トランプ氏当選で注目のセクターと懸念点は?新政権発足から100日間は「ハネムーン期間」
MONEYPLUS / 2024年11月9日 7時30分
トランプ氏当選で注目のセクターと懸念点は?新政権発足から100日間は「ハネムーン期間」
今週は米大統領選挙でした。
5日投開票の米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が勝利宣言。「再び偉大な国に」と述べました。米大統領が返り咲くのは132年ぶり。大統領は最長2期務めることが出来るため、トランプ氏はこの4年が最後ということになります。今回連邦議会選挙では共和党が上院での多数派となりました。
振り返りますと、現職だったバイデン氏が6月27日のトランプ前大統領とのテレビ討論会で精彩を欠いたこともあり、高齢であることの懸念が指摘されて党内から撤退を求める声が高まっているなか、7月に撤退を表明。その後、ハリス氏を後任候補として支持すると発表しました。異例の大統領選だったといえます。
接戦だったことで、「結果が出るまでに長引くのではないか」「裁判になるかも」という懸念がありました。ですがハリス氏が敗北宣言をしたことで、揉めることもなく想定よりも早く結果が確定したことや、トランプ政権の減税や規制緩和などへの制作への期待感から大きく買われ、6日の米市場は急騰。ダウ平均が前日比1508ドル05セント高の4万3729ドル93セントと大幅続伸し、10月18日以来の過去最高値を更新となるなど主要3指数が最高値を更新しました。
米大統領選挙は歴史的に、投資家にとって重要な相場の変動要因とされており、その結果は株価に大きな影響を与える傾向があります。今後の過去の大統領選における株価の動きと相場アノマリーを中心に、投資家として取るべき行動を解説します。
ハネムーン期間
米大統領選の年は、政策の不確実性が高まることから株式市場に影響を及ぼすことが多いと言われています。選挙直前や直後の動きは、当選候補者の経済政策や財政政策の影響を予測しようとする投資家心理によって左右されるため、相場が上昇したり下落したりする局面が見られますが、政策への期待から年末高になりやすいと言われます。大統領選にまつわる相場の経験則はたくさんありますが、「ハネムーン期間」をご存知でしょうか?
ハネムーン期間とは、政権交代後、新政権発足からの最初の100日間を指します。新大統領の就任直後は比較的高い支持率と安定した市場環境が続く時期ですので、この期間中は、投資家や市場が新しい政策に期待を抱くため、株価が安定または上昇しやすくなる傾向があります。例年11月・12月は「クリスマスラリー」と言われ、統計的に株価が上がりやすい月ということも影響しているかもしれません。
選挙サイクル理論
年単位で見る「選挙サイクル理論」というのもあります。
4年に1度の大統領選に関連し就任した年(今回は2024年)とその翌年は政策期待で上昇しがち、2年目は冴えない値動きとなり、選挙前年がもっとも株価が上昇しやすいという理論です。大統領が再選を目指すことで選挙前年は景気刺激策を行う傾向があるため、その結果として株価が上がることが多いとされています。今回は米国が利下げ方向に動き始めてアメリカは金融相場に入っていることなどもあり足元は上げ目線で見られるのではないでしょうか。
過去の大統領選挙での株価動向を振り返ると、1970年代の米株式市場は長く低迷しており、「株式の死」と呼ばれていましたが、1980年にレーガン大統領当選後、減税政策への期待から株価は大幅に上昇し、「レーガン相場」と呼ばれました。
金融危機の最中に行われた2008年の選挙では、オバマ大統領が勝利すると、景気回復への期待が高まり、金融緩和政策も相まって株価は上昇基調となりました。そして前回トランプ氏が勝利した2016年の選挙では、トランプ大統領の経済政策(法人税減税・規制緩和)への期待が高まり、株価は大幅な上昇を見せました。
トランプ氏当選で注目は?
次に、注目ポイントや注目セクターなどをお伝えします。
まず政策発表を注視することが重要です。特にインフラ投資や増減税、規制強化・緩和などの政策は、関連企業の業績や投資環境を左右します。例えば、法人税減税が行われると企業利益が増え、株価上昇に寄与しやすくなります。一方、増税や環境規制の強化などは影響を受ける産業にマイナスの影響を与えることがあります。今回は規制緩和や企業支援策で恩恵を受ける金融、エネルギー、製造業セクターに注目すると良いでしょう。利下げもあるため住宅も恩恵を受けそうです。日本ではクボタ(6326)や信越科学工業(4063)などが関連銘柄として挙げられます。
防衛関連銘柄もすでに動いており、日本でも三菱重工やIHIなどが動意付き(上昇の気配を見せ)ましたが、トランプ氏は国の戦略的準備資産にするとビットコイン関連イベント「Bitcoin 2024」で発言するなど暗号資産にフレンドリーであるため、すでにビットコインをはじめとする暗号資産は上昇しています。日本株でもビットコイン(BTC)を主要な財務資産の選択肢としているメタプラネット(3350)はストップ高に。
米個別株では大統領選でトランプ氏を全面支援していたイーロン・マスク氏のテスラは大きく動いていますね。トランプ氏のSNSの運営を手掛けるトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループも買われました。
考えられるリスクは?
また懸念も押さえておきましょう。環境問題にはネガティブでGX(グリーントラストフォーメーション)系は逆風であると考えます。
関税の懸念もあります。高関税を課してきた中国製品には60%を課すとしており、日本製も含めたすべての輸入品に10〜20%の関税をかけると主張。日本市場も影響を受けるでしょう。特に中国との関係で貿易摩擦が再燃する場合、輸出企業やグローバル市場が影響を受けるため、リスクを分散する工夫が必要です。
トランプ政権の影響で金利が変動する可能性もあるため、利上げやドル高の影響を考慮し、リスクヘッジや分散投資の重要性が増します。政策による短期的な市場の変動は避けられませんのでその値動きを利益にする短期的な戦略と、長期的な戦略は分ける必要があるでしょう。
長期的な資産成長のためには基本的な分散投資が重要です。セクター分散やディフェンシブ銘柄の活用、相場のボラティリティ対策としてのドルコスト平均法なども有効な手段です。政策と市場の反応を冷静に見極め、適応力を高めることが、安定した投資判断につながります。
米大統領選後にはドル相場の変動が大きくなることがあり、ドル高・ドル安がどの程度の影響を及ぼすかも重要な視点です。新大統領の対外政策や貿易政策がドルに与える影響を注視し、輸出企業や外国資産に投資する場合は為替リスクへの対策を講じることが推奨されます。
この記事が皆様の投資に少しでも参考になっていれば幸いです。
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(三井 智映子)
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