全国民をがっかりさせたはずのフジHDの株価が急騰! 考えられる2つの理由は?
MONEYPLUS / 2025年1月23日 7時30分
全国民をがっかりさせたはずのフジHDの株価が急騰! 考えられる2つの理由は?
2024年末に発覚した中居正広氏の女性トラブルは、フジテレビ社員の関与が疑われる報道により、同社の信頼を揺るがす事態となりました。
疑問が残る記者会見でも株価が上昇した2つの理由
2025年1月17日に、その件に関してフジテレビの港浩一社長が、記者会見を開きました。会見では、同社社員の関与を否定し、第三者の弁護士を中心とする調査委員会を設置し、事実関係を調査することが発表されました。
ただ、事実関係や同様の事案がほかにもあるのではないかという質問については「今後の調査に委ねる」という曖昧な回答が目立った上、調査委員会についても、日本弁護士連合会のガイドラインに沿った第三者委員会になるか「現時点でわからない」と煮え切らない回答。調査の独立性や客観性にはかなり疑問が残ります。
また、これほど注目されているにもかかわらず、会見ではテレビカメラの撮影も認められず、出席者にも大幅な制限がかけられており、メディアとしての姿勢に疑問も浮かびます。
そんな不義理ともいえる記者会見でしたが、翌営業日20日の株価は、前営業日比+5.6%と大幅上昇。出来高も5倍以上増えています。なぜ株価は上昇したのでしょうか?
理由はふたつ考えられます。
まず一つ目は、「強い株主総会」への思惑です。もともとフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)に第三者委員会の設置を求めたのは、米投資ファンドのダルトン・インベストメンツです。ダルトンは、フジHDの株を関連会社のファンドと合わせて7%超を保有する大株主で、フジHD側から具体的な対応がなければ「やむを得ず今年は株主総会で議案を提案する」と述べています。議案の内容は明かされていませんが、かなり強めの議案が提出されるでしょう。
そんな流れもあり、次回6月に開催される株主総会は、よくも悪くも日本中の関心が集まる大イベントになります。その株主総会のチケットを欲しいと考える個人投資家が買い向かったと考えられます。
二つ目は、フジHDの株価の割安さです。当社が保有する賃貸用のオフィスビルや商業施設や現預金などの資産額は、負債額に対して5000億円ほど超過する一方、足元の時価総額は4000億円強にとどまっており、当社のPBR(株価純資産倍率)は0.4倍です。これは、他の大手放送局平均の0.6倍を大きく下回っています。PBRが低い企業は、経営改善や資産売却が進めば評価が上がる可能性が高く、投資家から割安株として物色されます。次回株主総会で、そういった改革が進むと考える投資家が多いのでしょう。
フジHDの稼ぎ頭は不動産業
直近発表された2025年3月期の決算説明資料をみると、フジHDの事業内容の実態がよくわかります。
画像:フジ・メディア・ホールディングス「2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明会資料」
事業部は大きくふたつに分かれており、わたしたちがよく知っているフジテレビを含むメディア・コンテンツ事業と、サンケイビルなどの家賃収入などを含む都市開発・観光事業です。売上高では、メディア・コンテンツ事業が全売上高の74.5%を占めていますが、営業利益は全体の32%しかありません。一方、都市開発・観光事業部の営業利益は65.6%と大きな割合をしめています。つまり、フジHDの稼ぎ頭は不動産業ということです。これは、フジテレビがメディア事業においてかつての輝きを失った現実を示しています。
株主からすると、資産を生かしていないこの状況は非常にもどかしく感じます。大株主であるダルトンは、2024年5月にフジ・メディアHDにMBO(経営陣が参加する買収)を要求する書簡を送り、企業価値の向上のため資産売却などを通じてリストラを進めることを求めました。25年の株主総会でも、議案の提出を検討しているため、次回の株主総会のタイミングで、株主還元の拡大が進む可能性は非常に高いのです。
株主総会で経営陣一掃劇を見られるかも
株主であっても、株主総会に出席せず、議決権を放棄する人も個人投資家には多いかと思います。なぜなら、少数しか保有しない個人の議決権が、企業の経営に大きな影響を及ぼすことはほとんどないからです。最近は、お土産を出す企業も減っているので、ますます株主総会に出席する個人投資家は減っているのではないでしょうか?
ただし、次回のフジHDの株主総会は、株式市場の歴史に残るドラマが起こるかもしれません。というのも出席株主の投票の結果によっては、既存の取締役を解任できるからです。会社法では、株主総会に出席した株主の過半数が取締役の選任に賛成しなければ、否決することができます。経営陣を総とっかえして、ガバナンスのしっかりした企業に生まれ変わる瞬間を目撃することになるかもしれないのです。
過去には、2021年の東芝の株主総会で、取締役会議長の永山治氏と監査委員である小林喜光氏の再任議案が反対多数で否決された事例があります。株主総会が単なる形式的なイベントではなく、実質的な経営監視の場であることが示された歴史に残る出来事でした。
フジHDの株主総会では、そこまで大胆な変革にはならずとも、株主からのきつい質問が飛び交うことは間違いないでしょう。それに対して経営陣がどう向き合っていくのかを見学するだけでも、株主総会出席のチケットには価値があると思います。
ここ最近は、コーポレートガバナンスという言葉を耳にする機会が増えました。今回のフジHDをめぐる騒動は、あらためてコーポレートガバナンスについて、わたしたち投資家が考えるきっかけとなりそうです。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
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(藤川 里絵)
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