自社株買い、増資、売り出しは投資チャンスになりやすい? 株価に与える影響
MONEYPLUS / 2024年12月5日 7時30分
自社株買い、増資、売り出しは投資チャンスになりやすい? 株価に与える影響
株価は、長期的に見れば、利益の成長に比例します。それを信じるならば、投資家はその会社の利益の変動のみを注視すればよいことになります。ところが、そうは簡単にいかないのが株式投資のむずかしさ。短期的には、さまざまな雑音によって上げたり下げたりしますので、その理由が分からない投資家は、右往左往します。
最初に申し上げておくと、必ずしも株価の上げ下げに確かな理由があるわけではありません。とくに材料がなくても、大きく動くこともあり、そんなときは「大口投資家の買い(もしくは売り)が入った」などと言われますが、真偽のほどは分かりません。
そんな中、業績とは関係ないものの、ほぼ確実に株価に影響を与える材料として、受給の変化があります。株価は、需要と供給で形成されていくので、需要が供給より高まれば株価は上昇し、需要が供給を下回れば株価は下落します。
具体的には、自社株買い、増資、売り出しです。
自社株買いが株価に及ぼす影響
2024年は、上場企業の自社株買いが非常に活発でした。4月以降に設定された自社株取得枠は10兆円を超え、過去最大となっています。自社株買いを発表した企業の株は、翌日、ほぼ例外なく上昇します。自社株買いとは、企業が自社の株式を市場から買い戻す行為を指します。自社株買いを行うと、市場に出回る株式の数が減少するため、需要>供給となり、結果的に株価の上昇をもたらします。
画像:サンケン電気「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ」
直近では、11月29日にサンケン電気(6707)が、発行株式総数の24.8%にあたる6,000,000株を上限に自社株買いを行うと発表しました。これが実行されると、市場から6,000,000株の株式が減少し、かなり需給がタイトになります。発表翌日の株価は、前日比で13.4%上昇とセオリー通りの反応でした。一般的には、発行株式数の2%程度が多いので、24.8%というのは異例の多さです。
自社株買いの場合、翌日の株価は上昇しますが、持続性があるかどうかは分かりません。というのも、表明通り自社株買いをするとは限らず、実際にはしない場合もあるからです。
たとえばサンケン電気の場合、自社株買いの総額上限は300億円ですから、平均取得株価5,000円以下でないと6,000,000株の上限数を買うことができません。株価はすでに6,000円(12月3日現在)を超えていますので、この調子で上昇してしまうと、上限に届かないまま自社株買い終了となってしまいます。
つまり、自社株買いを発表した企業の株の上昇は、短期的な反応で、その後の持続は保証されないと言えます。
増資が株価に与える影響
次に、増資を考えてみます。増資は、企業が資金調達をするため、あらたに株式を発行することです。自社株買いとは逆に、需要<供給となるため、発表した翌日は、株価が大きく下落することがほとんどです。
画像:GENDA「海外募集による新株式発行及び株式の海外売出しに係る 発行価格及び売出価格等の決定に関するお知らせ」
アミューズメント施設「GiGO」を運営するGENDA(9166)は、7月16日に5,180,000株の増資を発表しました。株価は、翌日2.5%下落、翌々日は6.5%下落と二日間で9%も下落しています。ところが、その後、株価は回復し、11月8日には、上場来高値を更新しました。あとから振り返ると、増資による短期的な株価の下落は、ぜっこうの買い場だったと言えます。
では、増資の発表で下落したときは、いつでも買っていいかというとそうではありません。増資による資金調達が、今後、企業の成長に寄与すると考えられる場合にのみ、投資を検討するに値します。資金繰りに行き詰まり、借入金の返済のために増資をする場合は、財務悪化を一時的に食い止めるだけなので、株価の回復は望めません。
増資を発表した際には、その理由と資金の使い道を必ず確認しましょう。GENDAの場合は、その後、公募増資に関する説明を丁寧に行ったことが安心感となり、株価反転のきっかけとなりました。
売り出しが株価に与える影響
最後に、売り出しの場合を考えます。売り出しというのは、既存の株主が、保有する株式を一般の投資家に向けて販売することです。この場合は、増資とはちがって発行株数が増えるわけではありませんが、今まで株主が抱え込んでいた株が市場に出回ることになるので、受給<供給となり、発表直後の株価はネガティブに反応します。
画像:サンリオ「株式の売出しに関するお知らせ」
11月26日に、サンリオ(8136)が、25,871,800株の売り出しを発表しました。これは自社株を除いた発行済み株式数の12.6%にあたるため、受給懸念が大きく、翌日の株価は14.4%と大きく下落。じつは、発表当日の取引時間中に上場来高値をつけていたため、ショックが大きかったと思われます。
しかし、その翌日から、すぐに株価は反転し、売り出し発表の4営業日後の12月3日には、上場来高値を奪回しました。結果、売り出し発表による下落は、絶好の買いチャンスでした。
サンリオの売り出しの理由は、政策保有株を縮滅させ、流動性を向上させるためです。それにより、海外投資家の取り込みを図ることも視野に入れており、野心的な売り出しで、つかさず投資家たちが、買い向かったのも納得です。
このように流動する株式の数が変化するニュースに株価は敏感に反応します。しかし、翌日の動きは短期的な反応で、その後は逆の動きをすることが多いため、投資チャンスになりやすいのも事実です。おそらく2025年もこうしたニュースは多いと思われます。こういった材料に、瞬時に反応できるよう、日頃からニュースにアンテナを立てておくとよいですね。
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(藤川 里絵)
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