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住宅ローンの繰上返済は本当にお得? 事前に検討すべき他の選択肢とは

MONEYPLUS / 2025年1月19日 7時30分

住宅ローンの繰上返済は本当にお得? 事前に検討すべき他の選択肢とは

住宅ローンの繰上返済は本当にお得? 事前に検討すべき他の選択肢とは

住宅ローンの繰上返済について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

「早く返済すれば利息が減るからお得」「ローンは早めに返済した方が良い」といった声をよく耳にします。確かに、繰上返済には多くのメリットがありますが、一方で見落としがちなデメリットもあります。繰上返済をすることでたしかに支払う利息は減るかもしれませんが、その資金を手元に残して運用するなど他の選択肢もあることを忘れてはいけません。

住宅ローンの繰上返済について、そのメリットとデメリット、そして繰上返済を考えた時に検討すべき、ほかの選択肢についてもご紹介します。


繰上返済だけではない余剰資金の使い道

繰上返済とは、毎月の返済とは別に、住宅ローンの元金の一部または全額を予定よりも早く返済することです。繰上返済をすると、元金が減った分の支払利息を削減することができるため総支払額を減らすことができますが、余剰資金の使い道としてそれが常にベストな選択肢とは限りません。以下のような場合は繰上返済よりも他の選択肢を検討する価値があります。

・緊急時の資金が十分に確保できていない場合
・老後の資金準備が不十分な場合
・子どもの教育費など、将来の大きな支出が控えている場合
・現在利用している住宅ローンの金利が高い場合

住宅は人生最大の買い物といわれますが、住宅ローンの返済方法も人生設計に大きな影響を与えます。「とりあえず繰上返済」ではなく、自分にとって本当に最適な方法は何かをじっくり考えてみましょう。

繰上返済のメリットとデメリット

まず、繰上返済のメリットとデメリットについて解説します。

■メリット

1.総支払額の削減
繰上返済の最大のメリットは、総支払額の削減です。住宅ローンは金額が大きく、長期間にわたる返済となるため、大きな金額となって跳ね返ってきます。

例えば、5,000万円を金利0.5%で40年借りた場合、総支払額は約5,518万円になります。このローンを返済開始10年後の時点で5年分・約601万円繰上返済すると、総支払額は約5,429万円となり、約89万円分の利息を節約できるのです。

2.早期完済による心理的負担の軽減
繰上返済を行いローンが完済となった場合、「ローンがある」という重荷から解放されることで、精神的にも楽になります。キャリアの選択においてリスクを取りやすくなったり、将来のために資産運用に積極的にチャレンジしやすくなったり、新たな人生の選択肢が広がる可能性があります。

■デメリット

1.手元資金の減少
繰上返済によって一時的に手元の資金が減ってしまいます。一度返済に充てたお金は手元に戻せないため、預貯金から一気に繰上返済を行うと、その後大きな支出が発生した場合に生活が圧迫されてしまう恐れがあります。

例えば、繰上返済後に突然の失業や病気などで収入が減少した場合、生活資金が不足する可能性があります。また、子どもの教育費や老後の資金など、将来の大きな支出に備える資金が減ってしまう可能性もあります。

2.住宅ローン控除額の減少
住宅ローン控除期間中の繰上返済には要注意です。繰上返済によってローン残高が減ると、住宅ローン控除の控除額が減ってしまう可能性があるからです。年末時点のローン残高を基準として住宅ローン控除額が計算されるため、繰上返済によってローン残高が減ってしまうと、結果として税負担が大きくなってしまうケースもある点に留意しましょう。

特に借入金利が低い場合は繰上返済をしない方がメリットが大きい場合があるため、繰上返済のタイミングには注意が必要です。

3.金利が低い場合の効果の薄さ
現在の低金利環境下では、繰上返済による利息軽減効果は小さくなります。また、物価が上昇するインフレ下では、繰上返済の実質的な効果が薄れます。物価の上昇率よりローン金利が低いという状況は借り手に有利な状況であるため、繰上返済は見送るという考え方もできます。

日本のインフレ率を表す代表的な指標として認知されているコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)は2024年1月〜11月のデータによると前年同月比2%以上で推移しています。インフレ下においては、繰上返済よりも他の選択肢を検討する価値があるかもしれません。

繰上返済を考えた時に検討すべき他の選択肢

1.借り換え
まず、繰上返済を考える前に借り換えによって支払利息を節約できないか検討してみましょう。今よりも低金利のローンへの借り換えも、支払利息を節約する方法の一つです。借り換えのメリットには以下のようなものがあります。

・金利の引き下げによる総支払額の削減
・返済期間の見直しによる毎月の返済額の調整
・団体信用生命保険の見直しによる保障内容の改善

▼借り換えの手順
1.現在の住宅ローンの条件を確認する
2.金融機関から借り換えの見積もりを取る
3.借り換えにかかる諸費用を計算する
4.借り換えによる節約額と諸費用を比較検討する
5.借り換えを決定したら、必要書類を準備し、申し込みを行う

借り換えには諸費用がかかるため、借り換えによる節約額と諸費用を比較検討する必要があることを忘れないように注意しましょう。また、現在住宅ローン控除を受けている場合、借り換え後も住宅ローン控除を受けるには一定の要件を満たす必要があるため、事前に確認を行うことが必要です。

現在利用している住宅ローンの金利が高い方、特に借り換え前後で金利差が1%以上あるような場合は、繰上返済の前に借り換えも検討してみましょう。

2.余剰資金の運用
繰上返済の代わりに、余剰資金を運用に回すという選択肢です。特に、住宅ローンの金利が低い場合、運用によって得られるリターンが繰上返済の金利削減効果を上回る可能性が十分あると考えます。

例えば、住宅ローンの金利が0.5%で、運用による利回りを5%と仮定した場合、繰上返済するよりもその資金を運用したほうが資産は増えることになります。具体的にどの程度金額が変わるのか比較してみたいと思います。

金額5,000万円、期間40年、金利0.5%の住宅ローンを、返済開始10年後のタイミングで5年分・約601万円繰上返済した場合と、601万円を年利5%で運用した場合で比較してみましょう。

繰り上げ返済した場合
・繰上返済した場合、約89万円の利息削減効果です。

運用した場合
・住宅ローン完済までの残り25年間運用したとした場合、約2,035万円となり、運用益が1,400万円以上となる計算です。

ただし、投資には「リスク」があることを忘れてはいけません。期待した収益を得られない可能性や最悪の場合、元本割れをして損失を被る可能性もあります。そのため、以下の点に注意して運用を行うことが重要です。

・長期的な視点を持つ
・分散投資を心掛ける
・自身のリスク許容度を把握する
・定期的にポートフォリオを見直す
・投資に関する知識を継続的に学ぶ

老後の資金準備が不十分な方や、運用できる期間を長期間取れる方は余剰資金の運用も検討するとよいでしょう。運用を選択する場合は、自身の資産状況やライフプランに合わせた運用戦略を立てることをおすすめします。

最後に、繰上返済は必ずしもすべての人にとって最適な選択肢とは限りません。緊急時の資金が十分に確保できていない場合や、教育費など大きな支出が数年後に控えている場合は、繰上返済することよりも資金を確保しておくことの方が優先度は高いでしょう。

ご自身の経済状況やライフプラン、将来の見通しなどを総合的に判断し、最適な選択ができるための選択肢を知っていることが大切です。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのもおすすめです。

「余剰資金は繰上返済」と決めつけてしまうのではなく、その都度自分にとって最適な方法を検討しましょう。

(村上 寛幸)

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