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それほど大きな問題ではない? 「iDeCo改悪」によって影響を受ける人、逆にメリットがある人とは

MONEYPLUS / 2024年12月31日 7時30分

それほど大きな問題ではない? 「iDeCo改悪」によって影響を受ける人、逆にメリットがある人とは

それほど大きな問題ではない? 「iDeCo改悪」によって影響を受ける人、逆にメリットがある人とは

令和7年度税制改正大綱が発表になりました。巷では受取り時の退職所得控除のルールが変更される点が「改悪だ!」といわれているiDeCoですが、今回はどんな人にとって改悪なのか、メリットが拡大する人はどんな人なのかを解説していきます。


iDeCoの3つの改正点とは

資産運用立国の実現に向け、政府が力を入れるiDeCo(個人型確定拠出年金)とNISA(少額投資非課税制度)ですが、今回の税制改正大綱の発表を受け、特にiDeCoの変更点に注目が集まっています。

改正点のポイントは3つ。ひとつが掛金上限額の引き上げ、ふたつめが加入可能年齢の引き上げ、みっつめが受取り時のルールの一部変更です。ひとつずつ見ていきましょう。

1. 掛け金上限額の引き上げ

iDeCoは老後の資産作りを目的とした私的年金の制度です。毎月の掛金は全額所得控除、投資信託等での運用で得た利益は非課税、60歳以降の受取り時にも退職所得控除や公的年金等控除の利用ができる非常に有利な資産形成の仕組みです。

ただいくつか複雑なルールがあることで敬遠されがちで、その普及はNISAよりもずいぶん遅れをとった感がありました。特に会社員の掛金については、企業年金の有無あるいは状況により異なります。

例えば、企業年金のない会社にお勤めの方は月23,000円が上限、企業年金のある会社にお勤めの方は月55,000円が上限、ただしこれは企業型確定拠出年金(DC)と確定給付企業年金(DB)などの他制度掛金相当額との合算額でさらにiDeCoの掛金は20,000円を超えない額となっています。

それが今回の税制改正大綱では、第2号被保険者については公務員もふくめ全員の掛金上限額が月62,000円に統一されます。これまで企業年金のない会社にお勤めの方は23,000円から62,000円へと一気に39,000円も拠出限度額が拡大されます。

またこの金額は大枠の上限なので、企業型DCがある場合はDCの掛金を差し引いた金額が上限、またさらに確定給付企業年金(DB)などの他制度掛金相当額がある場合は、62,000円からそれらを差し引いた残りの額がiDeCoでの拠出可能額となります。

他制度掛金相当額との併用拠出上限については2024年12月より「ただし20,000円を超えないこと」との条件つきで開始になったところですが、この「20,000円」の条件がなくなりよりシンプルに、企業年金等の掛金とiDeCoを合わせて62,000円を上限とするというルールに変ります。

これは「穴埋型」と呼ばれ「勤務先の企業が企業年金を設けているかどうか、企業年金の形態がどうであるかといった違いにかかわらず、継続的に、かつ、平等に資産形成をできる環境の整備を進めるため」の改正であるとその変更の目的も税制改正大綱に記されています。

会社員についてはマッチング拠出にも改正が入ります。現行のマッチング拠出の個人の掛金は、会社が拠出する事業主掛金の額を超えないことという条件が設定されていますが、これが撤廃となります。するとマッチング拠出を選んでもiDeCoの併用加入を選んでも拠出できる金額は同額ですから、マッチング拠出を選ぶ方が増えてきそうです。税金のメリットはどちらも同じなので、よっぽど選べる運用商品のラインナップが悪いなどの理由がなければ、企業型の方が手数料を会社が持ってくれる分お得です。

また厚生年金への加入がない自営業者などの1号被保険者については現行の掛金上限月68,000円が75,000円に拡大されます。同時に国民年金基金の掛金も75,000円まで引き上げられ、ふたつを併用する場合は合算75,000円が上限です。

2. 加入可能年齢の引き上げ

次にふたつめの加入可能年齢の引き上げについてです。現在公的年金に加入していることを条件として65歳までの加入が可能となっていますが今回の大綱では加入年齢を70歳未満に引き上げるとともに、「iDeCoの加入者・指図者だった人」あるいは「私的年金の資産をiDeCoに移換できる人で、老齢基礎年金・iDeCoの老齢年金を受給していない人」であれば、そのまま60歳以降もiDeCoに加入できるようになります。

最近は、70歳までの雇用を守ることが企業の努力義務とされているので、できるだけ長く働きたいという方も増えるでしょう。その場合は、70歳までiDeCoへ加入ができるようになります。掛金上限は会社員と同じく62,000円が上限です。

また今回の大綱には、公的年金加入者であることについては言及されていませんから、60歳以降アルバイトのような形で働く方であってもiDeCoへの加入ができるようになります。自営業の方など60歳までに40年間国民年金を満額払ってきた方は、公的年金の加入が終了するためその後にiDeCoに加入することがかないませんでしたが、老齢年金を受給していなければiDeCoへの加入ができるようになります。

大綱を読む限り、iDeCoへの加入を優先する場合は、公的年金は必然的に繰下げが条件となりそうですが、60歳からでも月々62,000円の積立が可能となれば4%の利回りだと10年で900万円以上の老後資金を作れることになります。

ここまでを総括すると、掛金上限が大幅に拡大したことにより、iDeCoでよりしっかりした資産形成をしたい方にとっては大いにメリットがある改正といえます。特に若いうちはなかなか資産形成にお金を回せなかったけれど、50歳からあるいは60歳から資産形成に取り組みたい方にとってもチャンスが拡大しました。

繰り返しになりますが、iDeCoの掛金は全額所得控除になります。所得税率は5%~45%の超過累進課税、住民税の所得割は原則一律10%です。収入が低い方であっても掛金の15%は税を軽減させることができるので、今回の改正は大いに歓迎したいところです。

3. 受取り時のルールの一部変更

最後は退職所得控除のルールの一部変更です。iDeCoは掛金を拠出している間は受取りできませんが、60歳の年齢要件を満たせば、75歳までの間で好きなときに受取りが可能です。その際、一時金で受け取る場合は退職所得控除が、分割で受け取る場合は公的年金等控除が適用になります。

退職所得控除とは、定年退職時に会社から退職金を受け取る際に、長期就労のご褒美だからと税金がとても優遇される仕組みです。勤続年数20年までは1年あたり40万円、20年を超えると1年あたり70万円で計算した金額を退職金から控除してくれます。つまり勤続30年であれば1500万円、40年であれば2200万円までの退職金は非課税で受け取れるのです。さらに控除額を上回るほどの退職金の場合は、超過分が2分の1され、そこに分離課税、その他の所得とは切り離して税率を掛ける特別ルールが適用されています。

iDeCoは任意の私的年金でありながら退職金の一種である企業型確定拠出年金(DC)としての普及が進んだことから、受取りの際はその加入年数を勤続年数と読み替えて退職所得控除を計算することになっています。

ただし、iDeCoを60歳の定年退職時に退職金と同年に受け取る場合は合算され、退職所得控除もその重複する期間はカウントしないというのがルールです。

例えば、会社は30歳から60歳までの30年間働き1000万円の退職金、iDeCoは40歳から60歳まで加入し受取額は800万円であったとしましょう。どちらも60歳で受取る場合は、金額は合算され1800万円となります。また、退職所得控除は30年分の1500万円となり超過した300万円の2分の1、つまり150万円に対し5%の所得税、10%の住民税がかかります。なぜ退職所得控除が30年分になるかというと、iDeCoの加入期間20年は、会社での勤続年数である30年と重複するためです。結果的に1800万円の受取りから225,000円の税金が引かれ、手取りは17,775,000円となるのです。

では、もし会社が65歳定年で退職金の1000万円は65歳で受取りiDeCoの800万円は60歳で受け取れることになったとしましょう。すると退職所得控除には通称「5年ルール」というものがありiDeCo受取り後に5年を経過した後で退職金を受け取ると、さきほどの「重複期間」という概念がなくなりそれぞれの退職所得控除を活かせることなります。

するとiDeCoの800万円を受け取る際は20年の加入期間、つまり退職所得控除800万円が適用となり税金は0円、会社の退職金1000万円は退職所得控除1500万円(分りやすくするため勤続年数は30年のままとします)が適用され税金は0円です。つまり、iDeCoと退職金の受取り時期を5年ずらすことで退職所得控除をダブルで使うことができて「得する」ことが可能だったのです。

しかし今回の改正でこの5年ルールを10年ルールにすると明示されたので巷では「改悪だ!」といわれているのです。

筆者は、会社の定年は60歳だという方がまだまだ多い中、この5年ルールを器用に使える方は、ごく一部であることを考えるとそれほど大きな問題ではないのではないかと考えています。むしろ今回の改正で退職所得控除を計算する際の1年あたりの金額が縮小されるのではないかと思っていたので、胸をなで下ろしたくらいです。とはいえ、度重なる変更は制度の信頼性を揺るがすことにもなるので、掛金の上限を上げたら受取り時を引き締めトレードオフするようなことは、やめて欲しいとは思います。

少額でも早く、そして長く続けることがポイント

いずれにしろ、今回発表された今後の方向性をにらみつつiDeCoの活用法を改めて考えると、ますます早くから始めて長く続けることが良いのではないかと思います。例えば20歳から70歳まで加入をすると、50年間の積立期間で退職所得控除は2900万円になります。

収入が少ない20代は掛金5000円でも良いのでiDeCoをはじめ、退職所得控除にカウントされる期間を稼ぎます。むしろ収入が少ない間は所得控除における節税メリットが小さいのでNISAを優先します。

収入が増えてきたらiDeCoの掛金を増額していきます。仮に20歳から40歳までは月5,000円、40歳からは60歳までは40,000円、60歳から70歳までは10,000円の積立をしたとしましょう。50年間の積立総額は1200万円です。そしてもし70歳までの間ずっと4%で運用できたとすると2900万円ほどの資産を築くことができます。それでも退職所得控除内ですから税金はかかりません。

退職所得控除のうち一部重複した期間を会社の退職金を受け取る際に使ったとしても、50年分の退職所得控除がゼロになることはないでしょう。また課税されたとしても、退職所得控除を超えた分を2分の1して分離課税ですから、やはりiDeCoの有利性は充分担保されているといえるのではないでしょうか?

いずれにしても、確定拠出年金制度は、「税の繰り延べ」が特徴なので受取り時に課税されるのはあたり前のことであると早めに理解しておいた方が良いでしょう。ポイントはできるだけ長く加入して退職所得控除の枠を確保する、収入に合わせて最適な掛金を拠出することになるのではないかと考えます。今後も情報をしっかりキャッチして上手に活用していきましょう。

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(山中 伸枝)

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