相続人に「認知症・未成年・障がいのある人」がいる場合に遺言書が必要な理由
MONEYPLUS / 2025年1月12日 18時0分
相続人に「認知症・未成年・障がいのある人」がいる場合に遺言書が必要な理由
遺言書は「家族の仲が悪い」「争う可能性が高い」など、将来の相続に不安がある方が検討されることが多くあります。しかし、家族の仲が良く、争う可能性が低くても、相続人の中に以下の3パターンに当てはまる人がいる場合は、遺言書を作っておくことで余計なトラブルを防ぐことができます。
・認知症の人がいる
・未成年がいる
・障がいのある人がいる
認知症の人がいる場合
日本では高齢化が進み、2023年で総人口に占める65歳以上の人口は約3,623万人で、29.1%となりました。「超高齢化社会」といわれ日本の高齢者人口の割合は、世界順位1位となっています。
平成29年度高齢者白書によると、2012年は認知症患者が約462万人、約7人に1人という割合だったところ、2025年には約5人に1人が認知症になるとの推計もあるとのこと。高齢化が進むことで加齢を原因とする認知症の人数も増加傾向にあり、他人事ではないということになります。
相続が発生した際、遺言書がなければ相続人全員で遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)をして、それぞれが引き継ぐ財産を決めていかなければなりません。遺産分割協議をする大前提として、相続人が全員成人していて「判断能力がある」人たちでないと話し合いができません。判断能力とは、物事を正しく認識し、どんな責任を負うか理解・判断できる能力のことをいいます。
相続人の中に認知症を含む、判断能力がない人がいると、その人の代わりに遺産分割協議に参加する人を家庭裁判所に申し立てをして選任する必要があります。選任された人を「成年後見人」と呼び、判断能力のない人を「成年被後見人」と呼びます。成年後見人が遺産分割協議に参加して相続する財産を決めるのですが、相続人間で遺産分割協議をする場合と相違する点があります。
相続人間で遺産分割協議をする際は話し合いの中で財産を「何も引き継がない」とすることができます。ただし、成年後見人は「成年被後見人の財産を守る」ことを目的とするので、法定相続分は最低確保できるように話し合いに参加します。また、遺産分割協議をするために成年後見人を選任すると、その先、成年被後見人が亡くなるまでずっと成年後見人が成年被後見人の財産を管理することになります。遺産分割協議が終われば成年後見人の役目が終わるわけではありません。親族以外の専門家が成年後見人に選任されればその専門家に支払う報酬が発生します。それは成年被後見人が亡くなるまで継続します。
このことを避けるために、認知症等、判断能力のない人が相続人になることが想定される場合は遺言書を用意しておくとスムーズに相続の手続きが行われるようになるので、作成しておくことをお勧めします。
未成年がいる場合
親が亡くなると子供は相続人です。遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議をしてそれぞれが引き継ぐ財産を決めていくことになります。子供が成人していて判断能力があれば遺産分割協議を行い財産の名義変更や払出の手続きに進めるのですが、未成年の子供は遺産分割協議をすることができません。未成年は法律上判断能力がないとされているからです。では、どのように進めていくのか。
認知症と同じく「判断能力がない」という状態ですが、未成年の場合、成年後見人を選任することはせず、一般的には親権者が法定代理人になるので子供の法律行為には親がかかわります。ただし相続の場合は子供の法定代理人の親にも相続権があり、親が法定代理人になると子供との「利益相反(一方の利益が一方の不利益になる)」関係が生じてしまうので、親は子供を代理することができません。そのため「特別代理人」を家庭裁判所に申し立てして選任する必要があります。
特別代理人には資格や職業制限もなく、未成年の子供の代理人として未成年の子供の権利を守り法定相続分は確保できるように遺産分割協議に参加します。
成年後見人との違いは、成年後年人は一度選任されると成年被後見人が亡くなるまで財産管理を行います。一方、特別代理人は未成年の子供の遺産分割協議のために選任されるので遺産分割協議が整えばお役目は終わりです。
未成年の子供の場合、法定相続分を引き継ぐように遺産分割協議をしたとしても、実際は親と生活を共にしている場合が多く、子供は財産を引き継がず親が全部相続して日々の生活に使用したほうがスムーズだということも多いです。しかし、遺言がなければ特別代理人選任が必要で手間がかかり、子供に法定相続分の財産を渡すことになるのです。もし、遺言書があり「全ての財産を妻(夫)へ」と記載した内容であれば遺言書でスムーズに手続きができるのです。
障がいのある人がいる
ここでいう「障がいのある人」とは、判断能力のない人のことをいいます。判断能力がないので認知症の人がいると同じように、遺言書がなければ家庭裁判所に申し立てをして成年後見人を選任する流れになります。ある程度高齢である認知症の人の場合と違い、障害のある人は年齢が若い場合もあり、20代、30代で成年後見人が選任されると亡くなるまでの数十年間ずっと成年後見人が財産管理をすることになります。そしてその期間報酬が発生し、金銭的な負担が数十年間かかり続けることになります。
将来的に成年後見人を選任することになるとしても、できるだけ時期を遅らせたいと考えるなら、障がいのある人が相続人になる可能性のある人は遺言書の作成を強くお勧めします。
そして、障がいのある子供を持つ親御さんが遺言書を書く最大のメリットは、遺言書で「遺言執行者」を決めておくことができる点です。
遺言執行者とは、遺言に書いてある内容の手続きを行う人です。遺言執行者が相続手続きを行うことができるので、障がいのある子が相続手続きをせずと済むのです。
今回ご紹介した3パターンに当てはまる方には、家族関係が良好で遺産分割協議でもめることはなくても、諸事情で遺産分割協議ができないことで生じる煩雑な手続き等を省略するために遺言書の作成をお勧めしています。
ぜひ財産の移転をスムーズに行うことができるように生前のお元気なうちに専門家に相談しながら準備していきましょう。
行政書士 藤井利江子
(アクセス相続センター)
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