年末年始にやっておきたい新旧【NISA】の見直し、適切なメンテナンスをする方法
MONEYPLUS / 2024年12月17日 7時30分
年末年始にやっておきたい新旧【NISA】の見直し、適切なメンテナンスをする方法
今年も残すところあとわずかとなりました。年末年始は長いお休みを取られる方も多いかも知れませんが、少し時間に余裕がある今だからこそやっておきたい「NISAに関する見直しのポイント」を旧NISAと新NISAに分けてご紹介します。
旧NISAと新NISAは別モノ
2023年末で終了した旧NISAですが、そのまま放置している方もいらっしゃるようです。中には、「自動的に新NISAに切り替わっている」と勘違いされている方も少なくありません。旧NISAはあくまでも非課税期間が5年あるいは20年の限定ですから、適切な管理が重要です。
例えば、旧「つみたてNISA」でオルカンタイプの投資信託を毎月3万円ずつ積立てていた人の場合、2024年1月には新NISA口座が設定され、これまでと同じ投資信託を月3万ずつ「つみたて投資枠」で買い付けが実行されています。そのため、「自動的に新NISAに切り替わった」と思っている方もいるようです。
しかし注意しなければならないのは、2023年と2024年で買い付けた投資信託の非課税期間はまったく異なるという点です。2023年までに買い付けた投資信託はそれぞれの買い付けした年から20年間が非課税期間なのでその期間内に売却をすることが原則です。その期間を過ぎて売却すると、非課税期間終了後に得た利益については20.315%の税金が徴収されます。
2024年に買い付けした投資信託は「新NISA」ですから非課税期間は無期限です。20年間という縛りがないので、ご自身の必要なタイミングで売却します。
もし意識せずに新NISAでのつみたてが開始されていた方の場合、毎月の積立額は再考したいものです。旧つみたてNISAの投資可能額は年間40万円でしたが、新NISAのつみたて投資枠は年間120万円、同時に成長投資枠の年間240万円も利用可能です。積立額を増額したいのであれば、この機会に手続きを済ませておきましょう。
旧「一般NISA」で運用をしていた方の非課税期間は5年間ですから、2020年に買い付けした株や投資信託はこの年末で非課税期間が終了します。何の手続きも行わなければそのまま課税口座に移管されてしまいますので、今後の利益には課税されていきます。
実際、2019年に購入した株や投資信託は2023年末でその非課税期間を終えています。筆者のもとにご相談にいらした方の中には、「自動的に新NISAに移る物だと勘違いして」そのまま放置しており、気がついたら課税口座に移っていたという方がいらっしゃいました。
まず再認識していただきたい重要なポイントとして、「旧NISAと新NISAは別モノ」という点をお伝えしたいと思います。特に非課税期間が5年と短い一般NISAの場合、毎年その非課税期間が終了していきますので、しっかり期間の管理を行う必要があります。
例えば、2020年にA投資信託を120万円で購入したとしましょう。2024年末で非課税期間が終了しますがその時点での価額が200万円に値上がりしていたとしましょう。非課税メリットを享受してここで売却して投資を終了しても結構です。一方継続保有を希望する場合は、年内にその投資信託を一旦売って現金にし、年明けに新NISAの成長投資枠で同じ投資信託を買い戻します。
よく株主優待あるいは配当の関係で年末ぎりぎりまで株を保有しておきたいという方がいらっしゃいますが、その場合は1月に売って、買い戻してということをしても結構です。ただし2024年末時点の値段で旧NISAから売却され、その値段で特定口座にて買い付けされているので、その場合は特定口座に移った商品を売却し、新NISAの成長投資枠で買い付けするという段取りになります。もちろん特定口座にて得られた利益には20.315%の税金がかかります。
2024年末に値下がりしている場合は?
では、2024年末の段階で値下がりしているケースはどうでしょうか?
先ほどと同様2020年にA投資信託を120万円で購入したケースで考えます。今度は年末に100万円と値下がりしていたとしましょう。考え方としては、非課税期間が終了するわけですから、売却して終了するのが原則です。残念ながら利益がでなかったのでNISAのメリットを得ることができなかったとなります。
この際なにもせずに放置していると、前述した通り特定口座にその投資信託が移されることになるのですが、このとき下がった値段が特定口座での取得価格になるという点には注意が必要です。つまりこのケースであれば特定口座での取得価格は100万円です。
では、特定口座に移された投資信託が130万円に値上がったとします。ご本人としては120万円で買ったものが130万円になったので10万円の利益と考えるかも知れませんが、このときの利益は30万円です。なぜならば、特定口座での取得価格は100万円だからです。特定口座は課税口座ですから、この30万円の利益については20.315%である60,945円が差し引かれ手取りは239,055円です。
もし旧NISAでの非課税期間が終了した時点で価格が下がっていても継続保有をしたいという場合は、新NISAの成長投資枠を利用して買い戻す方が良いでしょう。先ほどの例であれば、新NISAの2024年枠がまだ余っているのであれば、年内に売却と買い付けを行いますし、今年の枠を使い切っている場合は、旧NISAの非課税期間内に売却して現金で置いておいて、年明けに新NISAの成長投資枠で買い戻すのが良いのではないかと考えます。
新NISAで投資デビューという方は、この年末年始にぜひ振り返りをしてみましょう。まず現時点での残高を記録します。できれば銀行の預金口座も含めご自身の全財産がいくらなのか確認しましょう。そして今後は毎年同じ時期にこの記録を継続してつけていきます。すると、「我が家」の資産が着実に増えているのか、目標に向かっているのかを目視することができます。
私たちは、口座毎に残高を見ることはあっても、全体を見ることはあまりありません。ましてやそれらの残高の記録を毎年継続している方は本当に少ないものです。資産全体を記録することを今後習慣にしていただくと良いと思います。
資産のリバランス
全体が俯瞰できたら、資産全体の「リバランス」をします。普通預金は普段の生活に必要なお金を置く場所ですから、日常生活費の3ヶ月くらいあれば充分でしょう。「なにかあったときに」と全財産をすべて普通預金に置いておく人もいますが、合理的とはいえません。
次に今後5年以内にまとまったお金を使うライフイベントがないのか考えてみます。お子さんの受験、住宅に関する支出、家族での旅行など、いつ、いくらお金が必要になるのかを記載します。
支出する金額とタイミングが分ったうえで、適切な金融商品をセレクトします。ネット銀行の定期預金、個人向け国債は、中期的な目的のお金を置いておく場所として適切です。
5年以上先の目的については、NISAを用いて積立てていきます。そして老後資金はiDeCoを用いて積立てていきます。年に1回ご自身のお金を整理することで、予定通り資金が増えているのか、もう少し積立に回せるお金がないかをチェックします。ねんきん定期便を見ながら、公的年金の状態も確認したうえで、投資の目的が適切かまで考えられると理想的です。
最後に暮らしを守るお金も見直します。現在の我が家のリスクに見合った保険なのか、一覧にして確認しましょう。特に家族が増えた、転職したときなどは、国からの保障も変化しているのでそれに合わせた民間保険の手当が必要になります。万が一の事態に遭遇すると、予定通りの資産形成もできなくなるので、やはり適切な保険で備えることも大切です。
投資商品のおさらいをする
さらに投資している商品のこれまでの値動きをおさらいしましょう。可能であれば運用会社などのウェブサイトに掲載されている運用報告書や月報といったものを遡って読んでみるのがお勧めです。8月の市場の混乱時にはどのような情報が掲載されていますか? 今年はいくつか選挙も行われましたが、それらの社会的イベントに関するコメントなどはありますか?
よくお客様から、「商品は入れ替えた方が良いのか?」と質問されることも多いのですが、積立の額の変更はしても商品の変更は頻繁に行わなくても良いと考えます。
しかし、ご自身の投資に対する考えが変ったときは商品の入れ替えも必要でしょう。例えば、「とりあえずオルカン」を購入してきたけれど、その後いろいろ学んだら他の投資先にも投資したいと考えるようになったというお話はご相談を受ける際によく聞きます。
例えば、MSCIをベンチマークとするインデックスファンドは世界の主立った株式会社すべてに投資をしているわけですが、中には戦争に用いられる物をつくったり環境にマイナスの影響を与える物を販売したりしている会社もあるといわれているので、もっと投資先を吟味したいとアクティブ運用の投資信託を検討したいなどという意向です。
あるいは、オルカンの投資信託はアメリカへの投資割合が50%程度と集中するので、ご自身の興味関心がある新興国に投資をする投資信託を追加でつみたて購入したいなどというお話もあります。オルカンのようにひとつのファンドで世界中に投資をする投資信託は便利ですが、投資先の比率を変更したい場合は別のファンドを追加投資することで全体の投資比率を調整しなければならないので、ご自身の方針が変った場合は全体としての見直しも必要です。
長期投資は「ほったらかし」でも良いといわれることが多いですが、それは市場の動きに一喜一憂しないという意味でほったらかしにしておいてということだと考えます。やはり適時ご自身のお金事情は確認しながら適切なメンテナンスは行っていきましょう。
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(山中 伸枝)
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