増収となっています。
さて、残りの1社、Japan Eyewear Holdingsですが、こちらは、ほかの2社と毛色が違います。眼鏡の産地、福井県鯖江市を拠点とした「金子眼鏡」と「フォーナインズ」を展開。職人が作る質の高い眼鏡は、1本10万円程度と高額ですが、とくに訪日客からの人気が高く業績を伸ばしています。
足元進行中の25年1月期の売上高は16,000(百万円)、前年比+18.2%、営業利益4,600(百万円)、前年比+24.3%で、2023年11月の上場以来、連続増収増益となっています。以前、こちらの連載でお伝えしたことありますが、わたしは、金子眼鏡のサングラスを愛用しており、その品質のよさは体感済み。次もまた買うなら金子眼鏡で、と思っています。
金子眼鏡を買う前は、JINSのサングラスを愛用していましたが、一度、高級なものを使うと、その後、ランクダウンするのはなかなか抵抗があります。わたしのようにJINSやzoffを卒業して、金子眼鏡へと移る人も一定数いそうです。
このように、眼鏡業界は、低価格帯店舗と、高価格帯店舗にぱっきり2分化されています。いずれも好調でありますが、勢いづいているのは低価格帯グループです。いっときの円安が落ち着き、やや円高に触れていることでインバウンド需要の加熱が落ち着いています。また、国内でのインフレ疲れにより節約志向が台頭していることで、高価格帯チームの勢いはやや鈍化しております。
画像:Trading Viewより
上場して以来、Japan Eyewear Holdingsは、右肩上がりを続けていましたが、9月に入ってからは、一方通行で下落しています。やはり投資家は、成長の鈍化を懸念しているのでしょう。ちなみにJapan Eyewear Holdingsの現在のPERは23.9倍ですから、ほか2社とはそれほど大きく変わりません。
以上のことより、消費者としてはJapan Eyewear Holdings推しですが、投資対象として見た場合は、いったんピークをつけた感じがするので、下落が止まり、反転して上昇トレンドに転換するまで待ちの姿勢で。
上場ほやほやのインターメスティックは、しばらくはボラティリティ(価格の変動幅)が高いと予想されるので、半年から1年間、業績の推移を見合わせながら継続ウォッチします。現状、いちばん投資対象として魅力的なのは、株価が堅調に動いているJINSです。新年度が始まったばかりですが、第一四半期決算で、スタートダッシュのよさが確認できれば、さらに株価は一段上を目指すようなシナリオを描いています。
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(藤川 里絵)
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