100人に3人が返済に苦しんでいる? 住宅ローン破綻を防ぐために気を付けるポイント
MONEYPLUS / 2025年1月13日 11時30分
100人に3人が返済に苦しんでいる? 住宅ローン破綻を防ぐために気を付けるポイント
マイホーム購入は多くの方にとって人生最大の買い物です。その際に欠かせない住宅ローンですが、「返済できなくなったらどうしよう」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
近年、住宅ローン市場は大きく変化しており、選択肢が増えた分、適切に商品や条件を選択することが難しくなっています。この記事では、住宅ローン返済破綻を防ぐために気を付けるべきポイントや住宅ローンの活用方法をご紹介します。
3つの備えで住宅ローン返済破綻を防ぐ
住宅ローンの返済破綻とは、返済が困難になって家計が立ち行かなくなることです。これは単に返済が遅れるだけでなく、最悪の場合、マイホームを手放さざるを得なくなる事態にまで発展する可能性があります。返済破綻に陥ると、信用情報機関に記録が残り、将来的な借入にも影響を及ぼす可能性があるため、十分な注意が必要です。
2023年度に独立行政法人住宅金融支援機構が行なった調査によると、リスク管理債権(延滞している、破綻しているなど)の割合は約3%となっています。一見少ない数字に思えるかもしれませんが、100人に3人が返済に苦しんでいるという現実は決して軽視できません。住宅ローン返済破綻の主な要因としては、病気やケガ、失業、介護、金利の上昇、過大な借入などが挙げられます。これらの要因に対しての備えを、3つの観点から考えていきましょう。
1.収入減に備える
収入の減少は、住宅ローン返済破綻の最も一般的な原因の一つです。特に代表的な例としては、病気・ケガや失業といった状況です。これらの事態に備えるため、まず緊急資金の確保が重要です。最低でも6ヶ月分の生活費を貯蓄しておくことをおすすめします。
長期の病気やケガは、収入減少だけでなく医療費の増加も引き起こすため、加入している保険が最適かどうかを確認しましょう。失業については失業保険の給付条件や給付額を事前に把握しておくことで、いざという時に冷静に対応できます。
また、住宅ローン契約時に加入する団体信用生命保険(団信)の商品も多様化しており、上手に活用したいところです。近年、保障範囲の広い疾病保障付団信を取り扱っている銀行が増えており、病気やケガによる就業不能時の返済保障や失業時の一時的な返済免除など、多様な商品が用意されています。0.1%〜0.3%程度の金利上乗せが必要となることが多いですが、収入減のリスクに備える有効な手段となり得ます。自身の状況に合わせて、適切な保障を選択するようにしましょう。
2.ライフステージの変化に備える
ライフステージの変化は、予期せぬ支出増加をもたらす場合があります。家族構成の変化や介護などが代表的な例です。
特に子どもの誕生は、支出に大きな影響を与えます。教育費用は決して小さくないため、事前に試算し、資金計画を立てることが重要です。住宅ローンの返済とバランスを見ながら、早めに準備を始めましょう。また、共働きの場合には産休育休や時短勤務などにより世帯収入が減少することもあるため、この点についても注意しながら計画を立てることが必要です。
親の介護は、経済的にも時間的にも大きな負担となります。介護に備えるためには、まず介護保険制度について学び、必要なサービスを把握しておくことが重要です。介護保険でカバーされるサービスと自己負担の範囲を理解しておくことで、より現実的な準備ができます。ある程度の目安を持っておくことで、心の準備にもなります。
ライフステージの変化に備える方法として、超長期の住宅ローンを利用する方法も有効です。最近では40年や50年といった超長期の住宅ローンが登場し、選択肢が増えています。借入期間が長いほど総支払額が大きくなるため、一見デメリットが大きいように見えますが、月々の支払いを抑えることができ、団信を活用できる期間も長くなるメリットがあります。毎月の収支に余裕ができるという点と、その分貯蓄を行い手元に資金を確保できるという点から、ライフステージの変化にも柔軟に対応しやすい住宅ローン活用方法のひとつです。
3.外的要因に備える
借入期間の長期化や金利の変動といった外的要因は、住宅ローン返済に大きな影響を与える可能性があるため、十分な注意が必要です。
近年、40年や50年といった超長期の住宅ローンが登場し、借入可能額が増加傾向にあります。銀行によっては年収の10倍以上の借入が可能な場合もありますが、借りられる金額と無理なく返済できる金額は必ずしも一致しません。
2024年4月に独立行政法人住宅金融支援機構が行なった調査によると、約77%の方が変動金利を利用しており、固定期間選択型が約15%、全期間固定型が約8%となっています。多くの方が「金利の低さ」を重視して商品を選んでおり、金利の上昇リスクよりも低金利のメリットを優先する傾向を示しています。しかし、借入額が大きすぎる場合、金利上昇による返済額の増加に対応できない可能性が考えられます。
2024年の秋以降、多くの金融機関で変動金利型住宅ローンの金利引き上げがありましたが、重要なのは金利上昇時における返済額の変化をシミュレーションし、適切な借入額を設定することです。同時に、十分な手元資金を確保しておくことも大切です。
また、ローン完済予定年齢が定年後となる場合には、繰り上げ返済を活用するなどして、可能な限り定年前に完済できるような計画にすることをおすすめします。これにより、退職後の生活設計がより柔軟になります。住宅ローンを組む際には、現在の返済負担だけでなく、将来の金利変動や収入の変化も考慮に入れ、長期的な視点で返済計画を立てることが賢明です。
長期的な視点で無理のない返済計画を
1.返済比率は20%以内が理想
返済比率とは、年収に対しての返済割合のことであり、「年間返済額÷額面年収」で計算され、住宅ローンの審査時にも重要な指標とされています。
借入金額を考える時に、返済比率を25%以内に抑えた金額にすることが一つの目安となります。理想は20%以内です。例えば、年収500万円の場合、年間返済額100万円以内(返済比率20%以内)が理想的な目安となります。実際、返済比率15%~20%程度で住宅ローンを借りている方の割合が多いようです。特に変動金利を選択する場合、金利上昇リスクへの対策が重要です。返済額が増えても対応できるよう、返済比率を抑えてある程度の余裕を持った計画を立てることをおすすめします。
画像:独立行政法人住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)」を元に筆者にて作成
2.長期的な返済計画を立てる
各家庭によって収入や支出などの事情は異なるため、自分に合った返済計画を考える際にはライフプランの作成をおすすめします。出産、子どもの教育、老後生活など、将来起こりうるライフイベントを考慮して長期的な視点で計画を立てることが大切です。
今後30年から40年の間に起こりうる主要なライフイベントを洗い出し、整理しましょう。例えば、子どもの入学(幼稚園、小学校、中学校、高校、大学)、車の購入や買い替え、親の介護、自身や配偶者の定年退職などが考えられます。そしてライフステージごとの収入と支出の変化も考慮に入れて返済計画を立てると良いでしょう。
長期的な視点で返済計画を立てることが重要
住宅ローンは、無理のある借入をしてしまうと家計を圧迫し、最悪の場合は家計破綻を起こしてしまいます。しかし、賢く活用すればマイホーム購入の強力な味方になります。
重要なのは、自分の状況に合った商品を選び、長期的な視点で返済計画を立てることです。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、より精緻な計画を立てることも検討しましょう。マイホーム購入は人生の大きな決断です。賢くローンを活用して、素敵な家族の時間を過ごしてくださいね。
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(村上 寛幸)
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