「103万円の壁」、iDeCo掛金限度額の引き上げ…2025年上半期の【お金のイベントカレンダー】
MONEYPLUS / 2025年1月1日 7時30分
「103万円の壁」、iDeCo掛金限度額の引き上げ…2025年上半期の【お金のイベントカレンダー】
2025年は、引き続き物価高が家計を直撃する年になりそうです。2024年の値上げ品目数は1万2520品目と過去3年で最少だったものの、2025年1月からはパックご飯やパン、酒類・飲料など、飲食料品3933品目の値上げが予定されています。物価高の背景には、原材料費の高騰に加え、物流費や人件費の増加があります。
一方で、賢く節約や資産形成を進められるチャンスもある年です。2025年上半期には、家計に関するさまざまなイベントや注意点があります。本記事では、上半期のお金に関するポイントをわかりやすくまとめました。家計防衛のヒントとしてぜひご活用ください。
上半期(1月~6月)のお金のイベントを一覧表で確認
上半期(1月~6月)のお金のイベントを一覧表で確認してみましょう。
画像:筆者作成
なお、税制改正大綱は現時点では案であり、国会で審議されたのちに法制化されます。上記から変更の可能性があることを踏まえて、お読みください。
令和7年度の税制改正
令和6年12月20日に「令和7年度税制改正大綱」が公表され、所得税、住民税の計算にかかわる点で大きな改正案が示されました。
「103万円」の控除額を「123万円」に引き上げ
所得税には、収入や所得から一定額を差し引く「控除」という仕組みがあります。これにより、控除後の金額に応じて税金が計算されます。
これまでは、働く人が年間「103万円」を超える収入を得ると所得税が発生する仕組みでしたが、これが「123万円」に引き上げられます。
具体的には「基礎控除」と「給与所得控除」がそれぞれ10万円ずつ増えるためです。
・基礎控除:今までは年間48万円が控除されていましたが、これが58万円に増えます。
・給与所得控除:働く人の収入に応じて差し引かれる控除で、最低保障額が55万円から65万円に増えます。
<基礎控除の変更一覧>
筆者作成
つまり、基礎控除58万円と給与所得控除65万円を合わせて123万円までは、収入があっても所得税がかからないようになるのです。
【年収190万円までは控除額が固定】
給与所得控除の「最低保障額」が65万円になるため、年収190万円以下の人は65万円が控除されます。この範囲内であれば、年収が増えても控除額は変わりません。
今回の変更で、「103万円の壁」が「123万円の壁」に引き上げられることで、パートやアルバイトで働く人がより多く収入を得られるようになります。これにより、税金を気にして、働く時間などを調整していた方々にとって働きやすくなったといえるでしょう。
住民税においても「給与所得控除額」が、所得税と同様に「最低保障額」を10万円引き上げて65万円になります。その一方で、「基礎控除」については、地方自治体から大幅な減収への懸念の声が上がったため、据え置くことになりました。
新たに「特定親族特別控除」を導入
大学生などを扶養する親の税負担を軽減するため、「特定扶養控除」の年収要件が見直され、新たに「特定親族特別控除」が導入されます。
これまでは、扶養する子ども(年齢19歳~23歳未満)の年収が103万円を超えると、親が受けられる控除(63万円)がなくなっていましたが、新しく年収150万円まで控除が受けられるようになります。
また、子どもの年収が123万円を超えた場合でも、段階的に控除が減少する仕組みが導入されました。このため、子どもの収入が増えても、親の控除が急になくなる心配がありません。子どもの収入と控除額の関係は、以下のようになります。
・子どもの年収150万円まで:控除額は63万円
・子どもの年収160万円まで:控除額は51万円
・子どもの年収170万円まで:控除額は31万円
・子どもの年収180万円以上:控除額は0
同様に、パートで働く妻などを扶養する世帯の税負担を軽減する「配偶者特別控除」についても、配偶者の年収要件がいまの150万円から160万円に引き上げられます。
所得税においては、2025(令和7)年度の所得税から、住民税においては2026(令和8)年度からの適用となります。
マッチング拠出時の条件である「事業主掛金の額を超えることができない」とする要件を廃止
マッチング拠出は、企業型確定拠出年金(DC)の制度の一部で、2012年から導入されました。この仕組みでは、会社が拠出する掛金に加え、従業員が任意で掛金を上乗せして支払うことができます。さらに、2022年の制度改正により、マッチング拠出とiDeCo(個人型確定拠出年金)のどちらを利用するかを従業員が選べるようになりました。
現行制度では、従業員の掛金が会社の掛金を超えることはできません。今回の改正案においては、マッチング拠出時の条件である「事業主掛金の額を超えることができない」とする要件が廃止されることになりました。
iDeCo掛金限度額を引き上げ
公的年金にプラスして、自分で老後資金を積み立てるiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)。この制度では、掛金を所得から控除できる税制優遇が受けられます。今回の改正で、その掛金の上限額が引き上げられることになりました。
・企業年金がある会社員の場合
現在、iDeCoの掛金は月額2万円が上限で、企業年金と合わせた合計は5万5000円までと決まっています。改正後は、この合計の上限が7000円増えて6万2000円になります。
・企業年金がない会社員の場合
現在のiDeCo掛金上限は月額2万3000円ですが、改正後はこれが6万2000円に大幅に引き上げられます。
・自営業者の場合
自営業者は、iDeCoの掛金と国民年金基金の掛金を合わせた上限が6万8000円となっていますが、これも7万5000円に引き上げられます。
あわせて、国民年金基金の加入限度額も7万5000円に引き上げられます。
子育て世帯や若年夫婦世帯に対する住宅ローン減税優遇が1年延長
住宅ローン減税は、年末時点での住宅ローン残高に応じて、所得税や住民税が軽減される制度です。このうち、子育て世帯などに対しては、優遇措置がさらに1年間延長されることになりました。
住宅ローン減税の対象となる借入額の上限は住宅の省エネ性能に応じて決まっており、
子育て世帯などには以下のとおりです。
・「長期優良住宅」:5000万円
・ゼロエネルギー住宅:4500万円
・省エネ基準適合住宅:4000万円
2月~3月は会社員・公務員も「確定申告」をすれば所得税が還付となる
確定申告は、自営業者などが、前年の所得と所得税を計算して、税金の支払いを精算する手続きです。期間は、毎年2月16日~3月15日までです。
確定申告は、主に自営業者などが対象になります。しかし、会社員や公務員も医療費控除などを受けることで、納め過ぎている所得税が戻ってくる場合もあります。
会社員や公務員で以下に該当する人は確定申告をしましょう。
(1)年末調整で生命保険控除の申請を忘れた人
(2)2024年の途中で会社を退職し、年末調整を受けていない人
(3)扶養家族の国民年金保険料を代わって支払った人(社会保険料控除が適用になる)
(4)2024年中に医療費が多くかかった人(医療費控除が適用になる)
(5)災害や盗難などで資産に損害を受けた人(雑損控除が適用になる)
(6)副業での所得が20万円超
医療費が10万円を超えている人が対象になる医療費控除
毎年1月1日~12月31日までに支払った自分と同一生計の家族の医療費の合計が10万円以上の場合、医療費控除を受ければ、所得税を安くすることができます。
医療費控除の対象となる医療費の要件は、以下の2つがあります。
・納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費
・その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費
上記の要件を補足すると、「生計を一にする配偶者やその他の親族」については、とくに「扶養しているかどうか」という要件はありません。家族の医療費を負担した人が医療費控除を受けることができます。
また、医療費控除の対象となるのは、実際に支払った年の医療費です。そのため、年末時点で未払いの医療費は控除対象外となります。ただし、年末にクレジットカードで支払いを済ませた場合は、翌年に口座から引き落とされるとしても、当年の医療費控除の対象として認められます。この際、カード決済時に発行される領収書が証明書類となりますので、必ず保管しておきましょう。
医療費の対象になるものには、医師の診療・治療費、治療を目的とした医薬品の購入、電車やバス等による通院費(急な場合はタクシー代も含む)、あん摩マッサージ、はり、きゅうなどの整体による施術費用などがあります。
医療費控除の金額は「実際に支払った医療費の合計額-保険から支給された給付金-10万円」で計算できます(医療費控除の上限は200万円まで)。
1万2000円を超えて市販薬を買った人が対象になるセルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制とは、医療費控除の特例として利用できる制度です。健康維持や病気の予防に取り組んでいる人が、特定の医薬品を購入した場合、その費用が所得控除の対象になります。
この制度では、対象となる医薬品の年間購入費用の上限は10万円で、実際に控除される金額は「10万円から1万2000円を引いた額(最大8万8000円)」です。対象となるのは「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる特定の薬ですが、中には「キューピーコーワiプラス」「バンテリンコーワ液α」「新ルルAゴールドs」「バファリンEX」「アリナミンEXゴールド」など、普段からドラッグストアで目にするおなじみの市販薬が多く含まれています。気になる方は厚生労働省のホームページで確認しましょう。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について|厚生労働省
なお、医療費控除とセルフメディケーション税制の併用はできません。両方ある場合は、有利な方を選んで申告しましょう。
副業で「収入-経費=20万円超」の方は忘れず確定申告を
副業での前年所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。副業先に「支払調書」の発行を依頼して、確定申告の準備を整えておきましょう。また、ダブルワークの場合も、年末調整をおこなった主になる会社以外の所得が20万円を超えたのであれば確定申告が必要です。
2025(令和7)年分の住民税は6月から切り替わる
住民税は、その年の1月1日現在で居住している人が、住所地の自治体に対して納める税金です。住民税は、徴収方法が「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。会社員や公務員の方は給与から天引きされる「特別徴収」です。直近の2024年分の所得をもとに住民税を計算して毎年6月から切り替わり、翌年5月までの12回に分割して納付します。自営業者やフリーランスは、本人に各自治体からの納付書が届く「普通徴収」です。
なお、前述の税制改正の適用は2026(令和8)年度からの適用となります。
ふるさと納税利用者は「住民税決定通知書」で控除を確認
6月に住所地の自治体から、住民税の税額を通知する「住民税決定通知書」が届きます。2024年にふるさと納税を利用した人は、「住民税決定通知書」の中の「寄付金控除」または「税額控除額」の金額が、2025年の「ふるさと納税額-2000円」とおおよそ同額になっているか確認しましょう。近い数字になっていれば、無事に税額控除されており自己負担が2000円だけとなっています。
まとめ
今回の税制改正は、所得控除の拡大や扶養控除の見直しなど、働き方や家計に影響を与える重要な変更が盛り込まれています。これを機に、自分の働き方や収入プランを見直してみましょう。例えば、「123万円の壁」や「特定親族特別控除」を活用して収入を増やしたり、iDeCoの掛金引き上げを活用して老後資金を効率よく積み立てたりが有効です。さらに、確定申告やふるさと納税を上手に活用して、家計を助ける工夫も積極的に行いましょう。
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(舟本美子)
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