民間の医療保険「1入院の限度日数」は何日で設定するべき?
MONEYPLUS / 2024年12月17日 11時30分
民間の医療保険「1入院の限度日数」は何日で設定するべき?
病院の入院日数は短期化傾向にあります。医療保険も1回の入院日数限度が365日という商品もありましたが、120日、60日と実情に合わせて短期化傾向にあります。それでは、限度日数の設定は何日がいいのでしょうか。平均在院日数や入院が長期化する傷病のデータを基に解説します。
データで見る在院日数
入院の日数が前に比べ短くなっていると感じているひとは多いのではないでしょうか。手術の方法では、腹腔鏡による手術が増えており、患者の回復にかかる時間が短くなったこともひとつの原因でしょう。
厚生労働省で3年に1度行われる令和2年の「患者調査」をみると、退院患者の平均在院日数は32.3日です。施設の種類別にみた退院患者の平均在院日数の年次推移をグラフで見てみると、昭和62年から明らかに在院日数が減っていることがわかります。
画像:厚生労働省「令和2年患者調査」より抜粋
この日数は、各年の9月1日~30日に、全国の病院や一般診療所で退院した患者の在院日数を調べた結果です。病気の種類や年齢などすべての統計ですので、入院日数が短期化傾向にあるのは事実ですが、思ったより平均在院日数は多いことがわかります。
長期入院が必要な傷病は?
では、平均在院日数を増やしているのはどのような傷病なのでしょうか。下表は令和2年9月の傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数の表より、主だった傷病を抜粋し作表したものです。
どの年代でも長期入院が顕著なのは、精神疾患です。特に65歳以上の年齢では3年近く入院している計算です。
三大疾病と呼ばれるがん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患の中では、脳血管疾患が長期入院の傾向にあります。特に65歳以上の入院が長期化しているのは、リハビリも含めた入院となっているからでしょう。慢性腎臓病でも65歳以上の長期入院がみられます。高齢になると通院での透析治療が難しくなるケースが多くなるからではないでしょうか。
そして、見逃せないのが骨折です。若いうちは骨折をしてもギプス固定をし、通院で治療を行うことが多いですが、高齢になると入院治療となる場合が多いようです。骨折に限らず、整形外科での入院治療はリハビリも含め1ヵ月以上の入院は特別ではありません。
医療保険の上手なかけ方とは
データから読み解くと、入院期間が短くなっているからといって、1入院の限度額を短くしてしまうのは得策ではないことがわかります。
では、1入院の限度日数を増やすとどの程度保険料が変わるでしょうか。30歳男性、日額1万円の医療保険で1入院の限度額を試算してみました。
60日:3,170円
120日:3,580円
30日と60日では490円の差、80歳まで払い続けた場合294,000円の差額
60日と120日では410円の差、80歳まで払い続けた場合246,000円の差額
月にすると大きな保険料ではありませんが、80歳まで払い続けた総額で考えると大きな差が生まれます。平均在院日数の全体の平均は32.3日でしたから30日限度の選択でも、充分間に合うという考え方もできます。しかし、年代によっても在院日数には大きな差がありますので、60日、約2ヵ月の備えは必要ではないでしょうか。
では、ケガ以外の疾病に関して長期に渡る病気の備えはどうでしょうか。先ほどご紹介した平均在院日数のデータは、「退院時に何日入院していたか」のため1回の入院に関しては短い場合もあります。ですが、生活習慣病と呼ばれる完治が難しい病気や再発、併発の恐れがある病気では、一度退院した後に再入院の恐れがあります。
民間の医療保険では、退院後、次に再入院するまでの期間に取り決めがあります。もし、その期間内に入院があった場合、別の入院でも1入院とみなすことがあります。
例えば、1回目の入院が15日、1ヵ月後に再度20日入院することになれば、1入院とみなされることがあります。1入院の限度日数を30日にしておくと、5日分は支払われないことになってしまいます。入院と入院の間の期間は商品によって違いますので、加入している保険は何日なのか確認しておくことが必要です。
このように、入退院を繰返すおそれのある病気には、八大疾病と呼ばれる病気に多く見られます。
八大疾病とは、悪性新生物・脳血管疾患・心疾患・高血圧性疾患・糖尿病・腎臓疾患・肝臓疾患・膵臓疾患などです。このような病気に限り、1入院の制限をなくし、無制限に入院日額を支払う特約もあります。この特約を付帯すると長期の入院リスクに備えられるでしょう。
商品により、特定疾病、三大疾病など限定する病気の内容が違います。また、無制限ではなく、120日、180日というように、特別な病気だけ限度日数を延ばす商品もあります。すでに医療保険に加入しているひとは、今の保障内容がどのようになっているのかを確認してみましょう。
これから医療保険を検討するひとは、将来のこともよく考え、限度日数や長期入院に備える特約などを検討するといいでしょう。
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(寺田 紀代子)
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