意外とある自動車保険の請求漏れ…防ぐためにやるべきこととは?
MONEYPLUS / 2024年12月22日 11時30分
意外とある自動車保険の請求漏れ…防ぐためにやるべきこととは?
自動車保険の多くは、事故が起こった時に保険金の請求が発生するので、請求漏れはないだろうと思うかもしれません。しかし、請求できるのにもらわずじまいでいる特約や割引率が下がるのを気にして、請求控えをしていることはよくあります。保険の正しい理解が請求漏れを防ぐ手立てになります。
自動車保険の割引等級の仕組みは?
自動車保険の保険料を決める仕組みは、基本料率、各特約の料率に加え、契約の車ごとに決められている料率、使用目的、年齢区分、免許の色、各種割引などさまざまな料率や割引の組合せで決められています。そこに、等級別割引・割増等級制度という仕組みが加わります。多くの損害保険会社では1~20の等級で割引割増を決めています。各種共済の自動車保険では割引・割増率が若干違いますが、大手損保社では概ね下表の様な割引率になっています。
画像:筆者作成
自動車保険を新規で申込む時は、1等級から始まるのではなく、6等級から始まります。この表では6等級は13%割引ですが、新規に加入する時は6Sという特別の等級を使い、3%割増から始まります。1年間事故で保険を使わないと1つ等級が上がりますから、7等級の27%割引になります。このように事故で保険を使うことがないと、割引率が増えていく仕組みです。
ところが、例えば15等級まで等級が進み、割引が53%まで増えたところで、事故があり、保険金の請求をした場合、次の年度には等級が3等級ダウンし12等級に下がります。
上表の上段、無事故12等級50%に下がるだけなら3%しか下がりませんが、事故により等級が下がった時は下段の「事故有」の割引を適用することになります。同じ12等級でも、「無事故」の割引率は50%、「事故有」の割引率は22%になってしまいます。
さらにその年も含めて3年間は事故有の割引率が適用されるので、3年間は高い保険料を支払うことになります。事故は3等級ダウン、しかも事故有の割引率になることを認識しているひとは、少しの損害だったら保険を使わず自腹で解決しようと考える気持ちもわかります。しかし、せっかく保険料を支払っているのですから、できれば保険金請求したいところですね。
割引等級がダウンするのは3等級ダウンだけではない
「自動車保険の事故請求をすると、次の年から保険料が上がってしまう。しかもだいぶ高くなる」という認識は誤りではありません。ただ、すべての事故が3等級ダウンに該当するわけではありません。「1等級ダウン事故」「ノーカウント事故」に該当する事故もあります。
1等級ダウン事故とは
車両保険にかかわる事故のみの場合、等級は1等級だけダウンします。火災・爆発、車の盗難、騒擾(大勢の群衆などによって被害が発生する状態)、台風・竜巻・洪水・高潮(地震による津波などの被害は対象外)、落書、いたずら、落下中の他物との衝突などが対象です。
近年では、大雨による洪水が増えています。あっという間に増水し、車両に損害が出てしまった場合、車両保険にかかわる事故で保険金請求をすると、1等級ダウン事故となります。15等級53%割引だった割引率が、次年度は事故有14等級25%になってしまいますが、1年間無事故で過ごせば53%に戻ります。
駐車場に停めているときに、心ない人にいたずらで傷をつけられた経験があるひともいるでしょう。3等級ダウンと思い込み、保険金の請求をせず、自己負担で修理をしたということはないでしょうか? 1年だけの保険料アップで済むなら、保険金請求した方がお得なケースもあるはずです。
ノーカウント事故とは
自動車保険には、数多くの特約が付いています。定められた特約の事故請求をした場合は、等級のダウンがなく、次年度の等級は無事故と同じく、等級が1等級上がります。そのような事故をノーカウント事故と呼びます。定められた特約といっても、3等級事故に該当する請求と同時に発生した場合は、3等級事故のカウントとなります。
では、どのようなケースがノーカウント事故に該当するのでしょうか。
例えば、信号待ちをしていて後ろから追突されてしまったようなもらい事故の場合です。車の損害も、ケガの補償も相手方が100%することになります。ただし、傷害一時金特約のような、ケガをした際に定額で一時金が支払われる特約をつけていれば、保険金の請求をしても等級ダウンのカウントはされません。また、このようなもらい事故にも関わらず、相手方が思うような補償をしてくれなかった場合、弁護士費用特約を使い弁護士に相談することもあります。この弁護士費用特約も等級ダウンのカウントにはなりません。
ファミリーバイクを所有している場合、自動車保険にファミリーバイク特約を付帯していないでしょうか。この特約もノーカウント事故の対象になる特約です。ファミリーバイクにかかわる事故は等級ダウンにならないことは、案外知られていないかもしれません。
請求漏れを防ぐには?
自動車保険は非常に細かい規定がたくさんあり、概要は理解していても、詳細をすべて把握することは不可能です。それをフォローするために、サポートデスクや保険代理店の担当者がいます。請求漏れを防ぐには、何かあったら担当者に連絡することが一番単純で効果がある方法です。
例えば100%相手方が悪いと思われる事故であっても、自動車保険の担当代理店に、事故があったことを連絡しましょう。支払ができる項目があれば、手続きを進めてくれます。また、日常賠償責任特約、犯罪事故特約、交通事故特約のように、自動車事故とは関係ないことで、ケガや賠償責任をカバーする特約もあります。何か困ったことが起きた時のために、連絡先はスマホに入れておきましょう。
保険は請求しない限り保険金をもらうことはできません。毎月頑張って払っている保険料を無駄にしないためにも、自動車保険だけでなく、生命保険も含め、民間保険の窓口をひとつにしておくと便利に使えるでしょう。
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(寺田 紀代子)
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