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年金を繰り上げ受給して新NISAで運用するのは得なのか?「70歳繰り下げ受給」を上回るために必要な運用利回りは

MONEYPLUS / 2024年11月18日 18時0分

年金を繰り上げ受給して新NISAで運用するのは得なのか?「70歳繰り下げ受給」を上回るために必要な運用利回りは

年金を繰り上げ受給して新NISAで運用するのは得なのか?「70歳繰り下げ受給」を上回るために必要な運用利回りは

SNSをはじめネット上では、「60歳で年金を受け取って新NISA投資に回したほうがよい」という意見が散見されます。実際、直近20年間のS&P500の運用利回りは円ベースで年9%前後なので、こういった意見が出てくるのも仕方がないのかもしれません。

年金は原則65歳から受け取り開始ですが、60歳~64歳で受給する「繰り上げ受給」、66歳〜75歳で受給する「繰り下げ受給」を選択することができます。

繰り上げ受給は、1カ月早めるごとに0.4%ずつ受給率が減少し、60歳受給は受給率76%(24%減額)となります。繰り下げ受給は、1カ月繰り下げるごとに0.7%ずつ受給率が増加し、75歳受給は受給率184%(84%増額)となります。一度、受給を開始すると、途中でこの増減率を変更することはできません。

繰り下げ受給は、年金を増額するための運用リスクを一切取ることなく、増やせるのが大きなメリットです。繰り下げによる増額分を超えるには、どれくらいリスクを取れば良いのでしょうか。一緒に考えていきたいと思います。


60歳受給、65歳受給、70歳受給の手取り年金を計算

今回は、「60歳受給&全額NISA投資」「65歳受給&全額NISA投資」「70歳受給」の比較を行います。

年金受け取り時には税金・社会保険料がかかるので考慮し、受け取った年金額の投資はすべて新NISAで行うものとします。

ただし、寿命が尽きるまで使わずに溜め込んでいても仕方ないので、年金を投資に回す時期は70歳までとし、以降は「年金+運用取り崩し」で生活することとします。運用利率は生涯を通じて同じとして試算しました。

【前提条件】
・65歳時点の年金額は年180万円(月額15万円)
・寿命90歳
・独身、扶養親族なし、東京都在住
・所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみ

<60歳、65歳、70歳の年金手取り額>

画像:「定年後のお金と生き方大全」(晋遊舎)より

60歳受給の税金・社会保険料の割合が65歳未満と65歳以上で分かれているのは、公的年金等控除が要因です。公的年金等控除は、65歳未満か65歳以上かで適用される金額が異なります。この差が年間手取り額の差につながっています。

<「70繰り下げ受給」VS「60歳・65歳年金受給&運用取り崩し」の検証>
画像:「定年後のお金と生き方大全」(晋遊舎)より

70歳繰り下げ受給の年間手取りは217万円もらえる計算ですので、「60歳受給&全額NISA投資」「65歳受給&全額NISA投資」した場合において、70歳以降の年金&運用取り崩しが年217万円を超える運用利率を計算すればいいということになります。

年金+運用取り崩しが、70歳繰り下げ受給を超えるための運用利率は?

試算結果は次のとおりです。なお、年金は2ヶ月に1度、2ヶ月分が振り込まれるので年6回に分けて投資をすることも可能ですが、年複利で計算しています。

<「70歳繰り下げ受給」の手取り収入を上回るために必要な運用利回り>

画像:「定年後のお金と生き方大全」(晋遊舎)より

年2.8%で運用できれば、70歳からの繰り下げ受給と同等の水準になることがわかりました。つまり、年2.8%を超えた運用ができるならば、「年金受給&新NISA投資」が得ということになります。

なお、税金・社会保険料は他の所得・年齢・家族構成・お住まいによって変わりますので、運用利率はあくまでも参考情報としてご確認ください。

実際、直近20年間のS&P500の運用利回りは円ベースで年9%前後なのだから、「年金受給&新NISA投資」した方がいいという結論を急ぐのは少々お待ちください。

運用利回りというのは、配当金や分配金がない場合、スタート(購入時)とエンド(売却時・計測時点)の価格だけで決まります。つまり、資産を一切取り崩さないのであれば、運用中に暴落や下落相場があったとしても途中の内容は関係がなく、最初と最後の価格を元にリターンを計算し、それを年平均した結果に過ぎません。

投資である以上、預貯金や債券の金利のように、毎年2.8%が確定ではないということに注意が必要です。これは、資産を取り崩すフェーズでは重大な要素となります。運用利回りが同じでも、収益率の順序によっては、「定額取り崩し」による資産残高の減りは、想定以上に早くなります。

資産を取り崩すフェーズでは、「収益率の順序リスク」に注意

下の2つのグラフは、70歳時点の資産1393万円を、年2.7%で運用しながら年91万円を取り崩していった場合の資産残高の推移を示したものです。

「1年目:10%」などとあるのが、毎年の運用成果(収益率)です。ただし、パターン①とパターン②の収益率が登場する順序は逆にしてあります。

<定額取り崩しによる資産残高の変化>

画像:(株)Money&You作成

パターン①もパターン②も、10年間の運用利回りは同じ年2.7%なのですが、10年後の資産額に268万円もの差が生じています。

このようになる理由は、前半の元本が大きい時期にあります。パターン①のように、元本が大きい時期に収益率が高い場合は、91万円を取り崩しても元本が元通りどころか、それ以上に回復しています。一方で、パターン②のように元本が大きい時期に収益率が低かったり、マイナスだったりすると、元本が大きく減ってしまいます。

パターン②の場合、後半に収益率が高くなりますが、すでに元本が大きく減ってしまったあとに収益率が多少高くなったところで、それほど資産は回復しません。その結果が268万円の差につながっているのです。

つまり、毎年の収益率がどんな順番でやってくるかによって、資産残高が大きく変わってしまうというわけです。これを「収益率の順序リスク(配列リスク)」と呼ばれます。

資産形成期の時は気にしなくてよかったこの「収益率の順序リスク(配列リスク)」は、運用しながら取り崩すときには注意しなければなりません。想定以上に運用ができないときや、暴落や下落相場のときのリスクは大きいことを示しています。

資産運用は味方につけた方がいいものの、年金を原資にはしないほうがベター

年金を受給しなくても生活できるお金がすでにあり、上記の運用利率以上に必ず増やせる自信があるのであれば、60歳、65歳で受け取りを開始して、その年金を投資に回す手もあるかもしれません。

しかし、年金を受給しなくても生活できるようなお金がない場合は、この選択をしない方が良いでしょう。運用で失敗したら悲惨です。人生一度きり。60歳で繰り上げ受給して、運用で失敗した場合は、60歳時点で確定した年金額で死ぬまで生活しなければなりません。運用しながら取り崩すフェーズでも、常にマーケットにハラハラしながら日々過ごすことになるでしょう。「収益率の順序リスク(配列リスク)」にも注意が必要です。

今一度考えたいのは、年金の繰り下げで増える増額率は「確定」であることです。つまり、価格変動リスクがないということ。マーケットが変動しても、年金額が減ることはなく、生涯にわたって、リスク無しで受け取れるのは大きいのではないでしょうか。

年金は賦課方式といって、年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意するので、インフレにもある程度対応できる面もあります。そう考えると、年金を投資に回すのではなく、年金の繰り下げを選んだ方がベターだと考えています。

もちろん、「運用をするな」ということではありません。年金を原資にするのではなく、余裕資金で投資を行うことで、インフレに対抗しながら、年金の上乗せを作ることが期待できるでしょう。

みなさんの選択が正解か不正解かは寿命をまっとうしたときにしかわかりません。年金があくまでも「長生き保険」であることも踏まえて、皆様の納得のいく選択をしてもらえればと思います。

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監修:頼藤太希
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(頼藤太希)

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