投資信託の運用会社が倒産すると保有ファンドはどうなる?
MONEYPLUS / 2025年1月14日 18時0分
投資信託の運用会社が倒産すると保有ファンドはどうなる?
投資信託を設定・運用している投資信託会社は本当に倒産しないのでしょうか。NISAやiDeCoなど、税制メリットを受けられる制度が充実し、長期投資を始めてみようと考える人が増えているだけに、この点をしっかり考える必要がありそうです。
運用会社が倒産しても受益者の資産は守られる
まず、運用会社が倒産した場合、どうなるのかという点から説明していきましょう。
もし、自分が持っているファンドの運用会社が経営破綻したとしても、保有しているファンドの組入資産に毀損は生じません。なぜなら、ファンドの組入資産は運用会社ではなく、受託銀行によって管理されているからです。
しかも受託銀行は、投資信託の資産は全部、自行の資産とは切り離して管理する分別管理を徹底しています。そのため、受託銀行が倒産したとしても、ファンドの組入資産の安全性は確保されます。
とはいえ、運用会社が倒産してしまったら、その時点で運用の続行は不可能です。その先どうするかについては、2通りの方法があります。
第一の方法は、運用ファンドを繰上償還させることです。当然、運用は繰上償還日の時点で終了となり、ファンドは解散させられて、受益者の保有口数に応じてお金が戻ってきます。
ただし、ファンドの買付価格が、繰上償還時点の価格に比べて高い場合は、繰上償還された時点で含み損が実現損に変わります。長期保有すれば、いつか基準価額が値上がりして含み損が解消するだろうと期待する人もいると思いますが、それが通用しなくなってしまうのです。
アクティブファンドの運用移管は困難
第二の方法は、他社に運用を移管させることです。これなら従来どおりに運用を継続できると思われますが、ひとつ大きな問題があります。A社が倒産し、そのファンド資産をB社に移管させること自体は、それほど大きな問題ではありません。
しかし問題は、A社の運用哲学や運用方針、あるいは運用担当者のスキルやノウハウも含めての移管は、ほぼ不可能であることです。
特に問題になるのはアクティブファンドの移管でしょう。インデックスファンドなら、ベンチマークさえ同じであれば、どの運用会社が運用したとしても、それほど大きなパフォーマンス差は生じません。
でも、アクティブファンドは運用者の技量に運用成績が大きく左右される面があります。つまりA社からB社に運用が移管された時点で、投資対象は同じでも、まったく性質の異なるアクティブファンドになり、それがパフォーマンス差として現れてくる恐れがあります。
確かに運用会社が倒産しても、ファンドの組入資産に直接、毀損は生じませんが、繰上償還にしても、運用の移管にしても、それぞれに一長一短があるのです。
運用会社の倒産はなくても事業撤退は起り得る
では現実問題として、運用会社の倒産は起り得るものなのでしょうか。
少なくとも今までは、この手のケースはほとんどありませんでした。なぜなら大半の運用会社が、国内大手金融機関の子会社、もしくは外資系運用会社の日本法人として、日本国内で投資信託ビジネスを展開していたからです。豊富な資本力を持った親会社が背後にいれば、赤字続きでも親会社からの追加資本が期待できますし、そもそも大手金融機関のブランドがある以上、子会社だとしてもそう簡単に倒産させたりはしないでしょう。
また投資信託ビジネスが軌道に乗らない運用会社でも、なかには法人マネーや機関投資家マネーの運用を受託しているところがあります。この手の運用会社は、投資信託以外の資金も運用して運用報酬を得ているため、仮に投資信託ビジネスが不調だとしても、事業を継続させる体力があると考えられます。
問題は、法人マネーや機関投資家マネーの運用を一切、受けることなく、個人向け投資信託の運用に特化しているような独立系投資信託会社です。
もちろん、さわかみ投信のように4000億円規模の運用資産があれば、そこから得られる運用報酬で十分、経営を成り立たせられますが、運用資産が極めて小さく、しかも大きく増える見込みがない運用会社の場合、倒産とまではいかなくても早晩、投資信託ビジネスから撤退などということも起こらないとは限りません。
運用会社の財務諸表をチェックする
過去、日本国内で投資信託ビジネスを行っていた運用会社の撤退が2ケースありました。ムーンライトキャピタルと、あいグローバル・アセット・マネジメントのそれです。とはいえ両社とも投資信託ビジネスから撤退せざるを得なくなった一番の原因は、業績悪化ではなく、金融庁からの業務改善命令に従わなかったため、行政処分でライセンスを取り消されたからです。
ただ、2025年9月末に投資信託ビジネスから撤退する予定のPayPayアセットマネジメントは、業績悪化を主因として自ら事業撤退を決めた初めてのケースになります。「業績悪化による事業撤退」というケースができたことで今後、投資信託ビジネスが軌道に乗らない一部の運用会社において、投資信託ビジネスから撤退する動きが出てくる恐れは十分にあります。
NISAなどで投資信託の長期投資を行う場合、ファンドの運用成績だけでなく、運用会社の業績もしっかりチェックする必要性が高まってきそうです。運用会社の大半は非上場企業ですが、近年では自社のホームペ―ジに財務諸表を掲載し、誰でも閲覧できるようにしている運用会社も増えてきています。それをしっかりチェックして、運用会社を選ぶようにして下さい。
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(鈴木雅光)
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