年末年始こそ利益確定と損切りを!金融アナリストが教える基本アプローチと年始に取り入れたい戦略
MONEYPLUS / 2024年12月21日 7時30分
年末年始こそ利益確定と損切りを!金融アナリストが教える基本アプローチと年始に取り入れたい戦略
年末年始は投資家にとって絶好の「振り返り」と「戦略更新」の時期です。1年間の取引を振り返り、保有銘柄を冷静に評価し直すことで、翌年の投資戦略を最適化するチャンスとなります。今回は利益確定や損切りを行う際の具体的なアプローチに加え、実践しやすい投資手法やポイントをお伝えします。
(1) 上昇トレンドを維持する銘柄を残す
短期的な調整はあっても、長期の上昇トレンドを崩さない銘柄は、長期投資においては継続保有が基本です。「上昇トレンド」はテクニカル分析で確認することができます。
上昇トレンドの見分け方(テクニカル指標)の例を挙げておきましょう。
1.パーフェクトオーダー
短期・中期・長期の移動平均線が「上から順に並ぶ」状態です。例えば、5日線 > 25日線 > 75日線と並んでいる場合は強い上昇トレンドのサインです。
2.押し目買いのサポートライン
チャート上で株価が25日移動平均線や75日移動平均線付近で反発する動きが見られれば、上昇トレンドが継続している可能性が高いです。
3.MACD(マックディー)の上昇クロス
MACD線がシグナル線を下から上へ抜けると、上昇トレンド再開のサインです。
4.RSIの上昇(50以上を維持)
RSI(相対力指数)が50以上を維持している場合、買い勢力が優勢であることを示します。
(2) 下降トレンドや業績悪化の兆候がある銘柄を手放す
決算の悪化や業界全体の低迷が見られる場合、早めに見切りをつけることが重要です。
下降トレンドの判断材料としては、以下が挙げられます。
1.移動平均線のデッドクロス
短期移動平均線が中期・長期の移動平均線を「上から下へ」抜ける状態。下降トレンド入りのサインです。
2.安値更新と高値切り下げ
チャート上で「直近の安値を割る」「高値が徐々に低くなる」場合、トレンドは下降傾向です。
3.MACDの下降クロス
MACD線がシグナル線を上から下へ抜けると、売りシグナルです。
4.RSIが30以下になる
RSIが30を下回ると「売られ過ぎ」ですが、同時に下落が加速していることも示唆されます。
業績悪化の兆候を見抜くには?
業績悪化の兆候を決算書から見抜くポイントは以下になります。
1.売上高の減少
連続して売上高が減少している企業は業績悪化の可能性が高いです。
2.営業利益率の低下
本業の収益性が悪化しているかどうかを確認します。
3.自己資本比率の低下
財務の健全性が損なわれている場合、企業の経営リスクが高まります。
4.キャッシュフローの悪化
営業キャッシュフローがマイナスになっている企業は要注意です。
(3) 「今この銘柄を新規で買いたいか」を基準に評価する
保有銘柄をゼロベースで評価する習慣をつけることで、冷静な投資判断が可能になります。
「利益が出ている銘柄は利食い(利確)してしまって含み損が出ているからプラスに転じるまでは持っておく」という方もいらっしゃいますが、持ち越すリスクもあります。決算やチャートが悪化している銘柄が翌年回復する保証はありません。
損失が出ている銘柄を持ち続けることで「資金が塩漬け状態」になり、有望銘柄への投資機会を逃すリスクもあります。「もし今、この銘柄を新規に買うか?」と自問し、「No」と判断した場合は売却を検討しましょう。
年末年始に実践できる投資手法「ダウの犬」戦略
自分の投資ルールがなかなか見つからないという方に向けて、年末年始に誰でもすぐ使える簡単な投資ルールとして有名な「ダウの犬」をご紹介したいと思います。
「ダウの犬」はアメリカの代表的な投資戦略の1つで、年初にダウ工業株30銘柄の中から「配当利回りが高い銘柄」を選び、1年間保有するシンプルな手法です。日本市場でも同様に、TOPIX Core30(東証一部の代表的な30銘柄)の中から高配当利回り銘柄を選ぶ手法が有効です。これは「日本版ダウの犬」といわれます。
2025年の日本版ダウの犬の想定銘柄(現時点の配当利回りを基準)は以下です。それぞれの企業について簡潔に説明します。
・ホンダ(7267)
世界的な自動車・二輪車メーカー。電動化・カーボンニュートラルへの取り組みを加速し、グローバル展開を強化。
・武田薬品工業(4502)
国内最大の製薬会社。グローバルに事業を展開し、医療用医薬品を中心に新薬開発や収益改善を推進。
・JT(2914)
国内たばこ市場を独占し、海外展開も積極的。たばこ事業が収益の柱であり、高配当銘柄としても人気。
・ソフトバンク(9434)
通信事業を基盤に、AIやIoT、デジタル分野へ展開。安定した通信収益に加え、成長分野での投資を強化。
・三菱商事(8058)
大手総合商社。資源高の恩恵を受け、エネルギーや金属を中心に安定した業績を維持しつつ、新事業にも注力。
・みずほフィナンシャルグループ(8411)
大手メガバンクの一角。リテールから法人、グローバル市場まで広く展開し、効率化を進めて収益基盤を強化。
・NTT(9432)
国内通信最大手であり、安定した収益基盤と高配当が魅力。5Gやデジタル領域への投資で成長を目指す。
・三菱UFJ銀行(8306)
日本最大の金融グループ。国内外での融資事業や資産運用を強化し、業務効率化やデジタル化も進展。
・トヨタ(7203)
世界最大級の自動車メーカー。電動車・水素車を含む次世代技術に注力し、安定した収益力を誇る。
・三井住友フィナンシャルグループ(8316)
金融セクターを代表する大手銀行グループ。収益力・安定性が高く、法人向けビジネスやグローバル展開に強み。
ただし、ホンダや武田薬品工業はトランプ政権の政策などで逆風が考えられることで株価が下落し利回りが高くなっているところもあるので要注意。加えてメガバンクが多いのでセクターの分散も考慮して11位の三井物産(8031)、12位の東京海上(8766)なども組み入れてもいいかもしれません。
年末年始を新たなスタートにするために
年末年始は、投資家にとって「振り返り」と「次への準備」ができる貴重な時間です。投資初心者の方、また学び直したい方は、年末年始を利用して投資の基礎を学ぶ時間にするのもおすすめです。書籍や動画を活用し、投資の基本知識を身につけましょう。
家族と相談し、将来の目標を明確にすることも大切です。投資の目的やリスク許容度を家族と共有することで、長期的な視野で取り組むことができます。
投資経験者の方はポートフォリオの整理と最適化、保有銘柄を評価し直し、利益確定や損切りのルールを見直し、資産を最適化してはいかがでしょうか。またご自身の目標に合わせて「ダウの犬」戦略や高配当銘柄投資など、新しい手法を取り入れてみるにも良い機会です。
2025年に向けて、良いスタートを切るために、この年末年始を有効活用していきましょう。
投資管理もマネーフォワード MEで完結!複数の証券口座から配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward] ※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
(三井 智映子)
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