控除可能な範囲を超えるとただの支出になる…? 住宅ローン控除、iDeCo、ふるさと納税、税制優遇制度を併用する場合の優先順位
MONEYPLUS / 2024年11月1日 11時30分
控除可能な範囲を超えるとただの支出になる…? 住宅ローン控除、iDeCo、ふるさと納税、税制優遇制度を併用する場合の優先順位
将来に対する不安や、老後への備えの必要性が訴えられる中、「お金を増やす」ことが注目されがちですが、「お金を守る」ことも大事な視点です。
「お金を守る」ためにできることのひとつが、税負担を軽減することです。そのために利用できる代表的な税制優遇制度として、住宅ローン控除、iDeCo、ふるさと納税があります。
これらの制度は併用が可能ですが、そのバランスに頭を悩ませている方も少なくありません。それぞれの制度の活用バランスは人によって異なりますが、「今年こそお得に活用したい!」と思っている方は是非この記事を参考にしてくださいね。
控除の仕組みの違いで変わる節税効果
税制優遇制度をよりお得に使うためには、まず控除の仕組みの理解が必要です。少し難しい内容になりますが、頑張ってついてきてくださいね。
税金の控除には、「所得控除」と「税額控除」の2つの仕組みがあります。控除は所得税と住民税の両方、またはいずれか片方において受けることができます。
所得控除は、収入から差し引ける控除のことです。納める税金を計算するには、額面年収や事業所得にそのまま税率をかけて出すわけではありません。社会保険料や生命保険料など、収入を得て生活をしていくために必要不可欠な費用については、生きていくための必要経費として捉え、収入から差し引くことができます。そして、残った収入=課税所得に、所得額に応じた税率をかけて、税額を算出する仕組みになっています。
たとえば年収500万円、所得控除の金額が合計100万円だとすると、差し引いた残りの400万円(課税所得)に対して税金がかかります。所得控除の金額が多いほど課税所得が下がるので、支払う税金が軽減されます。
税額控除は、計算された税金そのものを直接減らすための制度です。課税所得に税率をかけて求めた税額から、直接差し引きます。
所得控除が「税金のかかる金額(課税所得)」を減らすのに対して、税額控除は「支払うべき税金の額」そのものから直接差し引くので、税額控除の方が税金を軽減する効果が高いのです。この代表例が住宅ローン控除です。
代表的な控除ごとの仕組みを表にまとめました。
※1.前年分の所得税から控除しきれなかった場合は、翌年度の住民税から控除(最高9.75万円)
※2.ワンストップ特例制度を利用した場合は住民税の税額控除のみ対象
控除の仕組みと効果の違いを理解することが、各税制優遇制度を利用する際の優先順位と、利用バランスを考える際に役立ちます。
住宅ローン控除の利用が最優先
住宅ローン控除は、所得税において税額控除を受けることができます。税額控除の方が税負担の軽減効果が高いことから、最優先すべきは住宅ローン控除です。
住宅ローン控除可能額は、「年末時点の住宅ローン残高 × 0.7%」で求められます。ただし、住宅の環境性能、入居年月、子育て世帯・若者夫婦世帯に該当するかどうか(令和6年に入居する場合)で、異なる控除上限金額が設けられています。
住宅ローン控除可能額より所得税額が少ない場合、控除可能額すべてを差し引くことができません。本来払うべき所得税や住民税の金額以上に引くことはできませんので、さらにiDeCoやふるさと納税を利用したとしても、控除を受けることができません。住宅ローン控除によって、払うべき所得税額がほぼなくなる方は、他の税制優遇制度の利用は控えておいた方が無難でしょう。
ふるさと納税の利用は一番最後に検討
iDeCoとふるさと納税を併用する場合は、iDeCoを優先します。
iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象となりますが、ふるさと納税は直接的に節税できる制度ではないからです。
iDeCoは老後の資産形成を目的として作られた私的年金制度です。税制メリットを受けながら資産形成ができるため、より効率的にお金を貯めることができます。掛金を増やせば節税効果は増えますが、制度を利用する目的は老後に向けた資産形成であり、節税のためではありません。老後資金準備の目標や、現在の家計状況に合わせて、掛金の設定額を決めましょう。
ふるさと納税は、希望する自治体へ寄付として納税することにより、自己負担となる2,000円を除いた金額が、本来支払う所得税および住民税より控除される仕組みです。控除上限額は、収入と家族構成によって変わります。支払う税金自体を減らせるわけではありませんが、寄付のお礼として地産品の食材や日用品などの返礼品が受け取れることから、生活費の節約につながる効果があります。
住宅ローン控除やiDeCoなど、受けられる控除をすべて差し引いて、まだ支払うべき所得税および住民税がある方は、ふるさと納税も利用することで、さらにお得な効果を得ることができます。
ただし、控除可能な範囲を超えて利用してしまうと、超えた分は差し引くことができず、追加の支出になってしまいます。ふるさと納税をする前にシミュレーションで利用可能額を確認することが必須です。
詳細シミュレーションで控除範囲を確認
iDeCoは利用する金融機関のウェブサイトにて、拠出可能額と所得控除による節税額のシミュレーションをすることができます。
節税額は、所得税と住民税を合算した金額で出てくるサイトが多いようですが、 現在支払っている所得税および住民税を合算した金額の範囲内であれば、iDeCoの掛金を拠出した分すべて控除が受けられる、と判断することができます。
住宅ローン控除利用中の方は、住宅ローン控除適用後の所得税額と住民税額を元に判断してください。
ふるさと納税ポータルサイトには、ふるさと納税利用可能額を簡単に知ることができる簡易シミュレーションがあります。他の税制優遇制度とふるさと納税を併用する方は、簡易バージョンではなく、必ず詳細シミュレーションで利用可能額を確認しましょう。
詳細シミュレーションでは、住宅ローン控除、iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)など、適応される控除すべての利用状況を反映させた上で、ふるさと納税利用可能額を知ることができるので安心です。ただしフリーランスなど個人事業主の方は個別の計算が必要となります。
また、各税制優遇制度を利用するためには、年末調整や確定申告で利用申請することが必要です。利用する制度によって手続き方法が異なりますので、抜け漏れがないよう、毎年必要な手続きを行いましょう。
制度の活用バランスはライフプランでわかる
少しでも払う税金を減らせるなら、と利用できる制度を最大限利用したくなるかもしれませんが、節税することが本来の目的ではありません。お得になるのなら、と支出が増えることによる家計への影響も見逃せません。
本来の目的である、希望の住宅購入や老後に向けた資産形成などの計画を立てる上で欠かせないのがライフプランですが、税制優遇制度を利用するバランスを知るためにも有効です。
ライフプランは家計の収入と支出に関わる全体像を把握するものであり、その中に税金も含まれます。家計の全体像を捉えることで、最適な活用バランスが見えてきます。
制度の活用バランスは人それぞれです。制度を利用するメリットを理解した上で「お金を守る」視点を取り入れることで、さらに理想の将来のためのライフプランを最適化させていきましょう。
【監修】伊達有希子/ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)
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(伊藤寛子)
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