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決算好調な「くら寿司」&「スシロー」、株価は明暗が分かれる結果に…要因は、株主優待と寿司ネタ?

MONEYPLUS / 2024年12月19日 7時30分

決算好調な「くら寿司」&「スシロー」、株価は明暗が分かれる結果に…要因は、株主優待と寿司ネタ?

決算好調な「くら寿司」&「スシロー」、株価は明暗が分かれる結果に…要因は、株主優待と寿司ネタ?

画像:くら寿司「2024年10月期決算短信〔日本基準〕(連結)

2024年12月11日、くら寿司(2695)が、2024年10月期の本決算発表を行いました。①売上高234,950(百万円)②前年比11.1%でこれは過去最高を更新です。③営業利益も5,699(百万円)、④前年比132%と、大幅な増益となっており、文句なしの着地。とくに売り上げの80%近くを占める国内が好調で、業績を押し上げています。

ところが、決算発表翌日には、株価は-15.8%と大きく下落しました。その理由は、ふたつあります。


株価が下落した要因とは

画像:くら寿司「2024年10月期決算短信〔日本基準〕(連結)

ひとつは、新年度予想である2025年10月期は、①売上高は243,000(百万円)、②前年比3.4%とかろうじて増収ですが、営業利益は、③5,000(百万円)、④前年比-12.3%と二桁の大幅減少となったことです。

ちなみに会社四季報秋号で掲載されていた25年10月号の予想営業利益は8,500(百万円)なので、その数字を見ていた投資家のがっかり具合は、相当大きくなります。

もうひとつは、株主優待の廃止です。今までは、100株以上で2,500円相当の優待割引券がもらえるということで、個人投資家からは優待銘柄としても人気だっただけに、廃止のニュースには大激震が走りました。廃止の理由は「配当を含めた株主の皆様への公平な利益還元のあり方という観点から」とあります。これは、株主優待を廃止する理由としてよくあげられます。

くら寿司のように株主優待の内容が、店舗で使う割引券の場合は、機関投資家や外国人投資家は実際に使用するのはむずかしく、その恩恵は、ほぼ個人投資家のみが受けることになります。また、株主優待を実施するためのコストは、企業の利益から支出されるため、結果的にすべての株主の利益に影響を与えます。となると、株主優待を実際に利用できない投資家にとっては、不公平というわけです。グローバル化を進める企業にとって、外国人投資家からそっぽを向かれる要素は排除したいという本音もあると思われます。

株主優待を廃止する企業の多くは、その分を配当金で還元しますが、くら寿司の場合、新年度の配当予想は据え置きでした。それも、翌日の株価下落を大きなものにしたのでしょう。

くら寿司が、減益予想とした理由は、人件費と食材などの原材料価格の上昇です。こういった費用の上昇は、価格転嫁でこなせればよいのですが、カジュアルに通える価格が魅力の回転寿司だと、安易な値上げは客数を減らしてしまうリスクが大きいのかもしれません。

ライバルのスシローは好調

いっぽうで、ライバルのスシローを運営するFOOD&LIFE COMPANIES(3563)の株価は年初来高値を更新中の快進撃となっています。

画像:FOOD & LIFE COMPANIES「2024年9月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

2024年11月8日に発表された2024年9月期は、①売上収益は361,129(百万円)、②前年比19.7%、③営業利益23,384(百万円)、④前年比112.6%と好調。

画像:FOOD & LIFE COMPANIES「2024年9月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

さらに、新年度である2025年9月期は、①売上収益は408,000(百万円)、②前年比13%、③営業利益26,000(百万円)、④前年比11.2%と二桁の増収増益の強気予想で、過去最高を更新となります。

当社は、国内スシロー事業が、売上の65%程度、海外スシロー事業が25%程度ですが、どちらも堅調で、とくに着地した2024年9月期に関しては、海外スシロー事業は、前年比39.3%と売上収益を伸ばしています。営業利益率でみると、国内スシローが5.97%、海外スシローが7.8%と海外スシローのほうが高く、今後は、海外売上比率を40%まで伸ばしたいという意向です。

そして、優待に関しては、2024年9月末贈呈分より従来の1.5倍に拡充と、くら寿司とは真逆の方針を取っています。10時半に決算発表があり、その日の株価は5.2%上昇と、投資家からは好感されました。

ネタの違いが明暗を分けた?

このようにくら寿司は弱気、スシローは強気と真逆の見通しになったわけですが、その違いはいったいなんでしょう?

直近発表された11月の月次売上を比べてみます。

画像:くら寿司「くら寿司11月度月次情報

くら寿司は、既存店の客数は①前年比99%で減少、客単価は②100.4%とほぼ変わらずのため、売上は③99.4%と減収です。

画像:FOOD & LIFE COMPANIES「2025年9月期 月次情報(11月)

一方、スシローは、既存店の客数①前年比105.3%で増加、客単価は②102.5%と増加、売上は③109.2%と増収です。

くら寿司は、原宿や銀座などインバウンド客が多いエリアで、寿司、天ぷら、団子などを作る様子が見える屋台を設置するなど、海外の人が喜びそうな業態のグローバル旗艦店をオープンしています。海外旅行者がこれだけ増えている中、業績の後押しになってもよさそうです。また、他の大手寿司チェーンではSNSでの不衛生な投稿のリスクを避けるため、回転レーンでの提供を取りやめる店舗が増えていますが、くら寿司は回転レーンでの提供を継続しています。ほんとうの”回転”寿司であることは、海外旅行者を惹きつける要因となるはず! それなのに…。

損益計算書を比較してみると、両社の減価率の違いが気になります。くら寿司は40.7%に対して、スシローは43.1%です。これは、スシローのほうが、よいネタを仕入れている可能性があり、これが顧客満足度の向上につながっているのかもしれません。つまりシンプルにおいしいほうに客がついた!ことになります。ちなみに、販管比率は、くら寿司が56.8%、スシローは50.4%とくら寿司のほうが高いので、ネタ以外のマーケティング費や、広告宣伝費などにお金がかかっている可能性があります。

くら寿司は、ビッくらポン!という3回に1度は必ず当たるカプセルトイのおまけくじがあります。こういった仕掛けは集客の一助となるのかもしれませんが、やはりお寿司はネタで勝負のほうがよいようです。

スシローは年初来高値を更新中

2024年の株価を比較するとくら寿司は、4月を高値に下落基調で、なんとか年初来プラスを維持していましたが、先日の決算発表を期にマイナス10%まで落ちてしまいました。一方のスシローは、9月から上昇トレンドが継続しており、年初来20%プラスで、年初来高値を更新中です。

ほんとにネタの違いが両社の明暗を分けたのか、近日中に確認する必要がありそうです。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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(藤川 里絵)

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